歴史・社会の疑問 読了 7分

【江戸時代・田沼意次】おカネが田まる!? コメを捨てて「カネ」に全振りしたやり手役員

ブログ記事のアイキャッチ。640×360px、歴史教養ブログ「ムダシル。」用のポップで親しみやすい日本史イラスト。江戸時代のやり手役員・田沼意次を画面右寄りに描く。意次は文字や記号のない小判の袋と、表紙も中身も完全に無地の帳簿を手に、商人たちへ指示を出している。背景に活気ある商業の町、文字や記号のない南鐐二朱銀、印旛沼の工事、蝦夷地を連想させる北の海を配置し、端には米俵と不安そうな農民を置く。米中心からカネ中心へ幕府を変えようとした人物像が一目でわかる構図。タイトルを後から重ねられるよう、画面左側には人物や重要物を置かず、明るく整理された余白を広く確保する。明るい配色、太めの輪郭線、表情豊かなデフォルメ人物、江戸時代の衣装。画面内に文字・数字・疑似文字・吹き出し・看板・ロゴは入れない

※「田沼(たぬま)」と「(カネが)貯まる(たまる)」をかけ、商業を盛んにしてお金儲けに走った様子を表しています。

この人物が政治をしていた時期のイベントについて説明します。「コメ」に頼った古い経営に限界を感じ、商人の力を借りて「カネ」を稼ぎまくり、会社(幕府)を強引にアップデートしようとした時のお話です。

田沼意次はどんな人?

今からおよそ250年前、江戸時代の後半に幕府の「常務(老中)」をしていた男性です。 側近から大出世して、約20年近くにわたって幕府の経済を一人で切り盛りしました。 「カネ」の力で幕府の財政を立て直そうとしたものの、賄賂(わいろ)まみれのイメージで最後は追い出された、江戸時代一の経済のプロです。

登場する地方や国について

江戸、長崎、印旛沼、蝦夷地、ロシア
江戸、長崎、印旛沼、蝦夷地、ロシア

どのくらいの時代?

田沼意次の誕生、家治の将軍就任、側用人・老中への出世、南鐐二朱銀、印旛沼開発、天明の飢饉、失脚までを示す年表
田沼意次の1719年から1788年までの主要事件年表

その1:不安定な「コメ」を捨てて安定の「カネ」へ

田沼意次は、リーダーとして実権を握り始めた際にこう考えました。

田沼意次
「最近、コメの収穫だけで税金(年貢)を取るやり方に限界を感じてるんだよな。コメの値段は下がるし、天気が悪いとすぐ大赤字になるじゃねえか。これ、会社(幕府)としてヤバいだろ。だから、これからは世の中に出回ってる『カネ』に注目して、商人にどんどん稼がせて、そこから手数料を取ってガッポリ儲けるぞ!」

彼は、農業中心の古い仕組みに見切りをつけ、商業を活発にして商人から税金を取ることで、幕府の財政を立て直そうとしました。

これは例えば、「屋外イベントの売上(天気次第)だけに頼っていた古い会社が、新しい常務の提案で、天気に左右されないデジタルショップの運営(商業)に乗り出し、安定した手数料収入を狙い始めた」ような、大胆なビジネスモデルの転換です。

周囲の武士
「意次さん、武士がカネ儲けなんて下品ですよ! やっぱりコメこそが日本の宝でしょ!」
田沼意次
「うるせえな、背に腹は代えられないんだよ。これからはカネが物を言う時代なんだよな!」

なかなか拝金主義な方針ではありますが、意次はさらにこう考えました。

その2:グループ化させた商人に「独占権」を販売

それを踏まえた上で、意次は具体的な増収プランを打ち出しました。

田沼意次
「商人のみんな、今日から特定の業種ごとにグループ(株仲間)を作っていいぞ。その代わり、このエリアでの独占販売権をあげるから、毎年ライセンス料(運上・冥加)を幕府にガッツリ納めてくれよな。お互いハッピーだろ?」

彼は、これまで禁止していた商人の同業者組合を積極的に公認し、独占的な営業を認める見返りに、その利益の一部を税金として納めさせました。

これは、「誰でも自由に販売できた市場をあえて制限し、特定の業者にだけ『認定ライセンス』を与え、その代わり毎年高額な登録料を支払わせることで、幕府の金庫を潤そうとしている」ような状況です。

有力な商人
「意次さん、話がわかるねえ! これでライバルを気にせず商売ができるぜ(ニヤリ)」
一般の町人
「独占販売のせいで物の値段が上がってないか? 意次のやつ、商人から裏金をもらってるって噂だぜ」

なかなかの癒着(ゆちゃく)経営ではありますが、意次はさらにこう考えました。

田沼意次が商人・農民・松平定信と関わりながら、商業重視の政治を進め、後に反動を受けた関係図
田沼意次、商人、農民、松平定信、商業重視政治の関係図
用語運上・冥加うんじょう・みょうが

営業や商売の許可を受けた商人が、幕府や領主へ納めた上納金です。田沼政治では、商業活動を公認する代わりに財政収入を得る仕組みとして利用されました。

その3:レジが遅いので「数えるだけの銀貨」をリリース

この理想を掲げた上で、意次は貨幣のシステムにもメスを入れました。

田沼意次
「今の銀貨って、使うたびに天秤(てんびん)で重さを量るから超不便なんだよな。レジでの支払いに時間がかかりすぎて、経済のスピードが落ちてるじゃねえか。だから、今日から『8枚で小判1両』って決めた、枚数を数えるだけで使える新しい銀貨(南鐐二朱銀)を大量に作るぞ!」

