行政・法律の疑問 読了 5分

「公務員のふり」をして悪さをしても、お上が責任を負うよっていう判例【外形標準説:非番警察官の強盗事件】

★ 判例データ

事件名:損害賠償請求上告事件(昭和31年・公務員の不法行為)
裁判所:最高裁判所
判決日:昭和31年11月30日

関係法令:
・国家賠償法1条(公権力の行使)
・民法(不法行為)

論点:
・公務員の不法行為の要件
・国家賠償法上の「公権力の行使」の範囲
・国の賠償責任の成立要件

結論:
・国家賠償法の「公権力の行使」は権力的作用に限らず、非権力的作用も含む

読者のみなさん、こんにちは! 今日は、1956年(昭和31年)に出された、お巡りさんが「仕事のふり」をして犯罪を犯してしまったとき、国や自治体がどこまで責任を負うべきか、という非常に重要なお話を紹介するよ。
「私的な犯罪なんだからお役所は関係ない」という言い逃れを許さず、「見た目が警察官なら、お上が責任を取りなさい!」という強力なルール(外形標準説)が生まれた事件なんだ。

【ストーリー】「お巡りさんだと思ったら……泥棒!?」 vs 「非番の日の勝手な行動です」

被害者のAさん

ひどい目に遭いました! 警察の制服を着た男に「ちょっと止まりなさい」と呼び止められて、調べられるのかと思ったら、そのままお金を奪われたんです。お巡りさんの格好を信じた私がバカだったんでしょうか?
都の担当者

Aさん、それは本当にお気の毒です。しかし、その男は確かにうちの警察官でしたが、その日は「非番(休みの日)」でした。しかも、自分の管轄ではない場所で、勝手に制服を持ち出してやったことなんです。
都の担当者

彼は公務員として働いていたわけではなく、自分の利益のためだけに動いていました。これは完全な「個人的な犯罪」ですから、都が損害賠償を払う(国家賠償法1条)義務はないはずですよ。
Aさん

そんなの無責任です! 私は彼個人の顔を見て止まったんじゃない。「警察の制服と帽子」を見て、お上の命令だと思って従ったんです。見た目が警察官だったんだから、都が責任を取ってください!

【解説】裁判所でのバトル:登場!「魔法の制服(外形)」と「信頼の守り」

「二人とも落ち着いて。今回のバトルのポイントは、公務員の仕事が『心の中(目的)』で決まるのか、それとも『見た目(外形)』で決まるのか、ということなんだ」。

1. 「心の中」は見えない:
もし「本人が本当に仕事をするつもりだったかどうか」で責任を決めるとしたら、被害者は相手の心の中をのぞき見しないといけないよね。でも、それは無理な話。

2. 「魔法の制服(外形標準説)」の登場:
裁判所はこう考えたよ。「たとえ本人が自分のためにお金を盗もうとしていても(主観的には職務ではない)、警察の制服を着て、警察官らしい行動をしていれば、客観的には『お仕事の真っ最中』に見えるよね」。

3. 国民の「信頼」を裏切らない:
「国民は、公務員の『見た目』を信じて協力するんだ。その信頼を裏切った以上、たとえ公務員個人の暴走であっても、その公務員を雇っている国や自治体が責任を負うべきだ!」と判断したんだね。

つまり、「職務行為の外形(見た目)」を備えていれば、それは「公務」として扱うという、被害者にとても優しいルールが確立されたんだよ。

【判決】見た目が職務の範囲内なら、国や自治体は責任を負いなさい!

最高裁判所(昭和31年11月30日)は、次のような答えを出しました。

1. 外形標準説を採用!
公務員が主観的に権限を行使する意思をもっていたかどうかにかかわらず、客観的に職務執行の外形(見た目)を備える行為によって他人に損害を与えた場合には、国家賠償法1条が適用されます。
2. 非番でも責任あり!
警察官が非番の日に、管轄外で制服・制帽を着用して職務を装い強盗を働いたケースであっても、国や公共団体は損害を賠償する責任を負うと判断されました。

【判決の言葉】

> 最高裁判所の判決(昭和31年11月30日)より
> 「公務員が主観的に権限行使の意思をもつてする場合にかぎらず自己の利をはかる意図をもつてする場合でも、客観的に職務執行の外形をそなえる行為をしてこれによつて、他人に損害を加えた場合には、国又は公共団体に損害賠償の責を負わしめて、ひろく国民の権益を擁護する(のが法の趣旨である)。」

【追記】判決の後、日本はどう変わったの?

この判決は、日本の「国家賠償」の範囲を大きく広げることになったよ。

* 「お役所の逃げ得」が通用しなくなった!
これまでは「本人が勝手にやった不祥事ですから、役所は知りません」という言い逃れが多かったけれど、この判決以降、「その人がその役職に見える状態でやったことなら、役所が責任を取る」というのが当たり前の常識になったんだ。
* 公務員の管理がより厳しくなった!
「制服を勝手に持ち出されて犯罪に使われたら役所の責任になる」とハッキリしたため、制服や装備品、身分証などの管理がこれまで以上に徹底されるようになったんだよ。
* 「国民の信頼」が法的な権利になった!
「お上の服を着ている人を信じて行動した国民を、絶対に見捨てない」。この考え方は、今の日本の「公務に対する厚い信頼」を支える、とても大切な土台になっているんだね。

まとめ

* 公務員が「自分のため」にやった悪事でも、「仕事のふり(見た目)」をしていれば、お上が責任を負う!
* これを「外形標準説」と呼び、今の日本の法律の大事なルールになっている。
* この判決のおかげで、私たちは「制服や肩書き」を悪用したトラブルに遭ったとき、国や自治体に助けを求められるようになっているんだね!

「見た目が仕事なら、それは仕事としての責任が伴う」。公務員の肩書きの重さと、国民の信頼を守る大切さを教えてくれる、とてもロジカルで心強い判例だったんだよ。

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