事件名:謝罪広告請求上告事件
裁判所:最高裁判所
判決日:昭和31年7月4日
関係法令:
・日本国憲法19条(思想・良心の自由)
・民法723条(名誉毀損における名誉回復措置)
論点:
・謝罪広告命令と良心の自由(憲法19条)
・思想・良心の自由の保護範囲
・名誉毀損に対する名誉回復措置の合憲性
結論:
・事態の真相告白と謝罪表明にとどまる程度の謝罪広告命令は憲法19条に違反しない
こんにちは! 今日は、誰かの悪口を言って名誉(評判のこと)を傷つけてしまったときに、裁判所が「新聞に謝罪の広告を出しなさい!」と命令できるのか? というお話だよ。 「心の中で思っていないのに謝らせるのは、憲法が守る『心の自由』を傷つけるんじゃないの?」という難しい問題に、最高裁判所が答えた事件を見てみよう。
【ストーリー】「新聞で謝れ!」 vs 「無理やり謝らせるのは憲法違反だ!」
Aさんが新聞や雑誌で私のデタラメな悪口を広めました! 私の評判はボロボロです。お金を払ってもらうだけじゃ気が済みません。裁判所さん、Aさんに「私が間違っていました、ごめんなさい」という広告を新聞に出すよう命令してください!
確かに、私の書いた内容には間違いがあったかもしれません。でも、新聞に「謝罪の広告」を出すなんて絶対に嫌です! 憲法19条には「思想及び良心の自由」があるはずだ。心の中でどう思うかは私の勝手です。自分が納得していないのに、人前で「ごめんなさい」と言わせるのは、私の心の自由を無理やり踏みにじる行為です!
傷つけられた私の名誉はどうなるんですか? 壊された評判を元に戻す(名誉回復)ためには、同じ場所でちゃんと謝ってもらう必要があります。これは民法723条にも認められている「原状回復」の方法なんです!
【解説】裁判所でのバトル:「良心の自由」はどこまでを守るのか
今回のバトルのポイントは、憲法19条が守っている「良心の自由」が、どこまでの範囲を指しているのかということだよ。
裁判所は、憲法19条を「心の聖域」だと考えたんだ。 「人間には、自分の考えや信じていることを、誰にも邪魔されずに心の中に持っておく自由がある。国が無理やり『こう考えなさい』と命令したり、『お前の考えを白状しろ』と迫ったりすることは絶対にできないんだ」ってね。
でも、今回の「謝罪の広告」については、こう考えたんだ。 「単に『事実と違うことを言って迷惑をかけました。すみません』という程度の、事務的な謝罪文を載せるだけなら、それはその人の『世界観』や『深い信念』まで変えさせるものではないよね」って。
つまり、名誉を傷つけたことへの「けじめ」として、単に「ごめんなさい」の形を示すだけなら、それは心の深い部分にある「良心」を傷つけるほどのことではないから、名誉を回復するための正当な方法として認められる、と判断したんだ。
【判決】単なる「ごめんなさい」の広告なら、憲法違反ではない!
最高裁判所(昭和31年7月4日)は、次のような答えを出しました。
1. 謝罪広告の命令は「合憲」! 裁判所が名誉毀損の救済方法として謝罪広告を加害者に命じることは、それが単に事態の真相を告白し謝罪の意を表明する程度のものなら、憲法19条には違反しないと判断されました。
2. でも、やりすぎはダメ! 加害者に「私は卑劣な人間です」と屈辱を感じさせたり、無理やり心の中の信念を否定させるような内容を強制することは、許されないと言われました。
【判決の言葉】
最高裁判所の判決(昭和31年7月4日)より
「……謝罪広告を命ずることは、……単に事態の真相を告白し謝罪の意を表明するに止まる程度のものならば、……これを命じたからとて、……憲法19条にいう『思想及び良心の自由』を侵害するものとはいえない。」
【追記】判決の後、日本はどう変わったの?
この判決は、日本の名誉毀損のルールを決定づけるものになったよ。
– 「謝罪広告」が名誉回復のスタンダードになった! 名誉を傷つけられた側は、お金(損害賠償)だけでなく、新聞やテレビでの「謝罪」や「訂正」を求めることが、法律の上でハッキリ認められるようになったんだ。
– 「良心の自由」の範囲がハッキリした! 憲法19条が守る「思想・良心」とは、「その人の人格を形づくるような、深い信念や世界観」のことである、という考え方が広まるきっかけになったよ。
– マスコミの責任がより重くなった! もし間違った報道をして誰かを傷つけたら、後で「謝罪広告」という形で公に間違いを認めなければならないルールが定着したため、メディアはより慎重に情報を扱うことが求められるようになったんだ。
まとめ
– 憲法19条は、心の中にある「深い信念(良心)」を最大限に守っている
– でも、名誉を傷つけたことへの「事務的な謝罪」を求めることは、良心の自由を奪うことにはならない
– これによって、「傷ついた名誉を元に戻すこと」と「個人の自由」のバランスがとられているんだね!
「何を考えても自由」だけど、自分の言葉で誰かを傷つけたときは、社会のルールとしてちゃんと謝ることも大切。そんな憲法の教えが詰まった裁判だったんだよ。
条文補足:日本国憲法第十九条
思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
条文補足:民法第七百二十三条