行政・法律の疑問 読了 4分

会社と社員の間には憲法じゃなくて民法が使われるよっていう判例【三菱樹脂事件】

★ 判例データ

事件名:労働契約関係存在確認請求上告事件(三菱樹脂本採用拒否事件)
裁判所:最高裁判所
判決日:昭和48年12月12日

関係法令:
・日本国憲法14条・19条
・民法90条(公序良俗)

論点:
・私人間効力
・思想・信条の自由
・契約の自由
・間接適用説

結論:
・憲法の基本的人権規定は国と個人の関係を直接規律するものであり、私人間には直接適用されない。ただし民法90条などを通じた間接適用はあり得る

こんにちは! 今日は、「憲法って、会社と社員の間にも使えるの?」というギモンに最高裁判所がはっきり答えた、とっても大事な裁判を紹介するよ。

「自分の考えや学生時代の活動を会社に隠していた」というだけで、採用を取り消されてしまったら、それは許されるの? という問いから始まる、日本の法律の歴史を変えた判例なんだ。

【ストーリー】「思想を理由にクビにされた!」 vs 「採用するかどうかは会社の自由です」

Aさん(試用期間中の社員)

私は大学時代に学生運動に参加していました。でも、就職活動ではそれを会社には話しませんでした。会社に採用されて働き始めたのに、あとからそれがバレて、試用期間が終わった後に「本採用はしない」と言われてしまいました。これって、私の「思想・信条(しそう・しんじょう)の自由」を侵害していませんか?
会社(三菱樹脂)

採用する人を選ぶのは会社の自由です。学生運動に参加していたことを隠して応募したのは、重要な情報を偽ったということになります。私たちには、誰と労働契約を結ぶかを自由に決める権利(契約の自由)があります。
Aさん

でも憲法14条は「差別してはいけない」、憲法19条は「思想・信条の自由」を保障しているはずです。会社がこうした権利を侵害するのは、憲法違反じゃないですか!
会社(三菱樹脂)

憲法は、国が国民の権利を侵してはいけないというルールです。私たち会社(民間の私人)と社員の関係に、憲法は直接あてはまりません。

【解説】裁判所でのバトル:登場!「魔法の壁(直接適用・間接適用)」

今回のバトルで、裁判所は「憲法は誰に向けられたルールなのか?」という根本的な問いと向き合ったんだ。

裁判所はまず、こう整理したよ。「憲法にある基本的人権の規定は、もともと国家権力が個人の権利を侵さないようにするためのルールだ。だから、国と個人の関係には直接あてはまるけれど、民間の会社と社員のような『私人(しじん)どうし』の関係には直接あてはまらないんだよ」って。

これを「直接適用しない(直接効力説を否定)」と言うんだ。

でも、裁判所は完全に「憲法は関係ない」とは言わなかったんだよ。

「民法90条(公序良俗:こうじょりょうぞく)などの規定は、私人間の行為にあてはめるとき、憲法の価値観に照らして解釈することができる」とも言ったんだ。これを「間接適用(かんせつてきよう)」と言うよ。つまり、憲法の精神を、民法というクッションを通じて間接的に私人間に届かせる考え方だね。

【判決】憲法は直接は使えないが、今回の解雇も問題なし!

最高裁判所(昭和48年12月12日)は、次のような答えを出しました。

1. 憲法の人権規定は私人間に直接は適用されない! 憲法14条・19条は、国と個人の関係を直接規律するものであり、私人間(会社と社員)には直接あてはまりません。
2. 会社には採用の自由がある! 企業は、誰を採用するかについて広い自由をもっており、思想・信条を調査したり、それを理由に採用を拒否したりすることは、直ちに違法とはいえません。
3. 本件の本採用拒否は有効! Aさんが学生運動への参加を申告しなかったことを理由とした本採用拒否は、会社の裁量の範囲内であり、無効とはならない。

【判決の言葉】

補足
最高裁判所の判決(昭和48年12月12日)より
「憲法の右各規定は、同法第三章のその他の自由権的基本権の保障規定と同じく、国または公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障する目的に出たもので、もっぱら国または公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない。」

【追記】判決の後、日本はどう変わったの?

この判決は、日本における「憲法と私人間の関係」を考えるうえで、欠かすことのできない出発点になったよ。

「間接適用説」が通説になった! 裁判所が「直接適用はしないが、民法などを通じた間接適用はあり得る」と示したことで、この「間接適用説」が日本の法律学の通説として定着したんだ。
「採用の自由」と「差別禁止」のせめぎあいが続いた! 企業側の採用の自由はとても広く認められたけれど、後に「合理的な理由のない思想・信条差別は、公序良俗違反(民法90条)に当たる場合がある」という形で、少しずつ制限が加えられていくことになるんだ。
労働法が整備された! 採用・解雇での不当な差別を防ぐために、雇用機会均等法(こようきかいきんとうほう)や労働契約法など、民法とは別の法律が整備されるきっかけにもなったよ。

まとめ

まとめ

– 憲法の人権規定は、国と個人の関係を守るルールであり、民間の会社と社員の間には直接あてはまらない
– ただし、民法90条(公序良俗)などを通じた「間接適用」はあり得る
– 企業には採用の自由があるが、その後の労働法整備により、不当な差別に歯止めがかけられるようになったんだね!

「憲法って誰のためのルールなの?」という、一番根っこにある問いに答えてくれた、とっても大切な判例だったんだよ。

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