行政・法律の疑問 読了 4分

「行動」を記録するのは「心」をのぞくことじゃない?内申書のルール【麹町中学校内申書事件】

★ 判例データ

事件名:損害賠償請求事件(麹町中学校内申書事件)
裁判所:最高裁判所
判決日:昭和63年7月15日

関係法令:
・日本国憲法19条(思想・良心の自由)
・国家賠償法1条(公権力の行使による損害賠償)

論点:
・内申書への記載と思想・良心の自由(憲法19条)
・「思想」と「外部的行動」の区別
・校長の教育的裁量の範囲

結論:
・外部に現れた生徒の行動を内申書に記載することは憲法19条に違反しない

こんにちは! 今日は、みんなが高校入試などで使う「内申書(調査書)」についてのお話だよ。 「先生が僕の活動を内申書に書くのは、僕の『自由な考え』を勝手にバラしていることにならないの?」というギモンに、最高裁判所が答えた有名な事件を見てみよう。

【ストーリー】「勝手なことを書くな!」 vs 「学校での様子を書いただけだ」

元中学生のAさん

私は中学生のとき、自分の信じる社会運動(学生運動など)に参加していました。でも、麹町中学校の校長先生は、そのことを私の「内申書」に詳しく書いたのです。そのせいで、私は志望していた高校に不合格になってしまいました。憲法19条には「思想及び良心の自由」があるはずです。私が何を信じてどんな活動をしていたかを勝手に記録して、他人に教えるなんて、私の「心の自由」を侵すひどい行為です! 慰謝料を払ってください!
校長先生

私たちは、Aさんが学校の内外でどのような生活を送っていたか、その客観的な事実を記録しただけです。内申書は生徒の全体像を次の学校に伝えるための大切な書類です。Aさんの思想そのものを否定したり、無理やり変えさせようとしたりしたわけではありません。

【解説】裁判所でのバトル:「心の聖域」 vs 「外に見える行動」

今回のバトルのポイントは、憲法19条が守っている「思想・良心の自由」が、どこまでをカバーしているのかということだよ。

憲法19条は「心の聖域」を守っているんだ。国が「お前は何を考えているんだ? 白状しろ!」と強制することは絶対に許されない。

でも、裁判所は今回の「内申書」について、次のような「魔法の線引き」をしたんだ。 「人間が心の中で何を考えているかは自由だけれど、『外に現れた行動』は別だよ」ってね。

裁判所はこう考えたんだ。「校長先生が書いたのは、『Aさんがこういう活動をしていた』という外から見える事実(行動)であって、Aさんの心の奥底にある信仰や信念(思想)を無理やり聞き出したり、公表したりしたわけではないよね。だから、これは憲法19条が禁止している『心の自由の侵害』にはあたらないんだよ」と判断したんだ。

【判決】行動を記録することは、憲法19条違反ではない!

最高裁判所(昭和63年7月15日)は、次のような答えを出しました。

1. 「事実の記録」は思想の侵害ではない! 特定の思想をもっていること自体ではなく、外部に現れた客観的な行動を内申書に記載することは、直ちに憲法19条が守る思想・良心の自由を侵すものではないと判断されました。
2. 校長の裁量が認められた! 生徒の学校生活の様子をどのように評価し、内申書にどう記載するかは、校長先生の広い判断(裁量)に任されており、今回のケースは「やりすぎ(違法)」ではないとされました。

【判決の言葉】

補足
最高裁判所の判決(昭和63年7月15日)より
「憲法19条が保障する思想、良心の自由は、……個人の内心の自由を保障するものであって、……特定の思想を有することを理由として不利益な取扱いをすることを禁止するものであるが、……生徒の外部的な行動を記載することは、その思想、信条そのものを記載するものではないから、……同条に違反するものではない。」

【追記】判決の後、日本はどう変わったの?

この判決は、学校教育の現場と、私たちのプライバシーの考え方に大きな影響を与えたよ。

「思想」と「行動」の区別がハッキリした! 「心の中で何を思うかは絶対自由だけど、外での活動は記録や評価の対象になりうる」という、今の日本の法律の世界での大きなルールが確定したんだ。
内申書の書き方にルールができた! 判決では「違法ではない」とされたけれど、「生徒の将来を左右する書類に、政治的な活動をどこまで書くべきか」という議論が活発になったんだ。今では、文部科学省のガイドラインなどで、より慎重に、そして生徒の成長を助けるための記載が求められるようになっているよ。
「情報公開」が進むきっかけになった! 「自分の内申書に何が書かれているか知りたい」という声が高まり、後の「情報公開制度」や「個人情報保護制度」が整っていく中で、今では多くの自治体で自分の内申書をチェックできるようになっているんだ。

まとめ

まとめ

– 憲法19条は「心の中の自由」を絶対に守っている
– でも、「外に見える行動」を記録することは、思想そのものを探ることとは違う、と判断された
– この裁判によって、学校が教育のために生徒を評価する権限が認められる一方で、記載内容の公平さについての議論も深まったんだね!

みんなが一生懸命頑張っている部活動や委員会活動が内申書で評価されるのも、こうした「教育上の評価」というルールがあるからなんだね。

補足
条文補足:日本国憲法第十九条
思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
この判例、ほかの時代の判例ともつながっています
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