行政・法律の疑問 読了 4分

発売前の本を止めてもいいの?「心の天秤」で決める厳しいルールの判例【北方ジャーナル事件】

★ 判例データ

事件名:損害賠償請求事件(北方ジャーナル事件上告審判決)
裁判所:最高裁判所大法廷
判決日:昭和61年6月11日

関係法令:
・日本国憲法21条(表現の自由)
・日本国憲法13条(幸福追求権・人格権)
・民法

論点:
・表現の自由と名誉権の衝突
・事前抑制の合憲性
・検閲の禁止
・差止めが許容される要件

結論:
・表現行為への事前抑制は原則禁止。ただし内容が明らかに真実でなく著しく回復困難な損害が生じる場合は例外的に許容される

こんにちは! 今日は、みんなが自由に意見を言える「表現の自由(ひょうげんのじゆう)」と、誰かの評判を守る「名誉(めいよ)」の大バトルの話だよ。 本が発売される「前」に、裁判所が「その本を売っちゃダメ!」と止めることができるのか、というとっても難しい問題に答えが出た事件なんだ。

【ストーリー】「ひどい記事を出すな!」 vs 「何を書いても自由だ!」

知事になりたい政治家のAさん

大変だ!「北方ジャーナル」という雑誌が、私のことをボロクソに書いたひどい記事を載せようとしている。この記事が出たら、私の選挙は台無しだ。評判もズタズタになってしまう!
雑誌社のBさん

私たちは、政治家であるあなたの本当の姿を国民に知らせる義務があるんです。どんな内容を書くかは私たちの自由。憲法21条には「表現の自由」が保障されているはずだ!
政治家のAさん

たとえ自由でも、ウソやデタラメで人を傷つけるのは許されない。憲法13条には「個人の尊重」や「名誉」を守る権利があるんだ。裁判所さん、この雑誌が発売される前に差し押さえて止めてください!
雑誌社のBさん

発売前に止めるなんて「検閲(けんえつ)」と同じだ!そんなの憲法違反だ!裁判所が勝手に意見を封じ込めるなんて絶対におかしい!

【解説】裁判所でのバトル:登場!「魔法の天秤」と「厳しい門番」

今回のバトルのポイントは、「発売前に止める(事前差止:じぜんさしとめ)」という行為が、憲法で禁止されている「検閲」にあたるのか、そして許されるとしてもどんな時なのか、ということだよ。

裁判所は、憲法21条の「表現の自由」をとても大切に考えているんだ。だから、発売前に国が内容をチェックして止める「検閲」は、絶対にしてはいけないことだと決めているよ。

でも、今回のケースは「裁判所」が「個人の名誉」を守るために止めること。これは、政府が一方的に意見を封じ込める「検閲」とはちょっと違うけれど、それでも「表現の自由」を奪うとっても強力なブレーキであることには変わりないんだね。

そこで、裁判所は「魔法の天秤」を使って、次のような「厳しい門番(条件)」をクリアしたときだけ、発売前に止めてもいいというルールを作ったんだ。

1. 内容は本当か?:書かれていることが明らかにウソだったり、みんなの利益(公共の利益)のためじゃなかったりすること。
2. 取り返しのつかないダメージか?:その本が出ると、被害を受ける人の名誉がボロボロになって、後でお金をもらっても解決できないくらいひどい状態になること。

この2つの高いハードルを両方超えたときだけ、特別に発売を止めてもいいよ、と判断したんだ。

【判決】発売前に止めるのは、とっても「特別」な場合だけ!

最高裁判所大法廷(昭和61年6月11日)は、次のような答えを出しました。

1. 基本は「発売前に止めてはダメ」! 表現行為に対する事前抑制は、表現の自由を保障する憲法21条の趣旨に照らし、原則として許されません。
2. でも、名誉を守るために「例外」を認める! 内容が真実ではなく、専ら公益を図る目的でもないことが明白で、被害者が重大で著しく回復困難な損害を被るおそれがあるときは、裁判所が発売を止めることができます。

【判決の言葉】

補足
最高裁判所の判決(昭和61年6月11日)より
「表現行為に対する事前抑制は、表現の自由を保障する憲法21条の趣旨に照らし、厳格かつ明確な要件の下においてのみ許容されうる。」
※名誉権は憲法13条によって人格権の一内容として保障されるものであり、表現の自由とのバランスが重要であると示されました。

【追記】判決の後、日本はどう変わったの?

この判決は、日本の「ニュース」や「出版」の世界のルールを大きく整理したよ。

「とりあえず止める」ができなくなった! 力のある政治家や有名人が、自分に都合の悪い本が出そうになったとき、簡単に裁判所に頼んで発売を止めることができなくなったんだ。この「厳しい条件」があるおかげで、私たちは自由に情報を知ることができるようになっているんだよ。
「名誉」の大切さが改めて認められた! 一方で、どんなに「自由」だと言っても、誰かの人生をメチャクチャにするようなひどいウソを広めることは許されない、という「名誉権」の重みもはっきりしたんだ。
裁判所のチェックが慎重になった! 本を止めるかどうかを決めるときは、できるだけ書いた側の意見も聴かなければならないというルールが意識されるようになったよ。

まとめ

まとめ

– 憲法は、自分の意見を発表する「表現の自由」を最大限に守っている
– でも、誰かの「名誉(評判)」も同じくらい大切な権利として守られている
– 発売前に本を止めるのは、「明らかなウソ」で「ひどい損害が出る」ときの特別な例外だけなんだね!

「自由に言えること」と「人を傷つけないこと」。この2つの正義がぶつかったときに、どうやってバランスをとるかを教えてくれる、とっても大切で有名な裁判だったんだよ。

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