数学っぽい疑問 読了 4分

ハチの巣はなぜ六角形なのか? ── 最小の材料で最大の部屋を作る効率の話

ハチの巣をよく見ると、どの部屋もきれいな六角形をしています。
丸くもなく、四角くもなく、なぜか六角形。
たまたまそうなったのか、それともハチが「これが一番いい」と知っているのか。
じつはこの形には、ちゃんとした幾何学的な理由があります。

★ この記事でわかること

  • すきまなく床を埋められる図形が、なぜ3種類しかないのか
  • 同じ面積なら、六角形がいちばん「壁を節約できる」理由
  • ハチが計算しなくても六角形になってしまう、物理的な仕掛け

まず確認したいこと──六角形はぴったり並ぶ

部屋をたくさん作るとき、すきまや無駄なスペースができると材料がもったいない。
だから「すきまなく並べられる図形」であることが、まず大前提になります。

正多角形のうち、すきまなく平面を埋め尽くせるのは 正三角形・正方形・正六角形の3種類だけ です。

用語正多角形のしきつめせいたかっけいのしきつめ / regular tessellation

同じ正多角形だけを使って、すきまも重なりもなく平面を埋め尽くすこと。1つの頂点に集まる内角の合計が360度にならないと埋め尽くせないため、可能なのは正三角形(60度×6)・正方形(90度×4)・正六角形(120度×3)の3種類に限られる。
読者

正五角形とか正八角形じゃダメなんですか?
ムダシル

正五角形の内角は108度。これをいくつ集めても360度にぴったり収まらないんです。
すきまや重なりが必ず出てしまうので、すきまなく並べる図形としては失格なんですよ。

この3種類の中から、ハチは六角形を選びました。なぜでしょうか。

同じ面積なら、六角形が一番「お得」

ここからが本題です。
同じ面積の部屋を作るとき、壁(材料)が一番少なくて済むのはどの図形か という問題を考えます。

直感的に確かめてみましょう。同じ面積をもつ正三角形・正方形・正六角形を並べたとき、
周囲の長さ(つまり必要な壁の総量)は図形によって変わります。

FIG.1 — 同じ面積でも、周囲の長さが違う

正三角形 周囲:長い 正方形 周囲:中間 正六角形 周囲:最短

実際に計算すると、同じ面積であれば──

つまり六角形は、同じ広さの部屋を確保しながら、いちばん壁の材料を節約できる図形 なのです。

用語等周問題とうしゅうもんだい / isoperimetric problem

「同じ周囲の長さで、どんな形にすれば面積を最大にできるか」を考える数学の問題。円が理論上の最適解だが、すきまなく並べられる図形に限ると六角形が最も円に近い効率を持つ。
読者

円が一番効率いいなら、丸い部屋を並べればいいのでは?
ムダシル

いい指摘です。実際、円は単体では最も効率的な形です。
でも円を並べると、必ず隙間ができてしまう。その隙間を埋めるための余分な壁を考えると、結局は六角形のほうが「全体として」効率的になるんです。

ハチにとって壁の材料(ミツロウ)を作るのは、体力的にかなりのコストがかかる作業です。
1グラムのミツロウを作るのに、ハチは8〜10グラムの蜜を消費すると言われています。
だからこそ、壁を節約できる六角形は理にかなった選択なのです。

ハチは「計算」しているわけではない

読者

ハチは数学が得意だから六角形を選んでいるんですか?
ムダシル

じつは、そうとも言い切れません。ハチが幾何学を理解しているわけではなく、もっと物理的な理由で自然に六角形になるという説が有力です。

ハチは最初、巣を 丸い筒状の部屋 として作ります。
たくさんの丸い部屋を隙間なく押し合うように並べると、ミツロウは柔らかい状態のままお互いを押し合い、
表面張力や圧力のバランスによって、自然と平らな面同士がぶつかり合う形に変形していきます。

この「複数の円柱を等しい圧力で押し合わせる」と、力学的に最も安定するのが六角形の壁になる──
これは19世紀の物理学者が研究した、泡やシャボン玉が隣り合うときの境界面の法則とも共通する現象です。

ハチの巣が六角形になる仕組み(円筒状の部屋が押し合って六角形に変形する過程と、120度で角度が安定する理由)
FIG.2 — 円筒状の部屋が押し合い、六角形へと変形していく過程
補足
ミツバチの巣を温めてミツロウを柔らかくすると、隅が丸かった部屋が徐々に六角形に変形していく様子が実験で確認されています。ハチが「設計」しているのではなく、物理法則が結果的に六角形を作り出している、という見方が現在では支持されています。

つまり、ハチは六角形を「狙って」作っているのではなく、
最少のコストで部屋を確保しようとする圧力のなかで、自然に最も安定した形へ落ち着いていく──
それが結果として、数学的に最も効率のいい六角形になっている、というわけです。

まとめ:自然が見つけた、最も省エネな形

まとめ

  • すきまなく床を埋められる正多角形は、正三角形・正方形・正六角形の3種類だけ
  • 同じ面積なら、六角形が一番壁(材料)を節約できる効率的な図形
  • ハチが計算したわけではなく、ミツロウを押し合う物理的な力が自然と六角形を作り出している

数学が「答え」を出すよりも先に、自然はずっと前から六角形という最適解にたどり着いていました。
ハチが意識しているわけではないのに、結果として最も効率のいい形が生まれる──
そう考えると、次にハチミツの瓶を見るとき、あの六角形の模様がちょっと誇らしく見えてくるかもしれません。

タグ:#ハチの巣 #六角形 #幾何学 #等周問題 #自然と数学

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