事件名:河川附近地制限令違反被告事件(名取川事件)
裁判所:最高裁判所大法廷
判決日:昭和43年11月27日
関係法令:
・河川附近地制限令
・憲法29条3項(正当な補償)
論点:
・財産権
・特別の犠牲
・損失補償
・憲法直接請求
結論:
・補償規定がなくても憲法29条3項を直接根拠に損失補償請求が可能
こんにちは! みんなは自分の土地なら、何をしても自由だと思うかな?
実は、みんなの安全を守るために、国が「その場所で砂を掘っちゃダメだよ」とルールを決めることがあるんだ。
でも、そのルールに「我慢してもらった分のお金(補償)を払います」と書いてなかったら……?
「お金を払うって書いてないルールなんて憲法違反だ!」と怒った人と、国のバトルの結果を見てみよう。
【ストーリー】「勝手にルールを作るな!」 vs 「みんなの安全が第一です」
私は宮城県の名取川(なとりがわ)の近くで、ずっと砂や砂利を掘って売る仕事をしてきました。それなのに、国が急に「河川附近地制限令」という新しいルールを作って、「これからは許可がないと掘っちゃダメ」って言ってきたんです。
Aさん、そこを掘りすぎると川の堤防が弱くなって、大雨の時に崩れてしまうかもしれないんです。周りの人たちの命を守るために、自由に掘らせるわけにはいきません。
安全のためなのは分かります。でも、仕事ができなくなるんだから、その分のお金を払ってくれるのが筋でしょう? 憲法29条3項には「公共のために財産を使うなら、正当な補償(お礼のお金)をしなさい」と書いてあります。それなのに、このルールには「お金を払う」なんて一言も書いていないじゃないですか! お金を払うと書いていないルールなんて、憲法違反の「悪いルール」です。だから、私は許可なんて取らずに掘り続けます!
許可なく掘るのはルール違反です! 罰金を払ってもらいますよ!
【解説】裁判所でのバトル:登場!「憲法という魔法の財布」
「二人とも落ち着いて。今回のバトルのポイントは、あるルールに『お金を払う』という条文が抜けていたとき、そのルール自体が憲法違反で無効になってしまうのか、ということなんだ」
裁判所は、この難しい問題を解くために、次のような「魔法の考え方」を示したよ。
1. 「特別の犠牲(ぎせい)」があればお金はもらえる:
普通なら我慢しなきゃいけない範囲を超えて、特定の人だけがひどい損害を受けることを、法律の世界では「特別の犠牲」と呼ぶんだ,。もし、この「特別の犠牲」があるなら、国はお金を払わなきゃいけないんだよ。
2. 「魔法の財布(憲法29条3項)」はいつでも開く:
裁判所はこう考えたんだ。「たとえ、目の前の『ルールブック(河川附近地制限令)』にお金を払うと書いていなくても、心配いらないよ。一番偉いルールである『憲法』という魔法の財布を直接使って、『憲法にお金を払えと書いてあるから、払ってください』と国に頼むことができるんだ」ってね,。
だから、お金を払うという条文がルールに書いていなくても、そのルール自体が憲法違反でダメになるわけではない、という答えを出したんだよ,。
【判決】ルールに書いてなくても、憲法を根拠にお金を請求できる!
最高裁判所大法廷(昭和43年11月27日)は、次のような答えを出しました。
1. ルール自体は「合憲(OK)」!
補償(お礼のお金)の規定がないからといって、直ちにその法律や条例が憲法違反で無効になるわけではありません,。
2. 直接、憲法に頼んでOK!
もし本当に「特別の犠牲」といえるような損害を受けたなら、ルールに書いてなくても、直接、憲法29条3項を根拠にして「お金をください」と裁判所に訴えることができるとされました,。
【判決の言葉】
> 最高裁判所の判決(昭和43年11月27日)より
> 「(その制限が)特定の個人に対し、……『特別の犠牲』を強いるものであれば、……その法律に補償規定がなくても、……直接憲法二九条三項を根拠にして、補償請求をする余地が全くないわけではない。……したがつて、(補償規定がないからといって)……直ちに憲法二九条三項に違反する無効の規定であると解すべきではない。」,
【追記】判決の後、日本はどう変わったの?
この判決は、今の日本の「損失補償(そんしつほしょう)」のルールを決定づけたよ。
* 法律を作るのがスムーズになった!
この裁判の前までは、「お金を払うって書き忘れたら、法律が全部無効になっちゃうかも……」と心配されていたけれど、この判決のおかげで、もし書き忘れていても憲法がカバーしてくれるという安心感が生まれたんだ。
* 「特別の犠牲」という言葉がスタンダードになった!
「どんな時にお金をもらえるの?」というギモンに対し、「特定の人にだけ『特別の犠牲』があるときだよ」というはっきりした基準が、この裁判から日本中に広まったんだよ,。
* 「憲法の力」が再確認された!
憲法はただの飾りではなく、困ったときには直接「お金を払って!」と頼るための、生きた武器になるんだということを教えてくれた、とっても勇気ある判決だったんだね。
まとめ
* 憲法は、みんなのために我慢した人に「正当な補償」をすることを約束している,。
* 法律にお金のことが書いていなくても、憲法を直接の根拠にして請求できる,。
* 「特別の犠牲」があるかどうかが、お金をもらえるかどうかの大事なポイントなんだね!,
川の安全を守るルールが憲法とどうつながっているのか。一見、難しそうだけど、実は「みんなで助け合って、損をした人にはちゃんとお礼をしよう」という優しい正義のルールだったんだよ。
条文補足:日本国憲法第二十九条
財産権は、これを侵してはならない。財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。