行政・法律の疑問 読了 5分

参議院の1票も、5倍以上違うのは「ダメな状態」!でも、やり直しはさせないよっていう判例【昭和63年参議院定数不均衡訴訟】

★ 判例データ

事件名:選挙無効請求上告事件
裁判所:最高裁判所大法廷
判決日:昭和63年10月21日

関係法令:
・公職選挙法(参議院議員定数配分規定)
・憲法14条(法の下の平等)

論点:
・参議院の1票の格差(最大5.85倍)
・参議院の独自性と裁量
・違憲状態の認定

結論:
・参議院の格差5.85倍は違憲状態だが選挙は有効

こんにちは!今日は、前回お話しした衆議院に続いて、もう一つの議会「参議院(さんぎいん)」の選挙についての、とても大切なお話です。 「1票の重さが違うのはおかしい!」というバトルの結果、裁判所がついに参議院についても「もう我慢の限界だ!」と怒った、歴史的な事件を見てみましょう。

【ストーリー】「参議院の1票も軽すぎる!」 vs 「都道府県が単位だから仕方ない」

都会に住む有権者のAさん

衆議院だけでなく、参議院の選挙もひどいです! 1986年(昭和61年)に行われた参議院選挙で、私の住む神奈川県と、人口が一番少ない県を比べたら、1票の価値に5.85倍もの差がありました。これは「法の下の平等」に違反しています!
国の担当者

Aさん、参議院は衆議院と違って「地域の代表」という性格が強いんです。だから、都道府県を単位にして議員さんを選ぶ仕組みにしている以上、人口の差が出るのはある程度仕方がないんですよ。
Aさん

いくら「地域の代表」だからといって、5倍以上の差を放っておくのはやりすぎです! そんな不公平なルールで行われた選挙は「無効(むこう)」にすべきです!
国の担当者

でも、参議院の議員さんは3年ごとに半分ずつ入れ替わる仕組みです。今さら選挙を無効にしたら、国会が止まって日本中が大混乱してしまいますよ!

【解説】裁判所でのバトル:登場!「イエローカード(違憲状態)」と「事情判決」

「二人とも落ち着いて。今回のバトルのポイントは、参議院独自のルールを認めるとしても、5倍以上の格差をそのままにしていいのか、ということなんだ」

裁判所は、この非常に難しいパズルを解くために、次のような「新しいシグナル」を出したよ。

1. 「違憲状態(いけんじょうたい)」というイエローカード: 裁判所はこう言ったんだ。「参議院が都道府県を単位にする仕組みなのは分かる。でも、5.85倍という格差は、もう『合理的(ごうりてき)な理由がある』とは言えないレベルだ。憲法違反といえるくらいダメな状態、つまり『違憲状態』だ!」ってね。

2. 「でも、やり直しはナシ(事情判決)」: 一方で、裁判所はこうも考えたんだ。「今すぐ選挙を無効にしてやり直すと、社会がめちゃくちゃになってしまう(事情判決)」。だから、「ダメな状態だけど、今回の選挙結果そのものは有効」として扱うことにしたんだよ。

これは、国会に対して「今回は見逃してあげるけど、早くルールを直しなさい!」という強力な宿題(是正の義務)を突きつけたということなんだ。

【判決】格差は「違憲状態」!でも、選挙結果はそのまま(有効)。

最高裁判所(昭和63年10月21日)は、次のような答えを出しました。

1. 「違憲状態」である! 当時の参議院の定数配分は、最大5.85倍の格差が生じており、憲法の平等原則に照らして、合理的な理由のない不平等な状態(違憲状態)であると判断されました。
2. 「事情判決」で選挙は有効! 選挙を無効にすることによる社会的な混乱を避けるため、一般的な法の基本原則に基づき、選挙自体を無効とはしませんでした。

【判決の言葉】

> 最高裁判所の判決(昭和63年10月21日)より 「選挙人の投票価値の不平等が……一般的に合理性を有するものとはとうてい考えられない程度に達しているときは、もはや国会の合理的裁量の限界を超えているものと推定されるべきである。……(しかし)行訴法31条1項には『一般的な法の基本原則に基づくものとして理解すべき要素も含まれている』として、選挙自体を違法としつつも、無効とはしませんでした。」

【追記】判決の後、日本はどう変わったの?

この判決は、参議院の「当たり前」を根本から揺るがす大きな一歩になったよ。

– 「都道府県の壁」が壊れ始めた! それまでは「県ごとに議員を選ぶのは絶対だ」と思われていたけれど、この裁判の後、裁判所は「都道府県を単位とする仕組みを維持しながら平等を守るのは、もう限界だ」とより厳しく言うようになったんだ。
– 「合区(ごうく)」という大改革へ! 「違憲状態」と言われ続けた結果、ついに2015年に法律が変わり、鳥取県と島根県、徳島県と高知県がそれぞれ1つの選挙区にまとめられる(合区)という、日本の歴史上初めての大きな改革が行われたんだ。
– 「2倍以内」が全ての基準に! この裁判をきっかけに、参議院でも1票の格差をできるだけ小さくする努力が義務となり、今では「2倍未満」を目指して選挙区を何度も見直すようになっているんだよ。

まとめ

– 参議院の選挙でも、1票の格差がひどすぎると「違憲状態」というレッドカード一歩手前の判断が出る。
– 社会の大混乱を防ぐため、「事情判決」というルールで選挙結果は守られる。
– この判決がプレッシャーとなり、今の日本は「県をまとめる(合区)」などの新しい工夫で、1票の平等を目指しているんだね!

みんなの1票がどれだけ平等に扱われるか。参議院の古いルールを変えてきた、とても勇気のある裁判だったんだよ。

補足
条文補足:日本国憲法第十四条
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。華族その他の貴族の制度は、これを認めない。栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
この判例、ほかの時代の判例ともつながっています
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