行政・法律の疑問 読了 4分

「危ないかもしれない」だけじゃダメ!市民会館を貸さないための「厳しいハードル」の判例【泉佐野市民会館事件】

★ 判例データ

事件名:損害賠償請求事件(泉佐野市民会館事件)
裁判所:最高裁判所
判決日:平成7年3月7日

関係法令:
・日本国憲法21条(集会の自由)
・地方自治法244条(公の施設の利用)

論点:
・集会の自由と公の施設の利用拒否
・「公の秩序をみだすおそれ」の解釈
・事前抑制の可否・明らかな差し迫った危険

結論:
・利用を拒否できるのは「明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見される場合」に限られる

こんにちは! 今日は、みんなが使う「市民会館」や「公民館」などの「公の施設」をめぐるルールについてのお話だよ。

「ここで集まりを開きたい!」という人と、「トラブルが起きそうだから貸したくない!」という役所が裁判所でバトルしたんだ。自由な活動と、みんなの安全のバランスをどう取るべきか、最高裁判所の答えを見てみよう。

【ストーリー】「みんなで集まりたい!」 vs 「ケンカが起きるから貸せません」

集会を開きたいグループA

私たちは、自分たちの意見を話し合うために、市民会館を使わせてもらいたいです。市が運営している施設なんだから、住民である私たちに使う権利があるはずです!
市の担当者

うーん、困りましたね。あなたたちのグループは、他のグループからすごく反対されています。もしここで集会を開いたら、反対派の人が押し寄せてきて、会館の中で大ゲンカが始まってしまうかもしれません。
グループA

それは私たちのせいじゃありません! 反対する人が暴れるかもしれないからといって、私たちの「集会の自由(憲法21条)」を奪うなんてひどすぎます!
市の担当者

市のルール(条例)には、「公の秩序をみだすおそれがある場合」は貸さないことができる、と書いてあります。会館がボロボロになったり、周りの人がケガをしたりするのを防ぐのが私たちの仕事です。だから、今回はお断りします!

【解説】裁判所でのバトル:登場!「明らかな差し迫った危険」という物差し

今回のバトルのポイントは、条例にある「公の秩序をみだすおそれ」という言葉を、どれくらい厳しくチェックするかということだったんだ。

裁判所は、まず「集会の自由」は民主主義においてものすごく大切な権利だ、ということを強調したよ。そして、公の施設は住民が利用するのが原則であり、管理者が勝手に拒否することはできないと考えたんだ。

そこで裁判所は、貸さないための「厳しいハードル」を置くことにしたよ。

裁判所はこう言ったんだ。「単に『何かトラブルが起きそうだな(蓋然性:がいぜんせい)』という想像だけではダメなんだ。もしその集会を開かせたら、人の命や体が傷つけられたり、建物が壊されたりするような、『明らかな差し迫った危険』が具体的に予想される場合に限って、特別に断ることができるんだよ」ってね。

つまり、「もしかしたら危ないかも?」というくらいの「薄い心配」では、市民の自由を止めることはできない、というルールを決めたんだ。

【判決】「明らかな差し迫った危険」がない限り、貸さなきゃダメ!

最高裁判所(平成7年3月7日)は、次のような答えを出しました。

1. 「公の秩序をみだす」を狭く考える! この言葉は、集会の自由を保障することよりも、人の生命や身体、財産が守られることの必要性が、明らかに勝っている場合だけを指します。
2. 具体的な予見が必要! 単に騒ぎが起きる可能性があるというだけでは足りず、客観的な事実からみて「明らかな差し迫った危険の発生」が具体的に予想されることが必要だと判断されました。

【判決の言葉】

補足
最高裁判所の判決(平成7年3月7日)より
「集会の自由を保障することの重要性よりも、本件会館で集会が開かれることによって、人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険を回避し、防止することの必要性が優越する場合をいうものと解すべきであり、その危険性の程度としては、……明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要であると解するのが相当である。」

【追記】判決の後、日本はどう変わったの?

この判決は、全国の自治体が「公の施設」を管理するときの、一番のガイドラインになったよ。

「とりあえず断る」が通用しなくなった! 以前は、反対運動が激しい団体の利用を「トラブル防止」という理由で安易に断ることもあったけれど、この判決の後は、役所はしっかりとした根拠を示さない限り断ることができなくなったんだ。
警察との協力が大切になった! 「危ないから貸さない」ではなく、「安全に集会ができるように警察に警備をお願いするなどして、最大限の努力をすること」が役所に求められるようになったんだ。
住民の「集まる自由」が強く守られるようになった! どんなに反対意見があるグループでも、ルールを守って集まる限り、その場所を確保する権利がある。このことが日本中のルールとして定着したんだよ。

まとめ

まとめ

– 憲法は、みんなが自由に集まって意見を言う「集会の自由」を最大限に大切にしている
– 市役所が市民会館の利用を断れるのは、「命や体への具体的な危険」が明らかにあるときだけ
– 「反対派が怖いから」という理由だけでは、自由な活動を止める理由にはならないんだね!

「みんなが納得しないこと」を話す自由も、同じように大切にする。そんな民主主義の根本を教えてくれる裁判だったんだね。

補足
条文補足:地方自治法第二百四十四条(公の施設)
普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。普通地方公共団体(次条第三項に規定する指定管理者を含む。次項において同じ。)は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない。
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