行政・法律の疑問 読了 4分

郵便をなくしても「責任を負わない」というルールは憲法違反だよっていう判例【郵便法違憲判決】

★ 判例データ

事件名:損害賠償請求事件(郵便法違憲判決)
裁判所:最高裁判所
判決日:平成14年9月11日

関係法令:
・憲法17条
・郵便法

論点:
・国家賠償
・一部違憲
・損害賠償

結論:
・書留郵便について故意または重過失がある場合、特別送達について軽過失がある場合に国の損害賠償責任を免除・制限する郵便法の規定は、憲法17条に違反して無効

こんにちは! 今日は、みんなの生活にも身近な「郵便(ゆうびん)」をめぐる、とっても大切なお話を紹介するよ。

「国が郵便物をなくしたり壊したりしても、お金は返さなくていい」という法律の決まりに対して、最高裁判所が「それはやりすぎだ!」と怒った事件なんだ。

【ストーリー】「大事な書類をなくされた!」 vs 「法律で決まっています」

住民のAさん

大変です! 裁判所から届くはずの「特別送達(とくべつそうたつ)」という、とっても大事な書類が届きません。調べてみたら、郵便局の人が間違えて別の人に渡してしまったみたいなんです。おかげで私は大損をしてしまいました。国(郵便局)は責任をとって、損害を賠償(ばいしょう)してください!
国の担当者

それはお気の毒に。でも、郵便法という法律にはこう書いてあります。「郵便物をなくしたり壊したりしても、国が責任を負うのはごく一部だけ。特別送達の場合は、よっぽどひどい不注意(重過失:じゅうかしつ)がない限り、国はお金を支払いません」とね。今回はそこまでのミスではないので、お金は1円も出せません。
住民のAさん

そんなのおかしいです! 憲法17条には、「公務員がミスをして損害を与えたら、国が賠償しなければならない」と書いてあるはずです。お金を払って「書留(かきとめ)」や「特別送達」などの特別なサービスを使っているのに、国がミスをしても責任をとらないなんて、あまりにも不公平です!
国の担当者

郵便は安く、大量に、全国へ届けなければならない特別な仕事です。いちいち損害を全額払っていたら、郵便の仕組みが壊れてしまいます。だから法律で「クッション(免責:めんせき)」が置いてあるんですよ。

【解説】裁判所でのバトル:憲法17条と「クッション」の限界

今回のバトルで、裁判所は「国家賠償(こっかばいしょう)請求権」という、憲法が守っている大事な権利と、郵便法のルールのバランスをチェックしたよ。

裁判所はこう考えたんだ。「確かに、郵便は全国に安く届けるための特別な仕事だから、多少の制限(クッション)は必要かもしれない。けれど、そのクッションが厚すぎて、憲法の精神を無視するほどになってはいけない」って。

具体的には、次の2つのポイントが「やりすぎ(憲法違反)」だと判断されたんだ。

1. 書留郵便の場合:郵便局の人が、わざと(故意)や、とんでもない不注意(重過失)で郵便物をなくしたのに、国が責任を負わないというのは、合理的な理由がなさすぎる!
2. 特別送達の場合:これは裁判などの特に大事な書類なのに、ちょっとした不注意(軽過失)でも国が責任を逃れるというのは、憲法が認める「賠償してもらう権利」を奪いすぎている!

つまり、国が自分勝手に「責任を負わない」と決めた「魔法の盾(免責規定)」は、あまりに不公平な部分については憲法違反で無効だと言われたんだね。

【判決】郵便法の免責ルールは、一部「憲法違反」!

最高裁判所(平成14年9月11日)は、次のような答えを出しました。

1. 重大なミスの責任を逃れるのは、憲法違反! 書留郵便について、故意や重過失(重大なミス)があっても賠償を制限するルールは、憲法17条に違反して無効だと判断されました。
2. 大事な書類(特別送達)についても、責任を負うべき! 特別送達について、軽過失(ちょっとしたミス)でも賠償しないとするルールも、憲法違反だとされました。

【判決の言葉】

補足
最高裁判所の判決(平成14年9月11日)より
「(国家賠償の免責・制限が認められるかは)……当該規定の目的の正当性並びにその目的達成の手段として免責又は責任制限を認めることの合理性および必要性を総合的に考慮して判断すべきである。……(中略)……書留郵便物について、郵便業務従事者の故意又は重大な過失によって損害が生じた場合に、……国の損害賠償責任を免除し、又は制限している部分は、憲法17条に反する。」

【追記】判決の後、日本はどう変わったの?

この判決は、日本の「国の責任」の考え方を大きく変えるきっかけになったよ。

郵便法のルールが作り直された! 憲法違反だと言われた部分は、その後すぐに法律が改正されて、郵便局が大きなミスをしたときは、しっかり損害を賠償する仕組みに変わったんだ。
「国だから責任をとらなくていい」は通用しなくなった! この判決は、国が提供するサービスであっても、民間と同じように、大きなミスをしたら責任をとるのが当たり前だ、という今の日本の考え方をより強く確かなものにしたんだ。
「一部違憲(いちぶいけん)」という判決の仕方が注目された! 法律の全部をダメにするのではなく、「この部分だけが憲法違反だ」とはっきり指摘することで、世の中をスムーズに変えていく裁判所のやり方の代表例として、今でも語り継がれているよ。

まとめ

まとめ

– 憲法17条は、国や役所がミスをしたら損害を賠償してもらう権利を守っている
– 郵便をなくしても「国は責任を負わない」というルールは、やりすぎた部分は憲法違反とされた
– これによって、「何かあったら国がしっかり責任をとる社会」が一歩進んだんだね!

みんなが送る大切な郵便も、今は憲法のルールによって、より大切に扱われるようになっているんだよ!

補足
条文補足:日本国憲法第17条
何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。
補足
条文補足:郵便法(当時)第68条・第73条
第68条1項(要旨):郵政事業庁長官(当時)は、郵便法またはこれに基づく総務省令の規定に従って差し出された郵便物が一定の場合に限り、その損害を賠償する(書留郵便物等の損害賠償の範囲・限度を定める規定)。
第73条(要旨):損害賠償の請求をすることができる者は、当該郵便物の差出人またはその承諾を得た受取人とする(特別送達郵便物について損害賠償責任を免除・制限する規定)。
※本判決により、書留郵便物について故意・重過失がある場合、特別送達郵便物について故意・過失がある場合に国の損害賠償責任を免除・制限している部分は、憲法17条に違反するとされた。
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