行政・法律の疑問 読了 5分

「『お役所がいいって言ったのに、犯罪になるの!?』 揺れた官民のルールと責任【石油カルテル(生産調整)事件】」

★ 判例データ

事件名:私の独占の禁止又は公正取引の確保に関する法律違反被告事件(石油カルテル(生産調整)事件東京高裁判決)
裁判所:年)9月26日に東京高等裁判所
判決日:昭和55年9月26日

関係法令:
・刑法
・独占禁止法
・違法
・自治体法

論点:
・責任阻却

結論:
・記事本文参照

「『お役所がいいって言ったのに、犯罪になるの!?』 揺れた官民のルールと責任【石油カルテル(生産調整)事件】」

読者のみなさん、こんにちは! 今日は1980年(昭和55年)9月26日に東京高等裁判所が出した、「国の指導に従ってやったことなのに、あとから『それは法律違反だ!』と捕まってしまった場合、その人に責任はあるの?」という、非常にドラマチックな裁判を紹介するよ。

舞台は、世界中がパニックになった「オイルショック」の時代。ガソリンや灯油が足りなくなって困っている日本を救おうと(?)、当時の通商産業省(今の経済産業省)が石油会社にアドバイスを出したんだ。でも、それがとんでもない事件に発展しちゃった。さっそくストーリーを見てみよう!

【ストーリー】「通産省の言う通りにしただけだ!」 vs 「それは法律(独禁法)違反だ!」

石油会社のAさん

「裁判官さん、信じてください! 当時はオイルショックで日本中が大混乱でした。私たちは、通商産業省(通産省)の役人さんから『石油が足りなくならないように、みんなで生産量を調整しなさい』という『行政指導』を受けたんです。国のアドバイスに従って、みんなのために頑張っただけなんです!」
検察官・公正取引委員会

「いいえ、Aさん。あなたたちはライバル会社同士で集まって、『これくらいの量にしよう』『値段はこれくらいにしよう』とこっそり話し合って決めましたね。これは、自由な競争を邪魔する『不当な取引制限(カルテル)』という立派な犯罪(独占禁止法違反)です! 国のアドバイスがあったからといって、法律を破っていい理由にはなりません!」
石油会社のAさん

「でも、お役所のプロが『やっていい』と言ったんですよ!? 私たちはそれが『悪いことだ(法律違反だ)』なんて、夢にも思いませんでした。それなのに『わざとやった(故意がある)』として罰せられるのは、あまりに理不尽です!」

【解説】裁判所でのバトル:登場!「違法性の意識の可能性」という心のブレーキ

今回のバトルの最大のポイントは、「法令の解釈に責任をもつお役所の指示に従った場合、その人に『悪いことをしている』という自覚をもつことができたか」ということなんだ。

1. 「行政指導(ぎょうせいしどう)」のワナ: お役所が「こうしてください」とお願いすることを「行政指導」というよ。これには強制力はないけれど、当時はとても強い力をもっていたんだ。
2. 魔法の言葉「違法性の意識の可能性(いほうせいのいしきのかのうせい)」: 犯罪が成立するためには、単に「やったこと」が悪いだけでなく、「これは悪いこと(法律違反)だ」と気づくチャンスがあったかどうかが重要なんだ(責任阻却事由)。
3. 結論:信じるに足りる理由があれば「無罪」!?: 裁判所はこう考えたよ。「法律の運用に権限をもつ機関(この場合は通産省)が『こうしなさい』と言ったのなら、それを信じて『これは正しいことなんだ(適法なんだ)』と思い込むのも無理はないよね」。このように、適法だと信じたことに相当な理由がある場合、責任がなくなって(阻却されて)処罰されないことがあるんだ。

【判決】行為は「違反」だけど、責任は問えない!

東京高等裁判所(昭和55年9月26日)は、次のような答えを出しました。

1. 独占禁止法には違反している! 石油会社同士が集まって生産量を決めたことは、本来は独占禁止法が禁じるカルテルにあたると判断されました。
2. でも、責任は問わない(一部無罪)! 通産省の行政指導に従った結果、「これが法律違反になる」という自覚(違法性の意識)をもつことが難しかったと認められ、石油会社の人たちを犯罪者として罰することはできない(責任が阻却される)と判断されました。

【判決の核心】

補足
「違法性の意識の可能性がなくなる場合としては、法令の解釈・運用に権限をもつ機関の見解に従った場合が挙げられます。……判例に現れた例では、……石油の生産調整がカルテルにあたるかどうかについて通商産業省(現経済産業省)あるいはその担当者(の見解に従った場合などがあります)(参照:東京高判昭55・9・26高裁刑集33巻5号359頁。テキスト782, 785頁 脚注2より抜粋)」

まとめ:判決の後、日本はどう変わったの?

この1980年の決断は、日本の政治と経済、そして法律のバランスを劇的に変えたよ!

– 「行政指導」のやり方が透明になった! お役所が法律の裏付けなしに勝手な指示を出すことは、企業を法律違反の危険にさらすことになると厳しく批判されたんだ。これが後の「行政手続法」の制定(1993年)につながり、「行政指導は透明に、かつ法律の範囲内で」というルールが確立されたよ。
– 独占禁止法がパワーアップした! 「お役所が言ったから」という言い訳でカルテルが許されないよう、公正取引委員会の権限が強まり、独占禁止法の守りがより堅くなったんだ。
– 「信じることの正義」が守られた 「国の言うことを正しく信じて行動した人を、後から法律で罰してはいけない」という、国民を保護するための大切なルール(責任阻却の法理)が、改めて日本の裁判のスタンダードとして根付いたんだね。

最後に

「ルールを教える側(国)と守る側(国民)が、お互いに正しく法律を理解していなければならない」。この昭和55年の決断は、今の私たちが「これっておかしくない?」と問い直し、正しい行政が行われるように見守ることの重要性を教えてくれているんだね!

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