事件名:損害賠償請求上告事件(昭和54年・違法な行政指導)
裁判所:最高裁判所
判決日:昭和54年7月10日
関係法令:
・行政指導の限界
・国家賠償法1条(国家賠償)
論点:
・違法な行政指導に基づく国家賠償
・行政指導の任意性と強制の問題
・行政指導の違法性と損害賠償
結論:
・行政指導であっても実質的に強制と同じ効果をもたらす場合は違法となり国家賠償責任が生じる
読者のみなさん、こんにちは! 今日は、お巡りさんが泥棒を捕まえようとして失敗し、誰かに迷惑をかけてしまったとき、「一体だれがお金を払って謝るべきなの?」という、責任のなすりつけ合いに決着をつけたお話を紹介するよ。
【ストーリー】「お巡りさんのミスだぞ!」 vs 「それは国の仕事だから国に言ってよ」
お巡りさんの捜査がひどかったせいで、私はひどい目に遭いました! 車は壊れるし、怪我もした。この損害、ちゃんと賠償してください! 私はこの県に住んでいるんだから、県庁(都道府県)に請求しますよ!
ええっ、困りますよAさん。うちの県の警察官がやったことではありますが、犯人を捕まえる「犯罪捜査」は、刑事訴訟法という「国の法律」に基づいて行われる「国の仕事(国家事務)」なんです。
お巡りさんは一時的に「国のエージェント」として働いていたようなものです。だから、責任を取るべきなのは「国」ですよ。国の方に請求してください。
ちょっと待ってください! その警察官に給料を払っているのは県ですよね? 採用したのも県です。自分たちの職員が起こしたトラブルなんですから、県が責任を負うのが筋(国家賠償法1条)というものです。国は関係ありません!
どっちでもいいから、早く誰か責任を取ってよ!
【解説】裁判所でのバトル:登場!「お仕事の帽子」と「お給料の財布」
「みんな落ち着いて。今回のバトルのポイントは、警察官が『捜査の帽子(国の仕事)』をかぶっているとき、責任を負うのは『お財布(お給料を払っている県)』なのか、それとも『帽子の持ち主(国)』なのか、ということなんだ」。
1. 「公権力の行使」の主役は誰?:
国家賠償法1条1項では、公務員が「職務を行うについて」他人に損害を与えたときは、その公務員が所属する「国又は公共団体」が賠償すると決まっているよ。
2. 捜査は国のルールだけど……:
裁判所はこう考えたんだ。「たしかに、犯罪捜査そのものは国が決めたルール(刑事訴訟法)で行われる。でも、その仕事を実際にやっている警察官は、都道府県の職員であり、県から命令を受けて、県の予算で動いているよね」。
3. 「例外」はあるけれど「基本は県」!:
「検察官(国の役人)から直接お手伝いをお願いされたような特別な場合を除けば、警察官が行う捜査は、その警察官が所属している都道府県の『公権力の行使』だと考えるのが自然だよ。だから、県が責任を取りなさい!」と判断されたんだ。
つまり、「捜査の内容が国の法律に関わることでも、実際に働いている組織(県)が責任を持つ」という、スッキリしたルールが確認されたんだね。
【判決】警察官による捜査のミスは、原則として都道府県が責任を負う!
最高裁判所(昭和54年7月10日)は、次のような答えを出しました。
1. 都道府県の責任を肯定!
都道府県の警察官による犯罪捜査は、検察官が自ら行う捜査の補助であるといった例外的な場合を除き、当該都道府県の公権力の行使にあたります。
2. 国家賠償の請求先が確定!
警察官の捜査上の過失によって損害を受けた人は、国ではなく、その警察官が所属する都道府県に対して損害賠償を請求すべきであると判断されました。
【判決の言葉】
> 最高裁判所の判決(昭和54年7月10日)より(要旨)
> 「都道府県の警察官による犯罪捜査は、……検察官が自ら行う犯罪捜査の補助に係るものであるときのような例外的な場合を除いて、当該都道府県の公権力の行使にあたる。」
【追記】判決の後、日本はどう変わったの?
この判決によって、日本の警察組織と被害者救済のあり方が明確になったよ。
* 「どこに訴えればいいか」がハッキリした!
以前は「国なのか県なのか」で迷うことがあったけれど、この判決のおかげで、お巡りさんの不祥事やミスがあったときは、まずは「その警察署がある都道府県」を相手に裁判をすればいい、という迷わないルートが確立されたんだ。
* 都道府県の「責任感」が強まった!
「自分たちの職員のミスは自分たちでお金を払わなきゃいけない」と明確になったことで、警察官の教育や管理、捜査のルール作りを都道府県がより真剣に行うようになり、私たちの権利が守られやすい環境が整っていったんだよ。
* 国家賠償法の使い勝手が良くなった!
行政の仕組みが複雑でも、「お給料や身分の関係がある組織が責任を取る」というシンプルで力強い考え方が、他の似たような公務員のトラブルでもお手本として使われるようになったんだ。
まとめ
* お巡りさんの仕事は「国の法律」に基づいているけれど、所属は「都道府県」。
* だから、捜査でミスがあったときの賠償責任は、原則として「都道府県」が負う。
* この判決のおかげで、「誰に責任を問えばいいか」という国民の迷いが解消されたんだね!
「仕事の内容(ソフト)」より「働いている組織(ハード)」を重視した、とても実務的で国民に優しい判例だったんだよ。