この人物が政治をしていた時期のイベントについて説明します。
- バラバラだった中東を初めてひとつにまとめた「マッチョな王様」の正体
- 数万枚の「重たい本」をコレクションした、世界最古の図書館の秘密
- あまりに厳しすぎて、王様が死んだ途端に国がバラバラになった理由
今から約2600年前、メソポタミアからエジプトまでを支配したアッシリア帝国の最後の名君がアッシュル=バニパルです。数万枚もの「粘土板」という重たい本を集めたインテリマッチョな王様。オリエントを初めて全部まとめちゃった「世界一強くて世界一勉強家な王様」の物語が始まります。
登場する地方や国について
どのくらいの時代?
メソポタミア文明の時代(紀元前3000年頃~紀元前539年)
1. エジプトまでボコボコにして、オリエントを初めて全部まとめるぞ!
アッシュル=バニパルは、アッシリア帝国の圧倒的な武力を背景に、エジプトまで攻め込んで征服に成功しました。これによって、メソポタミアやエジプト、シリア、パレスチナを全部まとめて支配する、史上初の「オリエントの統一」を完成させたのです。
これは例えば、近所の公園だけでなく、町中の遊び場をすべて制覇して、初めてひとつの大きな「遊び場連合」を作ったようなものです。現代で言えば、地域ごとの小さな会社が合併を繰り返し、業界で初めて全国シェア100%を達成した「巨大企業」のような感じですね。
アッシュル=バニパルは強力な軍隊で中東全域を圧倒しました。なかなか過激な拡大路線ではありますが、彼はさらにこう考えました。

エジプトやメソポタミアなど、ヨーロッパから見て「日の昇る場所」を指す言葉です。アッシュル=バニパル率いるアッシリア帝国が、紀元前7世紀に史上初めてこの広大なエリアを統一しました。
2. 筋肉だけじゃねえ! 数万枚の「重たい本」で世界最高の知識を集めるぞ
統一を成し遂げた上で、アッシュル=バニパルはこう考えました。彼は都のニネヴェに、世界最古と言われる大規模な図書館を建設させました。そこには昔の人が文字を書いて焼いた「重たいノート」である粘土板が数万枚も集められ、文学や歴史、科学の知識が整理されていたのです。
これは例えば、スポーツ万能な人気者が、自宅を町一番の巨大な書庫に改造して、古今東西のマンガや専門書をすべて完璧にファイリングしているようなものです。現代で言えば、巨大企業の社長が、世界中のデータを集めて自分だけのプライベートな「Google検索システム」を作っちゃったような感じですね。
アッシュル=バニパルは、自らも文字が読めるほど勉強熱心だったと言われています。なかなかドン引きな勉強量ですが、彼はこう言いました。

紙が普及する前、メソポタミアで楔形文字を記録するために使われた板です。アッシュル=バニパルの図書館からは、世界最古の文学とされる「ギルガメシュ叙事詩」などが発見され、歴史の貴重な資料となりました。
3. 逆らう奴は絶対に許さねえ! 恐怖で押さえつける「剛」の政治だ
知識を愛する一方で、アッシュル=バニパルの統治は恐ろしいほど残酷でした。逆らう民族は徹底的に破壊し、住民を別の場所へ無理やり移住させるなどの抑圧策をとりました。これは筋肉と武器だけで言うことを聞かせるゴリ押し政治、すなわち「剛の統治」と呼ばれるものです。
これは例えば、みんなを遊びに誘うときに、ひとりでも断る奴がいたらその子の家を壊しに行く、というくらい極端に怖いリーダーのようなものです。現代で言えば、仕事のミスを1回でもしたら即刻クビ、しかも業界全体から干すというような、恐怖で社員を縛り付ける「ブラック企業の社長」みたいな感じですね。
力で押さえつけることでオリエント初の統一を保っていたアッシリア帝国ですが、この理想を掲げた上で、アッシュル=バニパルはこう考えました。
アッシリアの壁画には、王がライオンを狩る勇猛な姿とともに、捕虜に残酷な仕打ちをする場面が描かれています。これは周囲の民族に対し、「俺たちに逆らうとこうなるぞ」という強烈なプロパガンダ(宣伝)の効果を狙ったものと考えられます。
4. 王様が死んだら我慢の限界が爆発! 帝国があっという間に4つに分かれた
アッシュル=バニパルの睨みがきかなくなると、ついにその時がやってきました。紀元前612年、都のニネヴェが新バビロニアとメディアの連合軍によって攻め落とされ、「アッシリア帝国滅亡」を迎えます。あまりに残酷な統治に我慢の限界がきていた各地の民族が、王の死後に一斉に反乱を起こしたのです。
これは例えば、めちゃくちゃ怖い先生が退職した途端に、それまで静かだった教室が一気に「学級崩壊」して、バラバラに遊び出すような状況です。現代で言えば、ワンマン社長が引退した途端、溜まっていた不満が爆発して、主要な部署がみんな独立して4つの別の会社に分かれちゃったような感じですね。
アッシリア帝国が滅びたあと、オリエントはエジプト、リディア、新バビロニア、メディアの4つにパカッと分かれてしまいました。なかなか皮肉な結末ではありますが、彼が図書館で守り抜いた知識は、後に文明の宝となりました。

