行政・法律の疑問 読了 4分

公務員のストライキは「よっぽど悪いとき」だけ罰せられるよっていう判例【都教組(ときょうそ)事件】

★ 判例データ

事件名:地方公務員法違反被告事件(都教組事件上告審判決)
裁判所:最高裁判所
判決日:昭和44年4月2日

関係法令:
・憲法28条
・地方公務員法37条1項
・地方公務員法61条4号

論点:
・労働基本権
・二重のしぼり論
・可罰的違法性

結論:
・公務員のストライキの「あおり行為」も、争議行為自体の違法性が強く、かつ通常随伴する行為にとどまらない場合に限って処罰される(無罪)

こんにちは!今日は、学校の先生などの「公務員」が「ストライキ(仕事を休んで抗議すること)」をしたときに、犯人として捕まってしまうのか?という問題についてのお話だよ。

実は今の日本のルールでは、公務員はストライキを禁止されているんだ。でも、昔の最高裁判所が一度だけ、「ルール違反だけど、刑事罰(刑務所行きなど)にするのはやりすぎじゃない?」と、少し優しい判断をしたことがあるんだよ。

【ストーリー】「給料を上げて!」 vs 「公務員のストライキは犯罪だ!」

東京都の先生たち(都教組)

私たちは子供たちのために一生懸命働いていますが、今の給料や働く環境には納得がいきません。みんなでいっせいに仕事を休んで、教育委員会に抗議(ストライキ)をしましょう!
国の検察官

ちょっと待ってください! 地方公務員法という法律には、「公務員はストライキをしてはいけない」とはっきり書いてあります。しかも、それを仲間に「やろうぜ!」と誘ったリーダー(あおり行為)は、警察に捕まって罰を受ける(刑事罰)ことになっているんです!
先生たちのリーダー

でも、私たちだって「働く人(勤労者)」です。憲法28条には、働く人が団結して抗議する権利が守られているはずです! 公務員だからといって、ストライキを呼びかけただけで犯罪者扱いされるなんて、あんまりです!
国の検察官

公務員は「全体の奉仕者」として、市民のために働かなければなりません。ストライキで役所や学校が止まったら、困るのは住民なんです。だから、法律で厳しく禁止されているんですよ!

【解説】裁判所でのバトル:登場!「魔法のふるい(二重のしぼり論)」

今回のバトルで、裁判所は「二重(にじゅう)のしぼり」という、とっても有名な「魔法のふるい(クッション)」を考え出したんだ。

裁判所はこう考えたんだ。「確かに法律では公務員のストライキはダメだと言っている。けれど、ストライキをしたからといって、すぐに全員を犯罪者として処罰するのは、憲法が守っている『働く人の権利』を無視しすぎているよね」って。

そこで、誰を罰するか決めるために、次の2つの「しぼり(条件)」でチェックすることにしたんだ。

1. ストライキ自体のチェック:そのストライキが、市民の生活に「ものすごく重大な悪影響」を与える、本当にひどいものだったか?
2. 誘い方のチェック:リーダーの誘い方が、単に「みんなでやろう」と言っただけでなく、無理やりやらせるような「とても悪い方法」だったか?

この2つのふるいにかけて、「よっぽど悪い場合」にだけ、刑事罰(犯罪)にしましょう、と決めたんだね。これを「可罰的(かばつてき)違法性」の考え方ともいうよ。

今回の都教組の先生たちのケースは、このふるいにかけた結果、「そこまでひどい悪影響はないし、誘い方も普通だった」と判断され、なんと「無罪(むざい)」になったんだ。

【判決】ストライキの「あおり」も、内容次第では罰せられない!

最高裁判所(昭和44年4月2日)は、次のような答えを出しました。

1. 公務員のストライキ禁止は、ゆるやかに解釈する! 法律で一律に禁止されていても、すべてを犯罪として罰するのではなく、権利とのバランスを考えて、範囲をしぼって処罰すべきだとされました。
2. ひどい場合を除いて、刑事罰は与えない! この事件の先生たちの行為は、社会に大きな害を与えたとまでは言えないので、地方公務員法違反の罪にはあたらない(無罪)と判断されました。

【判決の言葉】

補足
最高裁判所の判決(昭和44年4月2日)より
「(地方公務員法37条1項、61条4号は……)争議行為自体が違法性の強いものであり、かつ、……争議行為に通常随伴して行われる行為にとどまらないあおり行為等を処罰するものと解釈すべきである。」

【追記】判決の後、日本はどう変わったの?

この判決が出たときは、「公務員の権利が認められた!」と、多くの労働者が喜びました。しかし、その後の日本のルールはまた厳しく変わっていったんだ。

「全農林(ぜんのうりん)事件」でルールが元に戻った! 数年後の昭和48(1973)年、別の裁判(全農林警職法事件)で、最高裁は今回の「ふるい(二重のしぼり)」の考え方を否定してしまったんだ。
今の公務員はストライキに厳しい! 全農林事件の後は、「公務員は全体の奉仕者なのだから、どんなストライキも禁止。あおった人は罰せられる」という厳しいルールが復活し、それが今の日本のスタンダードになっているよ。
「働く権利」について考えるきっかけになった! この都教組事件は、日本が「公務員の仕事の公共性」と「一人の人間としての働く権利」の間で、いかに激しく悩んできたかを示す、歴史的な記念碑のような判決として、今でも法学部などで大切に学ばれているんだよ。

まとめ

まとめ

– 昔の最高裁は、公務員のストライキも「よっぽど悪いとき」以外は罰しないという「二重のしぼり」というルールを作った
– この判決により、一時期は公務員のストライキを呼びかけても無罪になることがあった
– けれど、その後の別の判決でこの考え方は否定され、今はまた公務員のストライキには厳しい社会になっているんだね

「ルールを守ること」と「個人の自由を守ること」のバランスは、時代によって変わっていくこともあるんだね!

補足
条文補足:日本国憲法第28条
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
この判例、ほかの時代の判例ともつながっています
「判例年次索引」で明治〜令和の判例をまとめて見られます。
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