事件名:損害賠償等請求上告事件
裁判所:最高裁判所
判決日:昭和39年6月24日
関係法令:
・民法
・不法
・自治体法
論点:
・(記事本文参照)
結論:
・記事本文参照
小さな子に「不注意の責任」は問えるの? 裁判所が決めた「5〜6歳の魔法の境界線」【最判昭39.6.24】
読者のみなさん、こんにちは! 今日は1964年(昭和39年)6月24日に最高裁判所が出した、「小さな子供が交通事故にあったとき、その子に『飛び出したのが悪い』と言って賠償金を減らしてもいいの?」というルールを紹介するよ。
交通事故の賠償金を決めるとき、被害者にも不注意があったら金額を減らす「過失相殺(かしつそうさい)」という仕組みがあるけれど、それが何歳から通用するのかを決めたとても大切なお話なんだ。
【ストーリー】「飛び出した子が悪い!」 vs 「まだ何もわからない子なんです!」
「ああっ、大変だ! 道路を走っていたら、小さな子供のBくんが急に飛び出してきて、ぶつかってしまった……。申し訳ないけれど、Bくんも周りを見ずに飛び出してきたんだから、不注意(過失)があったはずだ。だから、払う賠償金は少し減らしてもいいですよね?」
「とんでもない! Bはまだ幼稚園児で、車の怖さも、道路に飛び出すとどうなるかも、本当の意味では理解できていません。そんな何もわからない子に対して『君が不注意だったからお金を減らすよ』なんて、あんまりです!」
「でも、裁判官さん! 法律(民法722条2項)には『被害者に過失があったときは、金額を減らせる』と書いてあります。子供だからといって、100%運転手のせいにするのは不公平じゃないですか!?」
【解説】裁判所でのバトル:登場!「魔法の知恵(事理弁識能力)」
「二人とも、落ち着いて。今回のバトルのポイントは、不注意を責めるためには、その子にどれくらいの『知恵』が必要か、ということなんだ」。
1. 「過失相殺(かしつそうさい)」のルール: 普通は、交通事故で被害者にも悪いところがあれば、公平のために賠償金を減らすよ。これを「過失相殺」というんだ。
2. 魔法の言葉「事理弁識能力(じりべんしきのうりょく)」: 裁判所はこう考えたよ。「不注意を責める(過失相殺する)ためには、その人が『これをしたら危ないな』と自分で判断できる力(事理弁識能力)をもっていなきゃいけないよね」。
3. 「5〜6歳」という境界線: じゃあ、その知恵は何歳くらいでつくのか? 裁判所は、「だいたい5歳から6歳くらいになれば、世の中の道理がわかるようになる」と決めたんだ。この力を「事理弁識能力」と呼ぶよ。
【判決】道理がわかる年齢なら「不注意」として認める!
最高裁判所(昭和39年6月24日)は、次のような答えを出しました。
1. 「事理弁識能力」があれば、賠償金を減らしてOK! 被害者に不注意があったとして賠償額を減らす(過失相殺する)ためには、被害者に責任能力(自分のしたことの責任を取る力)まではいらないけれど、「事理を弁識するに足りる知能」があれば十分であると判断しました,。
2. だいたい5〜6歳が目安! この能力は、通常5歳から6歳くらいで備わるとされました。したがって、それより小さい子(例えば3歳など)の場合は、その子自身の不注意として賠償金を減らすことはできません。
【判決の言葉】
「民法七二二条二項所定の過失相殺をするためには、被害者に責任能力があることを要しないが、事理を弁識するに足りる知能を具備していることを要するものと解するのが相当である(参照:最判昭39・6・24民集18巻5号854頁 ※テキスト339頁解説より)」
まとめ:判決の後、日本はどう変わったの?
この判決は、日本の交通事故のルールをより「公平」で「わかりやすい」ものにしたよ!
– 「5〜6歳」が法律の常識になった! この裁判以来、日本の交通事故では「5〜6歳より上の子なら、本人の不注意を考える」「それより下の子なら、本人の不注意は問わない」というハッキリした基準ができたんだ。
– 「被害者側の過失」という考え方が発展した! 小さな子本人の責任は問えなくても、「親がちゃんと見ていなかったこと」を代わりに不注意として考えるという、新しい公平のルール(被害者側の過失)が使われるようになったよ。
– 子供を守る社会へ 「小さな子供は守られるべき存在」ということが法的に再確認されたことで、運転手にはより一層の注意が求められ、子供たちの安全を守る教育や環境づくりが大切にされるようになったんだね。
最後に
「知恵がつく前の子供には、厳しい責任を負わせない」。この優しい決断のおかげで、今の日本は、小さな子供たちが万が一の事故にあったときでも、法律が「何もわからない小さな子」の味方になって守ってくれる社会になっているんだよ!
条文補足:民法第七百二十二条(損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺)
第四百十七条及び第四百十七条の二の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。