紀元前612年、新バビロニアとメディアの連合軍によって都ニネヴェが陥落し、アッシリア帝国が滅びた出来事です。この後、オリエントは再び4つの国が並び立つ分裂時代に戻りました。
総括
結果:アッシュル=バニパルは、エジプトまでを支配下に置くことで、史上初めて「オリエントの統一」という偉業を成し遂げました。当初の狙いだった「世界一強く、かつ世界一の知識を持つ王」という目標は、広大な領土と数万枚の粘土板を誇る巨大図書館という形で見事に実現されました。
一方:力と恐怖で人々を押さえつける「剛の統治」は、各地に凄まじい不満を溜め込むことになりました。王の死後、その「握力」が低下すると同時に帝国は崩壊し、皮肉にも彼が作り上げたオリエントの統一は、わずか数十年で4つの国へとバラバラに分裂してしまったのです。しかし、彼が建設した図書館から発見された多くの記録は、数千年後の私たちに古代の知恵を伝えてくれる歴史的な遺産となりました。
- オリエント初統一:紀元前7世紀、アッシュル=バニパル王のもと、アッシリアがメソポタミアからエジプトまでを初めて1つの国にまとめた。
- 世界最古の図書館:都ニネヴェに数万枚の粘土板を集めた図書館を建設し、古代の文学や科学の知識を守り伝えた。
- 残酷な恐怖政治:逆らう者を徹底的に虐殺する「剛の統治」を行ったため、周囲の民族から激しく恨まれていた。
- 帝国の滅亡と分裂:紀元前612年に帝国が滅亡すると、オリエントはエジプト・リディア・新バビロニア・メディアの4国に分裂した。
理解度確認テスト
[muda-qa]
[muda-q id=”q1″ question=”紀元前7世紀にアッシュル=バニパル王らによって成し遂げられた、中東全域をひとつにする歴史上初めての出来事を何といいますか?”]
[muda-a id=”q1″]オリエントの統一[/muda-a]
[muda-q id=”q2″ question=”アッシュル=バニパルが都ニネヴェに建設し、数万枚の粘土板を収集した、歴史上最古と言われる文化施設は何ですか?”]
[muda-a id=”q2″]図書館[/muda-a]
[muda-q id=”q3″ question=”紀元前612年にアッシリア帝国が滅亡した後、オリエントはいくつの国に分裂しましたか?数字で答えてください。”]
[muda-a id=”q3″]4[/muda-a]
[/muda-qa]
厳しい恐怖政治でオリエントをまとめ上げ、同時に図書館で知恵を守ったアッシュル=バニパル。アッシリアが滅びた後の混乱した世界を、今度は「恐怖」ではなく「優しさ(寛容さ)」でまとめようとする、アケメネス朝ペルシアのダレイオス1世が登場することになります。
この出来事が今後どう評価されるかは、まだ分かりません。以上、【アッシリア帝国・アッシュル=バニパル】「あっ(アッ)し(シ)りが(リ)あ(ア)」っつい!世界初オリエント統一と秘密の図書館でした。
用語対応表
- オリエント → エジプトやメソポタミアを含めた「日の昇る場所」
- 粘土板 → 昔の人が文字を書いて焼いた「重たいノート」
- アッシュル=バニパルの図書館 → 世界最古の「本」の博物館
- 剛の統治 → 筋肉と武器だけで言うことを聞かせるゴリ押し政治