事件名:地位確認等請求事件(入会権と男女平等)
裁判所:最高裁判所
判決日:平成18年3月17日
関係法令:
・民法90条(公序良俗)
・日本国憲法14条(平等原則)
論点:
・入会権
・男女平等
・公序良俗
・間接適用
結論:
・男子孫のみに入会権を認め女子孫を排除する慣習は、男女の本質的平等という憲法の理念に照らし公序良俗に反して無効
こんにちは! 今日は、日本の古い村々などに残っていた「あるしきたり」が、裁判所によって「それはダメだよ!」と言われたお話を紹介するね。 「昔からの伝統だから」という言葉と、「男女は平等であるべきだ」という今の考え方がぶつかったとき、裁判所がどう判断したのか見てみよう。
【ストーリー】「私も村のメンバーです!」 vs 「女の人は入れない決まりだ」
私はこの村で生まれ育ち、今もここで生活しています。村の共有地(山など)を使う権利である「入会権(いりあいけん)」をもつメンバーとして、認めてください!
いや、それはできないよ。私たちのグループには、江戸時代から続く「掟(おきて)」があるんだ。この権利は、家を継ぐ「男の子の孫(男子孫)」だけに受け継がれるものと決まっている。女の人である君には、その資格はないんだよ。
そんなのひどいです! 今の日本は、男の人も女の人も平等なはずです。ただ「女であること」だけを理由に、村の大事な権利から外されるなんて納得がいきません!
これは国が決めたルールじゃなくて、私たちのプライベートなグループの「伝統」なんだ。自分たちのルールをどう決めるかは私たちの自由のはずだ!
【解説】裁判所でのバトル:登場!「魔法のクッション(公序良俗)」
今回のバトルのポイントは、憲法が大切にしている「男女の平等」の考え方が、村のしきたりという「プライベートな世界」にどこまで届くのか、ということだよ。
ここでも、以前紹介した「間接適用説(かんせつてきようせつ)」という考え方が使われたんだ。 憲法14条の「平等」というパワーは、民間人どうしのルールに直接ぶつかることはできないけれど、民法90条にある「公序良俗(こうじょりょうぞく:社会の良識)」という「魔法のクッション」を通して、その精神を伝えることができるんだ。
裁判所はこう考えたんだ。「確かにグループの自由はあるけれど、今の時代、男女は本質的に平等であるという考え方は、日本の社会の根本にあるとっても大事なルール(良識)だ。それなのに、単に『女性だから』という理由だけで、一律にメンバーから外すようなしきたりは、このクッションを通り抜けることができない。つまり、社会の良識に反するから無効だ!」ってね。
【判決】女性を差別するしきたりは「無効」!
最高裁判所(平成18年3月17日)は、次のような答えを出しました。
1. 性別だけを理由にした差別は許されない! 専ら女子であることのみを理由として、メンバーの資格を男子の孫に限定する慣習は、男女の本質的平等を定める憲法の理念に反し、社会の良識(公序良俗)に違反すると判断されました。
2. そのルール(慣習)は「無効」! 民法90条の規定によって、その差別的なルールは法的な効力をもたないと決まったんだ。
【判決の言葉】
最高裁判所の判決(平成18年3月17日)より
「(本件の慣習は……)男女の本質的平等を定める日本国憲法の基本的理念に照らし、公序良俗に反するものとして無効である。」
【追記】判決の後、日本はどう変わったの?
この判決は、日本中の「伝統」や「しきたり」を大切にしている地域に、とても大きな衝撃と変化を与えたよ。
– 「伝統」よりも「人権」が優先されることがハッキリした! 「昔からそうだったから」という理由だけでは、誰かを不当に差別することはできないという、今の日本のルールが全国の隅々(すみずみ)まで示されたんだ。
– 各地の「村のルール」が見直された! この判決をきっかけに、全国にある地域団体や自治会などで、女性も男性と同じように権利をもち、責任を分担できるようにルールを書き換える動きが広がったよ。
– 女性の社会参加がさらに進んだ! 地域の意思決定の場に女性が加わることは、もはや「お願い」ではなく、法律の上でも「当たり前」のこととして守られるようになったんだ。
まとめ
– 憲法がいう「男女の平等」は、「民法のクッション(90条)」を通して地域のしきたりにも影響を与える
– 「女性だから」という理由だけで権利を認めない慣習は、社会の良識に反して無効になる
– これによって、古い伝統に縛られず、誰もが平等に地域を支えるパートナーになれる社会への一歩が進んだんだね!
「伝統を大切にすること」と「人を大切にすること」がぶつかったとき、今の日本では「人を大切にする(平等)」という答えが選ばれることを、裁判所が力強く教えてくれた事件だったんだね。
条文補足:民法第九十条(公序良俗)
公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。