行政・法律の疑問 読了 5分

判例解説:離婚でもらえる「予定」のお金じゃ、勝手に他人の権利は使えないよ!っていう判例【離婚に伴う財産分与請求権と債権者代位権】** [1]

★ 判例データ

事件名:所有権確認等請求上告事件
裁判所:最高裁判所
判決日:昭和55年7月11日

関係法令:
・民法
・家族法
・自治体法

論点:
・(記事本文参照)

結論:
・記事本文参照

判例解説:離婚でもらえる「予定」のお金じゃ、勝手に他人の権利は使えないよ!っていう判例【離婚に伴う財産分与請求権と債権者代位権】 [1]

読者のみなさん、こんにちは! 今日は1980年(昭和55年)7月11日に最高裁判所が出した、「離婚したときに相手から財産を分けてもらう権利を使って、相手の代わりに借金を取り立てたりできるの?」という、家族の争いと法律の使い方のルールを決めた裁判を紹介するよ。

「将来お金がもらえるはずだから、今のうちに魔法の権利を使っちゃおう!」という作戦に、裁判所がどんなブレーキをかけたのか見てみよう。

【ストーリー】「私の取り分を増やすために、私が代わりにやるわ!」 vs 「内容が決まるまでは口出ししないで!」

妻のBさん

「あなた(夫のAさん)とはもう離婚するわ! 私には、私たちが結婚生活で作った財産を分けてもらう権利(財産分与請求権)があるはずよ!」
夫のAさん

「それはわかった。でも、どの貯金を分けるか、いくら払うかは、まだ話し合いも裁判の結果も出ていないじゃないか。」
妻のBさん

「そんなの待っていられないわ。あなたは友人のCさんにお金を貸しているのに、ちっとも取り立てていないじゃない。私が『債権者代位権(さいけんしゃだいいけん)』という魔法の権利を使って、あなたの代わりにCさんからお金を回収してあげる! そうすれば、あなたが持っているお金が増えて、私の取り分も多くなるでしょ!」
夫のAさん

「ちょっと待って! 僕がCさんからいつお金を返してもらうかは僕の勝手だ。君の『財産を分けてもらう権利』は、まだ具体的な中身が決まっていない『あやふやな期待』にすぎないんだから、僕の代わりに他人に文句を言うなんて許されないはずだ!」
妻のBさん

「ひどい! 権利があるんだから、使わせてよ! 裁判官さん、助けて!」

【解説】裁判所でのバトル:登場!「あやふやな権利」と「魔法のブレーキ」

「二人とも落ち着いて。今回のバトルのポイントは、『具体的な中身が決まっていない権利』が、他人の権利を代わりに使うための『チケット』になれるのか、ということなんだ」。

1. 債権者代位権(さいけんしゃだいいけん):
これは、自分にお金を返してくれない人が、別の人に持っている権利を放置しているとき、代わりにその権利を使って、返してもらえるはずの財産をキープする魔法のような権利だよ(民法423条)。でも、これを使うには「自分の権利(守るべき権利)がしっかりしていること」が大前提なんだ。
2. 財産分与(ざいさんぶんよ)の特殊性:
離婚のときの財産分与は、単にお金を分けるだけでなく、これまでの生活への貢献度や、離婚後の生活のことも考えて裁判所が決めたりする特別なものなんだ。だから、裁判や正式な話し合いが決着するまでは、「何円もらえるか」は全く決まっていない状態なんだね。
3. 裁判所のジャッジ:
裁判所はこう考えたよ。「いくらもらえるか、何を分けるかが決まる前の権利は、『不確定・不明確(ふかくてい・ふめいかく)』な状態だ。そんなあやふやな状態の権利を理由にして、他人が持っている別の権利にまで首を突っ込むことは認められない!」と判断したんだ。

【判決】内容が決まる前の「財産分与」の権利では、代位権は使えない!

最高裁判所(昭和55年7月11日)は、次のような答えを出しました。

1. 「あやふやな権利」は代位権のチケットにならない!
離婚に伴う財産分与請求権は、協議(話し合い)や審判などで具体的な内容が決まるまでは、その範囲や内容がはっきりしないため、債権者代位権を使って守るべき「被保全債権(ひほぜんさいけん)」にすることはできません。
2. 手順をしっかり守ろう!
家族の財産をどう分けるかは、まず当事者同士や家庭裁判所できちんと決めるのが先。それが「○円支払え」という具体的な形になってから初めて、他の法的な権利とリンクさせることができるとしたんだ。

【判決の言葉】

補足
「……離婚に伴う財産分与請求権は、……協議あるいは審判等によつて具体的内容が形成されるまでは、その範囲及び内容が不確定・不明確であるから、これを被保全債権として債権者代位権を行使することは許されない(参照:最判昭55・7・11民集34巻4号628頁 ※テキスト343頁注釈より)」

まとめ:判決の後、日本はどう変わったの?

この判決は、日本の離婚の手続きや、借金の整理のルールをとても分かりやすく整えたよ。

* 「将来の期待」だけで他人の権利に介入できなくなった!
「将来もらえるかもしれない」というあやふやな期待だけで、相手の別の仕事や権利(貸金の取り立てなど)に勝手に踏み込むことはできない、という境界線がハッキリしたんだ。
* 「まずは財産分与の中身を確定させる」という順序が確立した!
離婚をめぐる争いでは、まず「何をいくら分けるか」をしっかりと決めることが最優先だ、という実務のルールが定着したんだね。
* 取引の安全が守られた!
あやふやな権利で魔法(代位権)が使えてしまったら、夫と取引している友人Cさんのような他人も混乱してしまう。この判決のおかげで、私たちは「決まっていない権利」に振り回されずに済んでいるんだよ。

最後に

「魔法の権利(代位権)を使うには、まず自分の権利をピシッと確定させてから」。この判例のおかげで、家族の間のプライベートな問題が、必要以上に世の中のビジネスや他人の権利を混乱させないように守られているんだよ!

補足
条文補足:民法第四百二十三条(債権者代位権の要件)
債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利及び差押えを禁じられた権利は、この限りでない。債権者は、その債権の期限が到来しない間は、被代位権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、被代位権利を行使することができない。
この判例、ほかの時代の判例ともつながっています
「判例年次索引」で明治〜令和の判例をまとめて見られます。
索引を見る
新着の「ムダ知識」をメールで
週1回、選りすぐりの疑問だけ届きます。
登録する