数学っぽい疑問 読了 4分

ジャンケンでグーを出しやすい人と出しにくい人の差とは?

ジャンケンは、グー・チョキ・パーがそれぞれ3分の1の確率で出れば、誰にも勝率の差は生まれないはずです。

でも実際にやってみると、なぜか「あの人はグーを出しがち」「最初の一手は大体グー」みたいな空気を感じることがあります。
本当にジャンケンは五分五分のゲームなのでしょうか。

★ この記事でわかること

– 理論上は五分五分のはずのジャンケンに、実際には「偏り」が生まれる理由
– 初手で「グー」が選ばれやすい、意外と人間らしい理由
– 勝った後・負けた後に、手がどう変わっていくかの法則

理論上、ジャンケンに「得な手」はない

ジャンケンは、グー・チョキ・パーをそれぞれ3分の1の確率でランダムに出し続ければ、相手がどんな戦略を取っても勝率は変わらない、という性質を持っています。

このように「相手がどう動いても、自分の戦略を変える理由がない」状態のことを、ゲーム理論ではナッシュ均衡と呼びます。

用語ナッシュ均衡なっしゅきんこう

ゲーム理論の用語で、すべての参加者が「自分だけ戦略を変えても得にならない」状態のこと。ジャンケンでは、3つの手を均等にランダムで出す状態がこれにあたる。

つまり理論上は、グーを出そうとチョキを出そうと、長い目で見れば勝率は3分の1ずつ。だれにも「得な手」は存在しません。

ところが、人間はコンピューターのような完全な乱数生成機ではありません。ここから話がおもしろくなります。

なぜ初手は「グー」が多いのか

読者

そういえば、ジャンケンの最初の一回目って、なんとなくグーを出してる気がします。気のせいですか?
ムダシル

気のせいではなさそうです。何度かの実験的な調査では、初心者やジャンケンを深く考えていない人ほど、最初の一手にグーを選ぶ傾向が報告されています。

理由として有力なのが、グーという形そのものが「強さ」の象徴になっているという考え方です。
握りこぶしは、力を込めたときに自然に作られる形。スポーツの勝利ポーズや「気合いを入れる」しぐさでも、こぶしはよく使われます。

そのため、何も考えずに手を出そうとすると、心理的に「強そう」なグーへ無意識に引き寄せられやすい――と考えられています。逆に、チョキはとっさに作るには少し複雑な形で、パーは「降参」のイメージもあり、最初の一手としては選びにくいのかもしれません。

補足
ジャンケンの経験が多い人ほど、この「グー寄りの初手」を逆に読んで、初手にパーを出して勝率を上げようとする──という駆け引きも生まれます。知っている人同士のジャンケンほど、単純な運だけでは終わらなくなるのは、こうした読み合いのせいです。

出しやすい人・出しにくい人の差はどこから

ここで本題の「差」について。グーを出しやすい人と出しにくい人がいるとしたら、その違いはどこから来るのでしょうか。

一つの要因は、とっさの判断に使う時間の短さです。
じっくり考える時間があれば、グー・チョキ・パーを均等にイメージできますが、「せーの」で即座に手を作る場面では、手が覚えている形──つまりこぶしに近いグー──が出やすくなります。

もう一つは、ジャンケンを「勝負」として意識する強さです。気合いを入れて挑む人ほどこぶしを連想しやすく、逆に「適当に決めよう」というくらいの軽い気持ちの人ほど、パーやチョキも自然に出やすいといわれています。

つまり、グーを出しやすいかどうかは才能や性格の問題ではなく、その瞬間にどれだけ「とっさに」「力を込めて」手を作っているかの違いに近いものなのです。

勝った後・負けた後で手はどう変わるのか

ジャンケンにはもう一つ、おもしろい人間らしい癖があります。

中国の研究グループが行った大規模な実験では、ジャンケンを繰り返したとき、人は勝った手をもう一度出しやすく負けた手は変えやすいという傾向が確認されました。

さらに手を変えるときには、ランダムに変えるのではなく、グー→パー→チョキ→グー…というある決まった順番で次の手を選びやすいこともわかっています。

FIG.1 — 負けたときの手の変化サイクル

負けると、グー→パー→チョキ→グーの順で手を変えやすいことを示す循環図
用語勝ち残り・負け変え戦略かちのこり・まけがえせんりゃく

心理学・行動科学で報告されている傾向。勝った手はそのまま出し続け、負けた手は別の手に切り替えやすいという、人間に見られる無意識のクセ。完全なランダムからはずれてしまう一因とされる。

これは裏を返せば、相手の直前の勝敗を見ていれば、次の一手をある程度「予想できてしまう」ということ。ジャンケンが本当に運だけのゲームでいられるのは、お互いがこの癖に気づいていないあいだだけなのかもしれません。

まとめ:ジャンケンに完全な運任せはない

まとめ

– 理論上はグー・チョキ・パーは五分五分だが、人間は完全なランダムを出せない
– 初手はグーが選ばれやすく、握りこぶしの「強さ」の象徴性が一因と考えられている
– 勝った手は出し続け、負けた手は決まった順で変えやすいという癖が確認されている

ジャンケンは、ルールだけ見れば運任せの単純なゲームです。
でも実際に手を出しているのは、癖や心理から逃れられない私たち人間。
だからこそ、完全な五分五分にはなりきれません。

次にジャンケンをするときは、相手の――そして自分の――その「グーへの引力」を、少しだけ意識してみると、勝率がほんの少し変わるかもしれません。

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