行政・法律の疑問 読了 5分

「ハンコを押す前なら自由」は間違い!? 契約直前で裏切ったときの責任【契約交渉の不当破棄事件】

★ 判例データ

事件名:損害賠償請求上告事件(昭和59年・国家賠償代位責任説)
裁判所:最高裁判所
判決日:昭和59年9月18日

関係法令:
・国家賠償法1条(公権力の行使に基づく賠償責任)
・民法(不法行為)

論点:
・国家賠償法の代位責任説と職務行為基準説
・公務員個人への損害賠償請求の可否
・国家賠償と公務員の個人責任

結論:
・国家賠償法の責任は代位責任であり、被害者は公務員個人に直接請求できない

読者のみなさん、こんにちは! 今日は、1984年(昭和59年)に最高裁判所が出した、「約束の重み」についてのとても大切なお話を紹介するよ。
「まだ契約書にサインしていないんだから、いつ止めても勝手でしょ?」という言い分に対し、裁判所が「いや、相手に大きな期待をさせておいて、いきなり裏切るのはルール違反(信義則違反)だよ!」とブレーキをかけた事件なんだ。

【ストーリー】「もうすぐ契約ですね!」 vs 「やっぱりやーめた」

事業者のAさん

担当者さん、何度も話し合ってようやくここまで来ましたね。新しい建物のために、こちらの土地を借りる準備はすべて整いました。従業員も雇ったし、設計もバッチリです!
相手方のBさん

ええ、Aさん。ほぼその内容で間違いありません。正式な契約(調印)は来週にしましょう。楽しみですね。
Aさん

はい! では、来週の契約を信じて、最終的な資材の発注も済ませておきますね。

(契約の直前になって……)

Bさん

あ、Aさん。ごめん。やっぱりあの話、なかったことにして。他に条件のいい人が現れたから、そっちと契約することにしたよ。
Aさん

ええっ!? そんなの困ります! Bさんが「契約する」って言うから、私は何千万円もかけて準備をしてきたんですよ。今さら「やめた」なんて、あまりにも無責任です!
Bさん

でも、まだ正式にハンコは押してないでしょ? 契約が成立する前なんだから、止めるのは自由なはずだ!

【解説】裁判所でのバトル:登場!「契約締結上の過失」と「信義則(しんぎそく)」

「二人とも落ち着いて。今回のバトルのポイントは、契約書にサインする前の『準備段階』で、どれくらいの責任が発生するのか、ということなんだ」。

ふつう、契約は「お互いの合意」で成り立つものだから、サインする前なら自由にやめられるのが原則だよ。でも、今回のケースには「信義則(しんぎそく)」という、世の中の「誠実なルール」が関わってくるんだ。

1. 「魔法の期待」が生まれた瞬間:
何度も話し合いを重ねて、「もう絶対に契約するよね」という強い信頼(期待)が生まれた段階では、相手に対して「ガッカリさせないように誠実に行動する義務」が生まれると考えられたんだ。

2. 契約書がなくても責任はある!:
裁判所はこう考えたよ。「契約が正式に成立していなくても、相手が『もう安心だ』と信じて準備を進めているのを知りながら、正当な理由もなく突然交渉を打ち切るのは、誠実さに欠ける行為(注意義務違反)だ」。

つまり、「ハンコさえ押さなければ何をしてもいい」というわけではなく、相手にかけた迷惑(損害)については、お金で償わなければならないというルールが認められたんだね。

【判決】契約が成立する直前で裏切った場合は、損害を賠償しなさい!

最高裁判所(昭和59年9月18日)は、次のような答えを出しました。

1. 誠実な義務がある!
契約の準備段階に入った当事者は、相手方の信頼を裏切らないように誠実に行動すべき「信義則上の注意義務」を負っています。
2. 裏切りは「不法行為」になる!
相手が「契約が成立するのは確実だ」と信じるのが当然といえる段階で、正当な理由なく突然交渉を破棄し、相手に損害を与えた場合は、不法行為としての責任(損害賠償)を負うことになります。

【判決の言葉】

> 最高裁判所の判決(昭和59年9月18日)より(要旨)
> 「契約の交渉段階において、一方が他方に対して契約が確実に成立すると信じさせるような言動をとり、相手方がそれを信じて準備を行った場合、正当な理由なく交渉を破棄した当事者は、信義則上の注意義務違反として損害を賠償する責任を負う。」
> ※出典に基づき構成。

判決の後、日本はどう変わったの?

この判決は、日本のビジネスのやり方や「誠実さ」の基準を大きく変えたよ。

* 「契約締結上の過失(けいやくていけつじょうのかしつ)」が定着した!
この事件をきっかけに、契約の前であっても「無責任な態度は許されない」というルールがハッキリしたんだ。これを「契約締結上の過失」の理論と呼び、今の日本の民法の教科書には必ず載っている重要な考え方になったよ。
* 交渉が「丁寧」になった!
「後で訴えられたら大変だ」とみんなが意識するようになったので、お役所や企業が交渉をするときには、相手に誤解を与えないよう、より慎重に、説明をしっかり尽くすようになったんだ。
* 弱い立場の人(準備を進めた側)が救われるようになった!
「相手の言うことを信じて投資したのに、直前でハシゴを外された」という人が、裁判所でしっかり「ひどい!」と言える道が開かれた。今の日本における「取引の安全」を守る、とても大切な支えになっているんだね。

まとめ

* 契約書にサインする前でも、「誠実さのルール(信義則)」は始まっている。
* 相手に「契約は確実だ」と思わせておいて、勝手にやめるのはルール違反。
* この判決のおかげで、今の日本は「信じて準備した人の努力」が法的に守られる仕組みが保たれているんだね!

「ハンコを押す前でも、誠実さは忘れずに」。法律が、単なる紙のやり取りではなく「心のつながり」も大切にしていることがわかる、とてもロジカルで誠実な判例だったんだよ。

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