行政・法律の疑問 読了 4分

「特別な区」は「普通の市町村」じゃないの?っていう判例【渋谷区長選任贈収賄事件】

★ 判例データ

事件名:贈収賄被告事件(東京都渋谷区長選任にからむ贈収賄事件上告審判決)
裁判所:最高裁判所
判決日:昭和38年3月27日

関係法令:
・憲法93条2項

論点:
・特別区
・地方公共団体
・二元代表制

結論:
・当時の東京都特別区は、自主立法権・自主行政権・自主財政権等の地方自治の基本的権能を十分に付与されておらず、憲法93条2項にいう「地方公共団体」にはあたらないため、区長の選任制(任命制)は憲法違反ではない

こんにちは! 今日は、東京の「区(特別区)」にお住まいの人には特に関係がある、昔の大きな裁判のお話をするよ。

「東京の23区は、普通の市や町と同じ『地方公共団体(じほうこうきょうだんたい)』なのかな?」というギモンに、昔の最高裁判所が驚きの答えを出した事件なんだ。

【ストーリー】「区長を選べないのはおかしい!」 vs 「区は特別なんです」

犯人と疑われているAさん

私は、渋谷区の区長さんを決める時、自分に有利になるようにお金を渡してしまいました(贈収賄)。でも、ちょっと待ってください! そもそも、今の区長の決め方が憲法違反(けんぽういはん)なんです!
国の検察官

何を言っているんですか! 賄賂(わいろ)を渡してリーダーを決めようとしたのは立派な犯罪ですよ。
Aさん

憲法93条2項には「地方公共団体のリーダーは、住民が直接選挙で選ばなきゃいけない」と書いてあります。それなのに、今のルール(当時の地方自治法)では、区長は選挙じゃなくて「都知事の同意を得て、区議会が決める」ことになっています。選挙をしない「区」なんて憲法違反だ! 憲法違反のルールで決まる区長のための賄賂なんて、罪にならないはずだ!
国の検察官

区は、東京都という大きな組織の一部であって、普通の市や町とは違うんです。だから選挙をしなくても憲法違反にはなりません!

【解説】裁判所でのバトル:登場!「魔法の条件(地方公共団体の要件)」

今回のバトルで、最高裁判所は「地方公共団体」という言葉に、とっても厳しい「魔法の条件」をつけたんだ。

裁判所はこう考えたんだ。「憲法が守っている『地方公共団体』といえるためには、ただ名前がそうであるだけじゃダメなんだ。次の3つの『盾(たて)』をしっかり持っていなきゃいけない」って。

1. 自分たちのルールを自分で決める力(自主立法権:じしゅりっぽうけん)
2. 自分たちの仕事を自分で進める力(自主行政権:じしゅぎょうせいけん)
3. 自分たちのお金を自分で管理する力(自主財政権:じしゅざいせいけん)

裁判所は、当時の東京の区を調べてみた。すると、「区は東京都の下請けのような仕事が多くて、自分の力で自由にできることが少ない。これじゃあ、憲法がいう『地方公共団体』とは呼べないな」という判断(クッション)を下したんだ。

だから、選挙をしないで区長を決めても、それは憲法違反ではない、という結論になったんだよ。

【判決】当時の特別区は、憲法上の「地方公共団体」ではなかった!

最高裁判所(昭和38年3月27日)は、次のような答えを出しました。

1. 特別区は憲法93条2項の団体にあたらない! 当時の特別区は、十分な自治権をもっていなかったため、憲法が選挙を義務づけている「地方公共団体」にはあたらないとされました。
2. 区長の選任制(任命制)は「合憲」! 住民が直接選ばない仕組みであっても、憲法違反ではないと判断されました。

【判決の言葉】

補足
最高裁判所の判決(昭和38年3月27日)より
「憲法九三条二項にいう『地方公共団体』……といいうるためには、……相当程度の自主立法権、自主行政権、自主財政権等地方自治の基本的權能を附与された地域団体であることを必要とする(のであって、当時の東京都特別区はこれにあたらない)。」

【追記】判決の後、日本はどう変わったの?

この判決が出た後、日本中で「同じ都民・市民なのに、区に住んでいる人だけがリーダーを選べないのは不公平だ!」という大きな不満の声が上がったんだ。

1974年にルールが変わった! みんなの「自分たちで選びたい!」という熱意が届いて、地方自治法という法律が改正されました。そしてついに、特別区でも区長を住民の選挙で直接選ぶ「公選制(こうせんせい)」が復活したんだよ。
区がどんどん「市」に近づいていった! その後も何度もルールが改正されて、今では区も「自分の仕事」や「自分のお金」をたくさん持てるようになった。今では、特別区は法律の上でも「基礎的な地方公共団体」として、普通の市とほとんど変わらない力をもっているんだ。
私たちの「一票」の重みが守られた! 最初は「区は特別だから選挙はいらない」と言われていたけれど、やっぱり住民の代表は住民が選ぶべきだ、という今の日本の民主主義の形が、この事件をきっかけに作り上げられていったんだね。

まとめ

まとめ

– 昔の最高裁は、東京の区は力が弱いから「憲法上の地方公共団体ではない」と言った
– そのため、昔は区長を選挙で選んでいなかった
– けれど、住民の不満や時代の変化によって、今は選挙で選べるようになり、普通の市と同じくらい大切にされるようになったんだね!

東京の23区が、今のように自分たちのリーダーを選べるのは、歴史の中でたくさんの議論があったからなんだね!

補足
条文補足:日本国憲法第93条
第1項:地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
第2項:地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。
この判例、ほかの時代の判例ともつながっています
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