行政・法律の疑問 読了 4分

「卒業式で立って歌う」命令は、心の自由を奪うことにならないの?っていう判例【東京都・東京都教育委員会事件】

★ 判例データ

事件名:雇用拒否処分取消等請求事件(東京都・東京都教育委員会事件)
裁判所:最高裁判所
判決日:平成23年5月30日

関係法令:
・日本国憲法19条(思想・良心の自由)
・地方公務員法

論点:
・起立斉唱命令と思想・良心の自由(憲法19条)
・「式典のしきたり」と「心の自由」の区別
・職務命令と公務員の義務

結論:
・卒業式等での起立斉唱を命じる職務命令は憲法19条に違反しない

こんにちは! 今日は、学校の先生たちが卒業式や入学式で「君が代」を歌うときに、「立って歌いなさい」という命令に従わなきゃいけないのか? という、みんなの学校生活にも関わる大切なお話だよ。

自分の信じていること(信念)と、役所の決めたルールがぶつかったとき、裁判所がどう判断したのか見てみよう。

【ストーリー】「私の信念に反します」 vs 「式典のルールを守ってください」

定年退職した先生のAさん

私は長年先生として働いてきましたが、自分の考え(信念)から、どうしても「君が代」を立って歌うことができません。退職した後、また「非常勤の先生」として雇ってもらいたいのですが、この信念は譲れません。
東京都教育委員会

卒業式は大切な式典です。校長先生が「みんなで立って歌いましょう」と命令(職務命令)を出しているのに、それに従わない人を再び雇うことはできません。Aさんの再雇用(もう一度雇うこと)はお断りします。
先生のAさん

そんなのひどいです! 憲法19条には「思想及び良心の自由」があるはずです。心の中で「したくない」と思っていることを無理やりさせるのは、憲法違反です! 裁判所さん、私が雇われないのはおかしいですよね?

【解説】裁判所でのバトル:「心の聖域」 vs 「式典のしきたり」

今回のバトルの最大のポイントは、憲法19条が守る「思想・良心の自由」が、どこまでを指しているのかということだよ。

憲法19条は「心の聖域」を守っているんだ。国が「こう考えなさい」と心の中を無理やり変えさせたり、「本当の考えを白状しろ」と迫ったりすることは絶対にできないんだ。

裁判所は、今回の「起立斉唱の命令」について、次のように考えたよ。

「確かにAさんにとっては嫌なことかもしれない。けれど、式典で立って歌うことは、一般的には『卒業式のしきたり(慣習)』として行われていることだよね。これが、Aさんの心の奥底にある『世界観』や『深い信念』を無理やり否定したり、変えさせたりすることに直結するわけではない」と判断したんだ。

つまり、式典をスムーズに進めるための「公務員としてのマナー」のようなものだと考えて、「心の自由を直接傷つけるものではないから、命令自体は憲法違反ではない」という答えを出したんだね。

【判決】「立って歌いなさい」という命令は、憲法19条違反ではない!

最高裁判所(平成23年5月30日)は、次のような答えを出しました。

1. 「君が代」の起立斉唱命令は「合憲」! 学校の校長先生が教職員に出した、式典での起立斉唱の職務命令は、憲法19条が守る思想・良心の自由を侵すものではないと判断されました。
2. 命令に従わないことを理由に雇わなくても、違法ではない! この判決では、命令に従わなかったことを理由に、退職後の再雇用を拒否したことも、基本的には認められることになりました。

【判決の言葉】

補足
最高裁判所の判決(平成23年5月30日)より
「(校長が教職員に発した)卒業式等の式典における国旗に向かって起立して国歌を斉唱すること等を命ずる旨の職務命令は、……憲法19条に違反するものではない。」

【追記】判決の後、日本はどう変わったの?

この判決は、日本の学校での「国旗・国歌」の扱いについて、大きなルールを決定づけたよ。

「式典のルール」が確立した! この判決(と同日に出た複数の判決)により、学校の先生が式典で起立斉唱の命令に従うことは「公務員としての義務」であるという流れが確定しました。
「罰の重さ」を慎重に考えるようになった! 命令に従うことは義務だけれど、その後に最高裁は、「歌わなかったからといって、すぐにクビにするなどの重い罰(減給以上の懲戒処分)を与えるのは、やりすぎになる可能性がある」という新しいルールも示しました。これによって、学校現場では「命令」と「個人の自由」のバランスをより慎重に考えるようになっています。
「公務員の責任」が再確認された! 公務員には自分の信念があっても、仕事として求められる役割(全体の奉仕者としての行動)があるということが、改めて日本中に知られるきっかけになったんだね。

まとめ

まとめ

– 憲法19条は、心の中の「思想・良心の自由」を絶対に守っている
– でも、式典で立って歌うことは「しきたりとしての行動」であって、心そのものを変えさせることではないと判断された
– この判決により、命令自体は憲法違反ではないというスタンダードが決まったんだね!

みんなが卒業式で当たり前に行っていることの裏側には、先生たちの権利と責任をめぐる、こうした難しい憲法の議論があったんだね!

補足
条文補足:日本国憲法第十九条
思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
この判例、ほかの時代の判例ともつながっています
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