事件名:解放法違反処罰、建造物侵入、公務執行妨害被告事件(全逓名古屋中郵事件)
裁判所:最高裁判所
判決日:昭和52年5月4日
関係法令:
・刑法
・国家公務員法
・憲法
・全農林警職法
論点:
・(記事本文参照)
結論:
・記事本文参照
読者のみなさん、こんにちは! 今日は1977年(昭和52年)に最高裁判所が出した、公務員の「働く権利(労働基本権)」と「ストライキの禁止」をめぐる、非常に重要な決着がついた裁判を紹介するよ。
この事件は、以前紹介した「全逓東京中郵事件」や「群馬教組事件」で認められかけていた「公務員でも正当なストなら捕まらない」という優しいルールを、最高裁が「やっぱりダメ! 公務員のストは一律に禁止だし、あおった人は罰せられるよ!」と完全に塗り替えて、今の日本のルールを確定させた「だめ押し」の判決なんだ。
【ストーリー】「郵便を止めてでも抗議する!」 vs 「公務員がストをするのは犯罪だ!」
私たちは名古屋中央郵便局で働く職員の組合です。労働条件の改善を求めて、一斉に仕事を休む「ストライキ」を計画しました。これは憲法28条で認められた「働く人の権利」です!
ちょっと待ってください。あなたたちは国家公務員です。国家公務員法(98条2項)では、公務員がストライキをすることは、どんな理由があっても厳しく禁止されています。
でも、数年前の最高裁の判決(全逓東京中郵事件など)では、「暴力がなくて、国民生活にひどい迷惑をかけない程度のストなら、刑事罰で罰してはいけない」というルール(二重のしぼり論)があったはずだ! 私たちの活動はその範囲内だから、捕まるはずがない!
それは古い考え方です。1973年(昭和48年)の「全農林警職法事件」で、最高裁はすでに「公務員のストは一律禁止で合憲だ」という厳しいルールに変えたんです。ストをあおったリーダーのAさんたちを、国家公務員法違反などで起訴します!
【解説】裁判所でのバトル:登場!「一律禁止」と「だめ押しの判決」
「みんな落ち着いて。今回のバトルのポイントは、揺れ動いてきた『公務員のストライキと刑事罰』の議論に、どうやって最終的な決着をつけるのか、ということなんだ」。
かつて最高裁は、「公務員だって労働者なんだから、正当なストなら警察は捕まえない」という「盾」を認めていた時期があったんだ。これを「合憲的限定解釈」と呼ぶよ。
ところが、1973年の「全農林事件」で最高裁は、「公務員の使用者は国民全体であり、職務の公共性が高いから、一律にストを禁止してもいいんだ」と、ルールを180度ひっくり返したんだ。
今回の名古屋中郵事件(昭和52年)で最高裁は、「やっぱり全農林事件の考え方が正しい。公務員のストを一律に禁止し、それをあおった人を刑事罰で罰しても、憲法28条には違反しない!」と力強く宣言したんだ。これで、以前の「優しいルール」に戻る道は完全に閉ざされたわけだね。
【判決】公務員のスト禁止と処罰は、憲法違反ではない!
最高裁判所大法廷(昭和52年5月4日)は、次のような答えを出しました。
公務員の争議行為(ストライキ等)を一律に禁止し、これに違反してあおり行為等をした者を刑事罰に処する国家務員法の規定は、憲法28条に違反せず、合憲である。
「違法性が弱いストなら罪にならない」といった限定的な解釈(二重のしぼり論)は採らないことを改めて明確にした。
【判決の言葉】(要旨)
「公務員の労働基本権に対する制限は、……公務員の地位の特殊性及びその職務の公共性にかんがみ、国民全体の共同利益を維持するために必要やむをえない制限として、憲法二八条の規定に違反するものではない。……(ストライキをあおる行為を刑事罰で罰することも)十分な合理的な理由があるというべきである。」
※出典等の趣旨に基づき構成。
判決の後、日本はどう変わったの?
この名古屋中郵事件の判決が「だめ押し」となって、日本の公務員を取り巻く状況はガラッと変わったよ。
この判決によって、「ストを計画したりあおったりしたら、クビになるだけでなく、警察に捕まって有罪になる」ということが法的に確定したんだ。そのため、それまで盛んだった公務員の激しい労働運動は、急速に勢いを失っていったよ。
今の日本で「学校の先生や役所の人がストライキで仕事を休む」という光景をほとんど見かけないのは、この昭和52年の判決によって、法律の厳しい運用がガチッと固まったからなんだ。
一方で、国際労働機関(ILO)などからは、「日本の公務員の権利制限は厳しすぎるのではないか」という勧告を何度も受けるようになり、現在でも「権利をどこまで認めるか」は、日本にとって大きな議論のテーマであり続けているんだよ。
まとめ
「働く人の権利」と「社会の安定」。そのバランスを、裁判所は「社会の安定」の方へ大きく振った、日本の労働史上、最大級のインパクトをもつ判例だったんだよ。
参照条文:
・第二十八条
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
条文補足:日本国憲法第二十八条
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。