事件名:自衛隊法違反被告事件(恵庭事件判決)
裁判所:札幌地方裁判所
判決日:昭和42年3月29日
関係法令:
・憲法9条
・自衛隊法121条
論点:
・憲法判断回避の準則
・付随的違憲審査制
・自衛隊
結論:
・通信線を切った行為は自衛隊法121条の構成要件に該当しないため無罪。自衛隊法に対する憲法判断は回避された
こんにちは!今日は、北海道の静かな牧場で起きた、日本の「自衛隊(じえいたい)」をめぐる、とっても不思議な結末の裁判を紹介するよ。
「自衛隊は憲法(けんぽう)違反じゃないの?」という、国全体に関わる大きな問題について、裁判所がどう答えたのか(あるいは答えなかったのか)を見てみよう。
【ストーリー】「牛がびっくりする!」 vs 「国の守りだ!」
私たちの牧場のすぐ隣で、自衛隊が演習(えんしゅう:大砲(たいほう)を撃つ訓練など)をしています。その音がものすごくて、大事な牛たちが怯(おび)えてミルクが出なくなったり、病気になったりして困っているんです。何度も「やめてほしい」とお願いしたのに、自衛隊は聞き入れてくれません。
これは国の平和を守るための大事な訓練です。法律(自衛隊法)に基づいて正しく行っています。
もう我慢できません!(演習場の通信線を、ハサミでプチンと切る)。
ああっ! 何をするんですか! 通信線を切るのは「自衛隊法121条(防衛に使う物を壊す罪)」というルール違反です。あなたたちを起訴(きそ)します!
ちょっと待ってください。そもそも、憲法9条には「戦力(軍隊の力)をもっちゃいけない」と書いてあります。自衛隊は戦力ですよね? ということは、自衛隊をつくっている「自衛隊法」そのものが憲法違反で、無効のはずです! ルール自体が無効なら、線を切っても罪にはならないはずだ! 裁判所さん、自衛隊が憲法違反かどうかハッキリさせてください!
【解説】裁判所でのバトル:登場!「魔法の回避(憲法判断回避の準則)」
今回のバトルで、裁判所は「憲法判断回避(けんぽうはんだんかいひ)の準則」という、「問題を後回しにする魔法(クッション)」を使ったよ。
普通、裁判所は「法律が憲法を守っているか」をチェックする「憲法の番人」の役割をもっているけれど、同時に「具体的なケンカ(事件)を解決するために、どうしても必要な時だけ憲法を持ち出す」というルール(付随的違憲審査制:ふずいてきいけんしんさせい)も守っているんだ。
裁判所はこう考えたんだ。 「自衛隊が憲法違反かどうかという問題は、日本中を巻き込むものすごく大きな問題だ。でも、今回の事件は、あくまで『通信線を切ったことが自衛隊法121条の罪になるか』というケンカだよね。もし、憲法を使わなくても、普通の法律の解釈だけで答えが出せるなら、わざわざ憲法の話をするのはやめておこう」って。
これを「必要性の原則」というよ。裁判所は、大きな問題を避けて、目の前の「線」が何なのかをじっくり調べたんだ。
【判決】自衛隊が憲法違反かは、言わなくてもいい!
札幌地方裁判所(昭和42年3月29日)は、次のような答えを出しました。
1. 野崎さん兄弟は「無罪(むざい)」! 通信線を切ったことは、自衛隊法121条が守ろうとしている「重要な防衛用の物」を壊したことにはあたらない、と判断されました。
2. 憲法については、あえて何も言わない! 「通信線を切ったことが罪にならない」と法律で決まったのであれば、自衛隊が憲法違反かどうかを判断する必要はなくなりました。だから、その大きな質問については答えないことにします、と決めたんだ。
【判決の言葉】
札幌地方裁判所の判決(昭和42年3月29日)より
「(自衛隊の通信線を切った行為は)自衛隊法121条の構成要件には該当しないとして、自衛隊法に対する憲法判断を回避して無罪判決を下した。」
【追記】判決の後、日本はどう変わったの?
この判決は、日本の裁判の「ルール」を強く印象づけることになったよ。
– 「憲法判断は最後の手段」というルールが定着した! この事件のように、普通の法律の解釈で解決できるときは、あえて憲法に触れないというやり方が、日本の裁判所の標準的なスタイルになったんだ。
– 自衛隊をめぐる論争は終わらなかった! 裁判所が「憲法違反かどうか」の答えを出さなかったことで、自衛隊と憲法9条をどう考えるかという議論は、その後もずっと日本中で続けられることになったんだ。
– 裁判所の「慎重さ」がはっきりした! 裁判所は、政治的にデリケートすぎる問題については、法的な理屈(クッション)を使って、安易に踏み込まないようにしていることが国民に広く知られるようになったんだよ。
まとめ
– 大きな憲法問題(自衛隊など)があっても、裁判所はあえて判断を避けることがある
– これを「憲法判断回避の準則」と呼ぶ
– 裁判所は、目の前の事件を法律で解決できるなら、憲法までは持ち出さないのが基本なんだね!
「答えを知りたい!」と思う私たちにとってはちょっとモヤモヤするけれど、裁判所が政治に振り回されないための、大切な知恵なのかもしれないね!
条文補足:日本国憲法第9条
第1項:日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
第2項:前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。