行政・法律の疑問 読了 4分

国の大事な守り方は、よっぽどおかしな時だけチェックするよっていう判例【砂川事件】

★ 判例データ

事件名:日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法違反被告事件(砂川事件上告審判決)
裁判所:最高裁判所
判決日:昭和34年12月16日

関係法令:
・憲法9条
・安全保障条約
・刑事特別法

論点:
・統治行為論
・高度の政治性
・司法審査権の範囲

結論:
・安全保障条約は高度の政治性を有し、一見極めて明白に違憲無効と認められない限り裁判所の司法審査権の範囲外

こんにちは! 今日は、日本の「守り方」という、とっても大きなテーマについての裁判を紹介するね。 「外国の軍隊が日本にいるのは憲法違反じゃないの?」という、国を揺るがすようなギモンに、最高裁判所が歴史的な答えを出した事件なんだ。

【ストーリー】「基地に入るのは自由だ!」 vs 「国の守り方のルールだ!」

反対運動をしているAさん

アメリカ軍の基地を広げるなんて反対です! そもそも、日本の憲法9条には「戦力(いくさの力)」をもっちゃいけないって書いてあります。アメリカ軍が日本にいることを認める「安全保障条約(あんぜんほしょうじょうやく)」は、憲法違反です! だから、基地に勝手に入っても、罪にはならないはずだ!
国の検察官

何を言っているんですか! 基地の中に勝手に入るのは、法律(刑事特別法)で禁止されています。安全保障条約は、日本が平和に暮らすために、アメリカと約束した大事なルールです。勝手な理屈で壊してはいけません。
Aさん

裁判所のみなさん! 憲法は国の最高のルールですよね? 憲法違反の条約(約束)に基づいた法律で、私たちを罰(ばっ)するのはおかしいです。この条約が憲法違反かどうか、ハッキリさせてください!

【解説】裁判所でのバトル:裁判所でも「手が出せない箱」

裁判所

二人とも、落ち着いて。今回は、「裁判所がどこまで政治のことに口を出していいのか」という、とっても難しい問題を考えよう。

普通、裁判所は法律や条例が憲法に違反していないかチェックする「憲法の番人(ばんにん)」の役割をもっているんだ。 でも、今回の「安全保障条約」のように、国がどうやって生き残るかという「高度の政治性(こうどのせいじせい)」をもった大事な約束については、ちょっと話が別なんだよ。

ここで登場するのが、「魔法の言葉(統治行為論:とうちこういろん)」という考え方だよ。 裁判所はこう考えたんだ。「国全体をどう守るかという超(ちょう)ハイレベルな政治の決断は、裁判官が決めるよりも、国民が選んだ国会や政府が決めて、最終的には国民が選挙で判断するのが民主主義の形だよね」って。

だから、こういう超ハイレベルな政治の話については、裁判所は「特別なフィルター(一見極めて明白に違憲無効:いっけんきわめてめいはくにいけんむこう)」を使うことにしたんだ。 つまり、「パッと見て、誰がどう見ても憲法違反だ!」とすぐわかるほどひどい時だけは口を出すけれど、そうじゃない限りは「裁判所は判断しません」という「クッション」を置いたんだね。

今回の条約は、「一見してすぐに憲法違反」とは言えないので、裁判所は「これ以上は口を出さないよ」と決めたんだ。

【判決】条約のことは、よっぽどひどくない限り裁判所は口を出さない!

最高裁判所(昭和34年12月16日)は、次のような答えを出しました。

1. 外国の軍隊が日本にいることは、憲法9条が禁止する「戦力」にはあたらない! 憲法9条は日本がもつパワーを制限しているけれど、外国の軍隊を日本におくこと自体は禁止されていない、と判断されました。
2. 高度な政治判断については、裁判所は審査を控える! 安全保障条約のように、国の存立(そんりつ)にかかわるような大事な約束は、明らかに憲法違反である場合を除いて、裁判所の審査の範囲外(はんいがい)だと決まったんだよ。

【判決の言葉】

補足
最高裁判所の判決(昭和34年12月16日)より
「……本件安全保障条約は、……主権国としてのわが国の存立の基礎に極めて重大な関係をもつ高度の政治性を有するものというべきであつて、……一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のものである。」

【追記】判決の後、日本はどう変わったの?

この判決は、その後の日本の政治と裁判のあり方を決定づけるものになりました。

「日米安保体制(にちべいあんぽたいせい)」が守られた! この判決によって、アメリカ軍が日本にいる仕組みが法律的に「壊(こわ)されない」ことが確定的になりました。今の日本の守り方のベースが、この時しっかり固まったといえるね。
「統治行為論」が日本のルールになった! 「高度な政治の問題には裁判所は口を出さない」というルール(統治行為論)が、その後のいろいろな事件でも使われるようになったんだ。例えば、衆議院の解散(かいさん)が有効かどうかといった問題も、同じように政治に任せられるようになったよ。
憲法論争(けんぽうろんそう)の舞台(ぶたい)は政治の場へ! 裁判所が「判断しない」と決めたことで、自衛隊やアメリカ軍、そして憲法9条をどう考えるかという議論は、裁判所ではなく、主に「国会」や「選挙」といった、みんなの話し合いの場で解決していくべきテーマになったんだ。

まとめ

まとめ

– 憲法9条は、「外国の軍隊」が日本にいることまで禁止しているわけではない
– 国の将来を決めるような超大事な政治の決断には、裁判所は安易に口出しをしない
– その代わり、そうした大事なことは、みんなが選んだ代表(政治)が決めて、国民が選挙でチェックするのが日本の民主主義のルールなんだね!

とっても大きな問題だけれど、裁判所が「ここは政治の責任で決めるべきところだ」と境界線(きょうかいせん)を引いた、とても大事な裁判だったんだね。

この判例、ほかの時代の判例ともつながっています
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