彼は、重さで価値が決まっていた銀貨から、金貨と同じように枚数で計算できる「計数貨幣」への統一を図り、経済の活性化を狙いました。

これは例えば、「支払いのたびに金塊を削って重さを量っていた面倒なシステムを廃止し、誰でも一目で価値がわかる『100円玉』のような標準コインを導入して、キャッシュレス決済ばりに取引をスムーズにさせた」ような技術革新です。

商人
「お、これは便利だ! 重さを量る手間が省けて、商売がどんどん捗(はかど)るぜ!」
古い役人
「伝統ある銀のやり方を変えるなんて、けしからん! 意次はまた勝手なことをして!」

かなり合理的なシステム構築ですが、意次はさらにこう考えました。

その4:国家レベルの「大規模開発」と「海外進出」

この勢いに乗って、意次はさらに巨大なプロジェクトを始動させました。

田沼意次
「カネが貯まってきたから、次は未来への投資だ! 千葉にある巨大な沼(印旛沼)を干拓して、広大な農地を作り直すぞ。ついでに、北の果ての蝦夷地(北海道)も調査して、ロシアと貿易すればもっと儲かるんじゃね? 幕府のポテンシャルを最大まで広げてやるんだよな!」

彼は印旛沼の干拓といった大規模な公共事業や、ロシアとの貿易の可能性、さらには蝦夷地の開発調査など、非常に進歩的な政策を次々と進めました。

これは、「利益が出たベンチャー企業の役員が、その資金を使って未開のマーケットを開拓したり、巨大な新工場を建設したりするような、超イケイケの設備投資」のようなものです。

調査隊(最上徳内ら)
「蝦夷地は宝の山ですよ、意次様! ロシアの影も見え隠れしています」
反対派
「印旛沼の工事、洪水でまた失敗したじゃないか! 血税を無駄にするのもいい加減にしろ!」

相当なアグレッシブ経営ですが、しかしついに、最悪の瞬間がやってきます。

その5:天災による「倒産危機」と突然の幕引き

最後に、想定外のトラブルが会社(幕府)を襲いました。

民衆
「意次がカネ儲けや賄賂に夢中になってる間に、火山(浅間山)が噴火して、日本中が冷害で大飢饉(天明の飢饉)になっちまったぞ! コメの値段が爆上がりして、みんな餓死(がし)寸前だ! それなのに意次は賄賂をくれた商人ばかり守って、俺たちのことは無視かよ! もう我慢できねえ、打ちこわしでぶっ潰してやる!」

未曾有(みぞう)の大災害に対し、経済重視の政策は無力でした。批判の矢面に立たされた意次は、後ろ盾だった将軍が亡くなると同時に、すべての役職をクビにされてしまいました。

これは例えば、「ネットビジネスで盛り上がっていた会社が、突然の世界的な食糧難と災害に襲われ、それまでの『カネさえあればいい』という経営姿勢がブチギレた社員や顧客から猛バッシングを受け、経営陣が総退陣に追い込まれた」ような最悪の空気です。

浅間山の噴火による火山灰が降り注ぐ中、倒れる農民たちと、商人中心の政策を批判される田沼意次、その背後で新しい厳格な改革の準備をする松平定信を配置したステップ図。文字なし
浅間山の噴火による火山灰が降り注ぐ中、倒れる農民たちと、商人中心の政策を批判される田沼意次、その背後で新しい厳格な改革の準備をする松平定信を配置したステップ図。文字なし

総括

結果:田沼意次は、江戸幕府を「コメ」中心の古い経営から、商業や貿易を重視する「カネ」中心の新しい経営へと大きく転換させようとしました。幕府の収入を増やし、貨幣制度を便利にするなど一定の成果を上げましたが、その一方で役人の汚職が当たり前になるなど、組織のモラルを低下させてしまいました。

一方:彼の政治の後半に起きた「天明の飢饉」という大災害に対し、効果的な対策を打てなかったことで民衆の激しい怒りを買い、結果として彼が進めた「自由で進歩的な経済政策」そのものが悪しきものとして否定されてしまいました。彼の死後、江戸幕府は再び自由を奪うガチガチの規制社会へと戻っていくことになったのです。

まとめ:田沼意次の意義

最後に、この「やりすぎたやり手役員」が失脚したあと、賄賂と自由を憎む「鬼の役員」松平定信がやってきて、江戸中を沈黙させるほど厳しいルールを復活させますが、それはまた別のお話。

この出来事が今後どう評価されるかは、まだ分かりません。 以上、おカネがたぬま(田沼)る!? コメを捨てて「カネ」に全振りしたやり手役員でした。

理解度確認テスト

Q1. 田沼意次が商人に営業上の特権を認め、上納金を納めさせた同業者組織は何ですか?


A. 株仲間

Q2. 枚数で価値を計算しやすくした田沼時代の銀貨は何ですか?


A. 南鐐二朱銀

Q3. 浅間山の噴火や冷害などが重なった大飢饉を何といいますか?


A. 天明の飢饉

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