行政・法律の疑問 読了 4分

女性だからって早くやめさせるのはダメだよっていう判例【日産自動車事件】

★ 判例データ

事件名:雇傭関係存続確認等請求上告事件(日産自動車男女別定年制差別上告審判決)
裁判所:最高裁判所
判決日:昭和56年3月24日

関係法令:
・民法90条(公序良俗)
・日本国憲法14条(平等原則)

論点:
・男女別定年制
・公序良俗違反
・間接適用
・性差別

結論:
・女性の定年を男性より低く定めた就業規則は、性別のみによる不合理な差別として民法90条の公序良俗に違反し、無効

こんにちは! 今日は、「男性は55歳まで、女性は50歳まで」という会社のルールが裁判で無効にされた、日本の働く女性の権利を守った大事な判例を紹介するよ。

「同じ仕事をしているのに、女性だというだけで5年も早くやめさせられるのはおかしい!」という声が、最高裁判所を動かした事件なんだ。

【ストーリー】「なぜ私だけ早くやめなければいけないの?」 vs 「就業規則に決まっています」

女性社員のAさん

私はずっと一生懸命働いてきました。でも会社の就業規則(しゅうぎょうきそく)には「女性は50歳で定年(ていねん)」と書いてあります。男性の定年は55歳なのに、なぜ私だけ5年も早く仕事をやめなければならないんですか?
会社(日産自動車)

就業規則は会社が決めるルールです。男女で定年を変えているのは合理的な理由があってのことで、長年のやり方です。これは会社の自由(契約の自由)の範囲内ですよ。
Aさん

でも、仕事の内容や能力はまったく同じです。「女性だから」というだけで5年早く追い出されるのは、明らかな性差別(せいさべつ)ではないですか! 憲法14条は「法の下の平等」を定めているはずです!
会社(日産自動車)

憲法は国と国民の関係のルール。私人どうしの労働契約には直接あてはまりません。
Aさん

では民法90条の「公序良俗(こうじょりょうぞく)」はどうでしょう。性別だけで差別するルールは、社会の常識(公序良俗)に反しているはずです!

【解説】裁判所でのバトル:登場!「公序良俗(民法90条)という切り札」

今回のバトルのカギは、三菱樹脂事件でも登場した「間接適用」の考え方だよ。

憲法の平等原則は、国と個人の関係を直接縛るルール。だから、会社(民間)と社員の間には直接は適用されないんだ。

でも裁判所は、こう考えたんだ。「民法90条の公序良俗(社会の常識に反する行為は無効)という規定を解釈するとき、憲法の平等原則の価値観を取り込んで考えることができる。そうすると、性別のみを理由とした不合理な差別的取扱いは、公序良俗に反して無効になる」ってね。

これが「間接適用」の切り札だよ。憲法→民法90条→就業規則の無効、という流れで、女性社員の主張が認められたんだ。

裁判所は「女性は男性より体力が劣る」「家庭に入るべき」といった一般論を根拠にした差別は、「合理的な理由のない差別」として認めなかったんだね。

【判決】男女別定年制は「公序良俗違反」で無効!

最高裁判所(昭和56年3月24日)は、次のような答えを出しました。

1. 性別だけによる定年差別は公序良俗違反! 女性の定年を男性より低く設定した就業規則は、性別のみによる不合理な差別であり、民法90条の公序良俗に違反して無効です。
2. 就業規則の該当部分が無効に! 女性に不利な定年規定は効力を持たず、Aさんは定年後も雇用関係が継続していると認められました。

【判決の言葉】

補足
最高裁判所の判決(昭和56年3月24日)より
「右就業規則中女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、専ら女子であることのみを理由として差別したことに帰着するものであり、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条の規定により無効であると解するのが相当である(憲法14条1項、民法1条ノ2参照)。」
補足
補足:民法90条の条文
「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」(民法90条)
本判決は、この「公序良俗」に反する法律行為を無効とする一般規定を通じて、就業規則という私人間の取り決めに、憲法14条の平等原則の価値観を読み込んだもの。

【追記】判決の後、日本はどう変わったの?

この判決は、職場での男女平等を実現するうえで、とても大きな一歩になったよ。

「性差別的な就業規則は無効」という原則が確立した! 「女性だから」というだけで不利な扱いをする就業規則は、民法90条違反として無効になるという考え方が定着したんだ。
男女雇用機会均等法(きんとうほう)が生まれた! この判決の流れを受けて、1985年に「男女雇用機会均等法」が制定されたよ。採用・昇進・定年など、あらゆる職場の場面での性差別を禁止する法律ができたんだね。
「三菱樹脂事件との対比」が教科書に載るようになった! 三菱樹脂事件では会社側が勝ち、日産自動車事件では女性社員側が勝った。同じ「間接適用」の理論を使っても、差別の合理性があるかどうかで結論が変わる、ということを示した例として、法律の世界でセットで語られるようになったんだよ。

まとめ

まとめ

– 会社のルール(就業規則)も、性別だけによる不合理な差別は民法90条(公序良俗)違反で無効
– 憲法の平等原則は、民法を通じた「間接適用」で私人間にも影響を与える
– この判決が、日本の職場での男女平等を進める男女雇用機会均等法の制定につながったんだね!

「法律は社会を変える道具になれる」ということを、働く女性たちの勇気ある戦いが証明してくれた判例だったんだよ。

この判例、ほかの時代の判例ともつながっています
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