行政・法律の疑問 読了 4分

近くに薬局があるからダメ?「距離の壁」は憲法違反だよっていう判例【薬事法距離制限違憲判決】

★ 判例データ

事件名:行政処分取消請求上告事件(薬事法距離制限違憲判決)
裁判所:最高裁判所
判決日:昭和50年4月30日

関係法令:
・憲法22条1項
・薬事法

論点:
・職業選択の自由
・規制目的二分論
・消極目的規制

結論:
・薬局の開設について既存薬局からの距離制限を設ける薬事法の規定は、憲法22条1項が保障する職業選択の自由を不当に侵害し、憲法違反で無効である

こんにちは! 今日は、日本の裁判の歴史の中でも、最高裁判所が「この法律は憲法(けんぽう)違反だ!」とはっきり言った、とっても珍しくて大事な事件を紹介するよ。 「仕事をする自由」と「みんなの健康を守るためのルール」のバランスについて、裁判所がどう考えたのか見てみよう。

【ストーリー】「新しい薬局を作りたい!」 vs 「近くにあるからダメです」

薬局を開きたいAさん

私は、この場所に新しく薬局を開きたいと思っています。住民の皆さんの役に立ちたいんです!
県の担当者

うーん、残念ですが、許可は出せません。今の「薬事法(やくじほう)」というルールでは、すでにある薬局から「100メートル(などの一定の距離)」離れていないと、新しい薬局は作れないことになっているんです。
Aさん

えっ、どうしてですか? 私は薬剤師の資格ももっているし、正しい薬を売る準備もできています。
国の担当者

薬局が近すぎると、激しい競争(きょうそう)が起きてしまいます。そうなると、経営が苦しくなった薬局が、期限切れの薬を売ったり、いい加減な管理をしたりするかもしれません。それは国民の「健康(公共の福祉)」に関わる重大な問題なんです。だから距離の制限があるんですよ。
Aさん

そんなの、ただの想像(そうぞう)じゃないですか! 私は一生懸命(いっしょうけんめい)勉強してこの仕事を選んだんです。憲法22条には「職業選択の自由」が保障されているはずです。納得がいきません! 裁判所さん、このルールは「やりすぎ」じゃないですか?

【解説】裁判所でのバトル:登場!「魔法の物差し(規制目的二分論)」

今回のバトルで、裁判所は「規制目的二分論(きせいもくてきにぶんろん)」という、「法律の目的を2つに分ける魔法の物差し」を使ってルールをチェックしたよ。

裁判所は、経済(けいざい)の自由を制限する法律には、次の2つのタイプがあると考えたんだ。

1. 「消極目的(しょうきょくもくてき)」のルール:みんなの生命や健康に危険が及ぶのを防ぐための、「守り(警察的)」のルール。
2. 「積極目的(せっきょくもくてき)」のルール:社会を良くしたり、弱者を助けたりするための、「攻め(社会政策的)」のルール。

今回の「薬局の距離制限」は、薬による健康被害(ひがい)を防ぐためのものだから、1番の「消極目的」にあたると判断されたんだ。

そして、この「守り」のルールの場合は、「もっと緩(ゆる)やかな方法(例えば薬局のチェックを厳しくするなど)で目的が達成できるなら、個人の自由を強くしばる許可制や距離制限を使ってはいけない」という、とっても厳しい基準(厳格な合理性の基準)でチェックすることにしたんだよ。

裁判所はこう言ったんだ。「薬局が競争しても、必ずしも悪い薬が売られるとは限らない。距離の制限までして新しいお店を拒(こば)むのは、職業の自由を奪(うば)いすぎだ!」ってね。

【判決】距離で薬局を制限するのは「憲法違反」!

最高裁判所(昭和50年4月30日)は、次のような答えを出しました。

1. 薬事法の距離制限は「憲法違反」で無効! 薬局の距離を制限して新しい許可を出さないことは、憲法22条1項が保障する「職業選択の自由」を不当に侵害していると判断されました。
2. 目的と手段のバランスがおかしい! 国民の健康を守るという目的は正しいけれど、そのために「距離を離せ」というのは、必要のない、やりすぎな制限だとはっきり言われたんだ。

【判決の言葉】

補足
最高裁判所の判決(昭和50年4月30日)より
「職業は、ひとりその選択、すなわち職業の開始、継続、廃止において自由であるばかりでなく、選択した職業の遂行自体、すなわちその職業活動の内容、態様においても、原則として自由であることが要請されるのであり、したがつて、右規定〔憲法22条1項〕は、狭義における職業選択の自由のみならず、職業活動の自由の保障をも包含している。」

【追記】判決の後、日本はどう変わったの?

この判決は、日本の法律の作り方や、裁判所のチェックの仕方を大きく変えることになったよ。

「薬局の距離制限」がなくなった! 判決を受けて、薬事法から距離を制限するルールが消えたんだ。これによって、駅前などの便利な場所に薬局が増え、私たちが薬を買いやすくなるきっかけになったんだよ。
「経済の自由」を守る強力な武器ができた! 「規制目的二分論」という考え方が定着して、国が個人のビジネスに口を出すときは、「その目的は何?」「もっと自由を奪わない別の方法はないの?」と、裁判所がより厳しくチェックするようになったんだ。
「違憲(いけん)」という言葉の重みが知れ渡った! 最高裁判所が法律そのものを「ダメだ」と言うことは、日本の歴史の中でも数えるほどしかないんだ。この事件は、憲法が私たちの自由を守るために、いかに強力なパワーをもっているかを日本中に示した歴史的な出来事だったんだね。

まとめ

まとめ

– 憲法は、自分の好きな仕事を選び、自由に続ける「職業選択の自由」を守っている
– 「薬局が近すぎると危ない」という国の理由は、「根拠が足りないし、やりすぎだ」と否定された
– この判決により、「個人の自由をしばるなら、どうしても必要な場合だけにしなければならない」という大切なルールがはっきりしたんだね!

「みんなのため」という理由であっても、誰かの自由を奪うときにはちゃんとした理由とバランスが必要なんだ、ということを教えてくれる判決だったんだよ。

補足
条文補足:日本国憲法第22条1項
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
この判例、ほかの時代の判例ともつながっています
「判例年次索引」で明治〜令和の判例をまとめて見られます。
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