行政・法律の疑問 読了 4分

公務員はストライキの「応援」もダメ!全面禁止は憲法違反じゃないよっていう判例【全農林警職法事件】

★ 判例データ

事件名:国家公務員法違反被告事件(全農林警職法事件上告審判決)
裁判所:最高裁判所大法廷
判決日:昭和48年4月25日

関係法令:
・日本国憲法28条(労働基本権)
・国家公務員法(争議行為の禁止・刑事罰規定)

論点:
・公務員の労働基本権(ストライキ権)の制限
・争議行為のあおり行為への刑事罰の合憲性
・限定解釈論の否定

結論:
・公務員の争議行為全面禁止および刑事罰は憲法28条に違反しない

こんにちは! 今日は、役所でお仕事をする「公務員」の人たちが、「お給料を上げて!」とか「この法律に反対!」と言って仕事を休む(ストライキをする)ことについてのお話だよ。

普通の会社のサラリーマンなら認められている権利が、公務員だとどうして厳しく制限されるのか、最高裁判所が出した「とっても厳しい答え」を見てみよう。

【ストーリー】「法律に反対して会議に出よう!」 vs 「それは犯罪です」

農林省で働く組合員のAさんたち

国が「警察官職務執行法(警職法)」という法律を変えようとしています。これは私たちの自由を奪う悪い改正です! みんなで反対の声を上げましょう。明日の仕事中に職場を抜け出して、みんなで反対集会を開くよう、組合員のみんなに呼びかけます!
国の検察官

ちょっと待ってください。国家公務員法というルールでは、公務員が仕事をボイコットする(争議行為)ことをあおったり、そそのかしたりすることは厳しく禁止されています。Aさん、あなたは「違法なストライキを応援した」罪で捕まえます!
Aさん

そんなのひどいです! 憲法28条には、働く人が団結して行動する権利(労働基本権)が保障されているはずです。公務員だって働く人間です。自分の意見を言うために行動して何が悪いんですか!
国の検察官

公務員は「国民全体の奉仕者」です。あなたたちが勝手に仕事を休んだら、国民みんなが受けるべき行政サービスが止まって、大混乱が起きてしまいます。だから、ストライキもそれを応援することも、一律に禁止されているんです。

【解説】裁判所でのバトル:登場!「魔法のしぼり(限定解釈)」の廃止

今回のバトルの最大のポイントは、「公務員の権利をどこまで認めるか」という物差しを、裁判所がガラッと変えてしまったことなんだ。

実は、この裁判の少し前までは、別の裁判(全逓東京中郵事件など)で「魔法のしぼり(限定解釈)」という考え方が使われていたんだよ。それは、「公務員のストライキ禁止は、国民生活に本当に重大な迷惑をかける、特にひどい場合だけに絞って罰するべきだ」という、少し優しい考え方だったんだ。

でも、今回の最高裁判所は、その「しぼり」を捨てて、とっても厳しい姿勢をとったんだ。 「労働基本権は大事だけれど、絶対的なものじゃない。公務員の雇い主は『国民全体』なんだ。 公務員の仕事が止まると国民の利益が損なわれるから、ストライキを全面的に禁止して、それをあおる人を罰することは、憲法違反とはいえない!」と考えたんだね。

裁判所は、公務員という身分の「特殊性」と、仕事の「公共性」という「強力な壁」を改めて強調したんだ。

【判決】ストライキのあおり行為を罰するのは「合憲」!

最高裁判所大法廷(昭和48年4月25日)は、次のような答えを出しました。

1. 公務員は「国民全体の奉仕者」である! 公務員の雇い主は国民全体であり、職務の公共性が高いため、労働基本権を制限することには十分な理由があると判断されました。
2. 全面禁止と刑事罰は憲法違反ではない! 争議行為を一律に禁止し、それをあおる行為に刑事罰を科す国家公務員法の規定は、憲法28条に違反しないとはっきり認められました。

【判決の言葉】

補足
最高裁判所大法廷の判決(昭和48年4月25日)より
「労働基本権は、勤労者の経済的地位の向上のための手段として認められたものであって、それ自体を目的とする絶対的なものではないから、勤労者を含めた国民全体の共同利益の見地からの制約を免れない。」
「公務員の地位の特殊性と職務の公共性にかんがみるならば、……労働基本権に対し必要やむをえない限度の制限を加えることには、十分合理的な理由がある。

【追記】判決の後、日本はどう変わったの?

この判決は、日本の公務員の働き方のルールを決定づける大きな転換点になったよ。

「ストライキ厳禁」の時代が確定した! それまでの「少しなら許されるかも?」という期待が消えて、「公務員のストライキは一切ダメ」という非常に厳しいルールが定着したんだ。この後、地方公務員のストライキについても同じように「ダメ」という判決が続いたよ。
「国民全体の奉仕者」という言葉が重くなった! 公務員は自分の権利よりも、まず国民のために働くことが法律の世界で強く求められるようになったんだ。
今でも「ストライキ権」をめぐる議論は続いている! 世界的に見ると、日本ほど公務員のストライキを厳しく禁じている国は珍しいとも言われていて、現在でも「代わりの権利をちゃんと認めるべきだ」という議論がずっと続いている、とっても難しい問題なんだよ。

まとめ

まとめ

– 憲法28条は働く人の権利を守っているけれど、公務員には強い制限がある
– 公務員は「国民全体の奉仕者」だから、仕事をとめるストライキは許されない
– この判決により、「ストライキ禁止は合憲」という今の日本のスタンダードが決まったんだね!

みんなが市役所や学校で当たり前にサービスを受けられる裏側には、こうした厳しい憲法のルールがあるんだね!

補足
日本国憲法第二十八条
「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」
この判例、ほかの時代の判例ともつながっています
「判例年次索引」で明治〜令和の判例をまとめて見られます。
索引を見る
新着の「ムダ知識」をメールで
週1回、選りすぐりの疑問だけ届きます。
登録する