事件名:待命処分無効確認取消等請求上告事件(待命処分事件)
裁判所:最高裁判所大法廷
判決日:昭和39年5月27日
関係法令:
・日本国憲法14条1項(法の下の平等)
論点:
・「法の下の平等」の意味(絶対的平等 vs 相対的平等)
・合理的根拠に基づく区別の合憲性
・公務員の待命処分と給与減額の適法性
結論:
・事柄の性質に即応した合理的根拠に基づく差別的取扱いは憲法14条1項に違反しない(相対的平等)
こんにちは! 今日は、憲法の「平等」についての、とっても大切なお話だよ。「法の下の平等」って、「どんな時も、全員を1ミリの狂いもなく同じに扱わなきゃいけない」って意味なのかな?
実は、そうじゃないんだ。裁判所が「平等とはどういうことか」について、今の日本のルールの「土台」となる答えを出した事件を見てみよう。
【ストーリー】「給料が減らされるなんて不平等だ!」 vs 「これには理由があるんです」
私は公務員として働いていますが、ある事情で「待命(たいめい)処分」という、いわゆる「自宅待機」の命令を受けました。しかも、その間はお給料も減らされてしまいます。
はい。ルール(法律や命令)に従って、今は仕事をしていない状態なので、お給料を調整させてもらいました。
そんなの納得できません! 憲法14条には「法の下に平等」と書いてあります。普通に働いている人と、待命処分を受けている私を区別して、私だけお給料を減らすなんて、憲法違反の「差別」じゃないですか!
何でもかんでも同じに扱うのが平等ではありません。Aさんの状況は、普通に働いている人とは明らかに違います。その「違い」に合わせてルールを変えるのは、むしろ正しいことのはずです!
【解説】裁判所でのバトル:登場!「相対的平等」という物差し
今回のバトルのポイントは、憲法14条1項の「平等」という言葉をどう解釈するか、ということだよ。
裁判所は、ここで「相対的(そうたいてき)平等」という考え方を使ったんだ。
裁判所はこう考えたんだ。「憲法が言っている『平等』とは、どんな時でも絶対にお給料や扱いを同じにしなきゃいけない、という『絶対的平等』のことではないんだよ」ってね。
大事なのは、「事柄の性質に合っているか」ということ。 「同じ条件の人たちは同じに扱う。けれど、条件や状況が違う人たちの間では、その違いに合わせた扱いをしてもいいんだ。ただし、その区別には『ちゃんとした理由(合理的根拠:ごうりてきこんきょ)』が必要だよ」と判断したんだ。
つまり、理由もなく「あいつが嫌いだから」と分けるのはダメ(恣意的な差別)だけど、仕事の内容や状況に合わせてルールを変えるのは、「合理的な区別」として認められる、ということになったんだね。
【判決】理由のある「区別」は、憲法違反ではない!
最高裁判所大法廷(昭和39年5月27日)は、次のような答えを出しました。
1. 「平等」は絶対的なものではない! 憲法14条1項は、すべての国民を絶対的に等しく扱うことを求めているのではなく、同一の事情や条件の下で等しく扱うことを求めている(相対的平等)と判断されました。
2. 合理的な理由があれば「区別」してOK! 事柄の性質に応じて、合理的だと認められる理由(合理的根拠)に基づいた差別的な取り扱い(区別)をすることは、憲法14条1項に違反しないとはっきり認められました。
【判決の言葉】
最高裁判所の判決(昭和39年5月27日)より
「憲法14条1項……は、……事柄の性質に即応して合理的と認められる差別的取扱をすることを妨げるものではない。」
【追記】判決の後、日本はどう変わったの?
この判決は、その後の日本のあらゆる「平等」をめぐる議論の絶対的な基準になったよ。
– 「理由のある区別」が法律の世界で認められるようになった! 例えば、「お金をたくさん稼いでいる人は税金を多めに払う(累進課税)」とか、「体の不自由な人のための特別な手当を出す」といったルールも、この判決の考え方(合理的な理由がある区別)があるからこそ、不平等と言われずに社会で認められているんだ。
– 「恣意的な差別」をチェックする力が強まった! 「合理的な理由があるか?」という厳しいチェックがされるようになったおかげで、国や自治体が勝手な思い込みや、好き嫌いでルールを作ることを防げるようになったんだよ。
– 様々な裁判の「教科書」になった! その後、「女性だけ定年が早いのはおかしい(日産自動車事件)」とか「非嫡出子の相続分が少ないのはおかしい」といった、より複雑な平等の問題が起きたときも、常にこの昭和39年の判決が立ち返るべき「基本」として参照されているんだ。
まとめ
– 憲法がいう「平等」とは、全員を全く同じにすること(絶対的平等)ではない
– 「相対的平等」といって、状況の違いに合わせた「合理的な区別」は認められる
– 区別をするには、「事柄の性質に合ったちゃんとした理由」が必要なんだね!
「みんな違って、みんないい。でも、分けるときはちゃんと理由を説明してね」。そんな、今の日本のフェアなルールの根っこを作った歴史的な裁判だったんだよ。
条文補足:日本国憲法第十四条
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。華族その他の貴族の制度は、これを認めない。栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。