行政・法律の疑問 読了 4分

「淫行(いんこう)」って具体的に何? 曖昧な言葉で人を罰してはいけないよ!っていう判例【福岡県青少年保護育成条例事件】

★ 判例データ

事件名:福岡県青少年保護育成条例違反被告事件
裁判所:最高裁判所
判決日:昭和60年10月23日

関係法令:
・刑法
・罪刑法
・憲法
・青少年保護育成条例
・自治体法

論点:
・(記事本文参照)

結論:
・記事本文参照

「淫行(いんこう)」って具体的に何? 曖昧な言葉で人を罰してはいけないよ!っていう判例【福岡県青少年保護育成条例事件】

読者のみなさん、こんにちは! 今日は1985年(昭和60年)10月23日に最高裁判所(大法廷)が出した、「法律や条例の言葉が曖昧(あいまい)なままで、人を処罰してもいいの?」という、今の日本のルール作りにとって非常に大切なお話を紹介するよ。

条例の中に「淫行(いんこう)」という、分かったような分からないような言葉があるけれど、それが具体的に何を指すのか、そしてそれが憲法に違反しないのかが争われた大事件なんだ。

【ストーリー】「悪いことをしたんだから罰するぞ!」 vs 「ルールが曖昧すぎて分かりません!」

検察官(国側)

「被告人のAさん、あなたは18歳未満の青少年に対して『淫行(いんこう)』を行いましたね。これは福岡県の青少年保護育成条例違反です。青少年を守るための大切なルールを破ったのだから、罰を受けてもらいます!」
被告人のAさん

「確かに私はその子と性交渉を持ちましたが、お互いに合意の上でした。そもそも、条例にある『淫行』という言葉、具体的に何をしてはいけないのかがハッキリしません。こんな曖昧な言葉で『お前は犯罪者だ』と言われるのは、憲法違反じゃないですか?」
弁護士さん

「そうです! 憲法31条(罪刑法定主義)では、何が犯罪になるのかを、国民が前もってハッキリ分かるように書いておかなければならない(明確性の原則)と決まっています。『淫行』なんて人によって捉え方が違う言葉で処罰するのは、後出しジャンケンと同じで不公平です!」
検察官

「裁判官さん! 『淫行』という言葉は昔から使われているし、普通の大人なら何が悪いことか分かるはずです。青少年を不純な行為から守るために、この言葉は必要なんです!」

【解説】裁判所でのバトル:登場!「明確性の物差し」と「限定解釈の魔法」

今回のバトルのポイントは、「淫行」という言葉が、普通の人が見て「これを行ったら犯罪になるな」と予測できるほど具体的か、ということなんだ。

1. 「罪刑法定主義(ざいけいほうていしゅぎ)」の鉄則: 「何が犯罪か」は、あらかじめ文章でハッキリ決めておかなければならない。これが憲法の超重要なルールだよ。
2. 魔法の言葉「限定解釈(げんていかいしゃく)」: 裁判所はこう考えたよ。「確かに『淫行』という言葉だけだと広すぎるけれど、青少年を誘惑したり、騙したり、単に自分の性的欲求を満足させる対象として扱うような『不当な性行為』に限ると読み替えれば、普通の大人なら理解できるはずだ」。
3. ギリギリセーフ!の判断: 裁判所は、「淫行」という言葉そのものは少し曖昧だけれど、青少年を守るという目的や、社会の常識に照らして解釈すれば、憲法違反とまでは言えない、と判断したんだ。

【判決】「淫行」は具体的ではないけれど、解釈を絞れば憲法違反ではない!

最高裁判所(昭和60年10月23日)は、次のような答えを出しました。

1. 明確性の原則を認めた! 通常の判断能力をもつ一般人が、自分の行為がそのルールにあてはまるかどうかを判断できるような基準が読み取れない「不明確な規定」は、憲法31条に違反して無効になる、という大原則を改めて確認したよ。
2. 条例は「合憲」! 「淫行」とは、青少年の心身の未成熟に乗じた不当な手段による性交や、青少年を単に性の道具として扱うような行為を指すと「限定して解釈」すれば、一般人でも理解できるので、憲法には違反しないと結論づけたんだ。

【判決の言葉】(出典:自治体法務検定テキスト 刑法編より)

補足
「通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読みとれるかどうかによって決定すべき(参照:最大判昭50・9・10 刑集29巻8号489頁 ※この徳島市公安条例事件の考え方を引き継いで、本件福岡県条例も判断されました)」

まとめ:判決の後、日本はどう変わったの?

この判決は、全国の自治体の「ルール作り」に大きな影響を与えたよ!

– 条例の言葉が「具体的」になった! この裁判の後、日本中の自治体は「淫行」という言葉をそのまま使わず、判決が示した「誘惑し、威迫し、……」といった具体的な表現に書き直すようになったんだ。
– 「とりあえず禁止」ができなくなった! 「青少年を守るためなら何を禁止してもいい」わけではなく、国民の自由を奪う以上は、誰が見ても納得できるハッキリした言葉を使わなければならないという意識が、自治体職員の間に浸透したよ。
– 「言葉の壁」への挑戦が続く その後も「卑わいな言動」など、曖昧になりがちな言葉について裁判で争われるたびに、自治体は例示を加えたりして、より分かりやすいルールへと進化させ続けているんだ。

最後に

「正義の味方の言葉であっても、曖昧なままで人を縛ってはいけない」。この1985年の決断は、青少年を守ることと、人々の自由を守ることの、むずかしいバランスを教えてくれているんだね!

補足
条文補足:日本国憲法第三十一条
何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
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