事件名:助成金不交付決定処分取消請求事件(「宮本から君へ」事件)
裁判所:最高裁判所
判決日:令和5年11月17日
関係法令:
・憲法21条(表現の自由)
・文化芸術基本法
・独立行政法人日本芸術文化振興会法
論点:
・出演者の薬物犯罪を理由に映画助成金を不交付とする処分は、表現の自由を侵害するか
・「公益」を理由とした助成金拒否の限界
結論:
・あいまいな「公益」を理由にした助成金拒否は、表現の自由の萎縮を招き違法
こんにちは! 今日は、みんなが映画(えいが)を作るときに国からもらえる「応援(おうえん)のお金(助成金)」についてのお話だよ。 もし、映画に出ている俳優(はいゆう)さんが過去に悪いことをして捕(つか)まっていたら、国はその映画に「お金は出せません!」と言えるのかな? 「表現の自由(憲法21条)」と「みんなのため(公益)」のバランスについて、最高裁判所(さいこうさいばんしょ)が出した大切な答えを見てみよう。
【ストーリー】「応援のお金をください!」 vs 「犯罪者(はんざいしゃ)が出ている映画には出せません」
私たちは「宮本から君へ」という素晴らしい映画を作りました。芸術(げいじゅつ)を応援する国のルールに基づいて、助成金を申請(しんせい)します!
ちょっと待ってください。その映画に出ている俳優の一人が、麻薬(まやく)を使って有罪(ゆうざい)判決を受けていますよね。みんなの税金(ぜいきん)を使って、犯罪者が出ている映画を応援するのは「公益(こうえき:みんなの利益)」に反します。だから、助成金は出しません!
そんなのひどい! 映画の中身は犯罪とは関係ありません。俳優さんの過去を理由にお金を貸さないなんて、国が「この表現は気に入らないから応援しない」と言っているのと同じです。そんなことをされたら、怖くて誰も自由な映画を作れなくなってしまいます!
【解説】裁判所でのバトル:登場!「表現の自由の盾(たて)」
「今回のバトルのポイントは、助成金を出すかどうかの判断で、『みんなのため(公益)』というあやふやな理由で、憲法が守っている『表現の自由』を傷つけてもいいのか、ということなんだ」
裁判所は、国が芸術を応援するお金について、次のような「自由のルール」を考えたんだ。
1. 「縮み上がり(萎縮:いしゅく)」の危険: もし国が「この内容やこの俳優はダメだ」と自由にお金を止められるようになると、映画を作る人たちは「国に怒られないような内容にしよう」と縮み上がってしまうよね。これは、憲法(けんぽう)21条が一番大切にしている「言いたいことを自由に言う自由」を、根っこから枯(か)らしてしまうことになるんだ。
2. 「公益」というあやふやな言葉: 「みんなのため(公益)」という言葉は、とても便利だけれど、使いすぎると怖い言葉なんだ。裁判所は、「ただなんとなく社会のイメージが悪くなる」というくらいの理由では、自由を制限(せいげん)してはいけないと判断したんだよ。
裁判所はこう考えたんだ。「助成金を止めることができるのは、守らなきゃいけない『みんなの利益』がとっても重要で、しかも、本当にお金を出したら『具体的な危険がある』という特別なときだけなんだよ」ってね。今回の映画については、そこまでの危険はないから、お金を出さないのは「やりすぎ(違法)」だと判断されたんだ。
【判決】あやふやな「みんなのため」で、助成金を止めるのは違法!
最高裁判所(令和5年11月17日)は、次のような答えを出しました。
1. 助成金の拒否は慎重(しんちょう)に! 「一般的な公益が害される」という理由で広く助成を拒否すると、表現行為に萎縮(いしゅく)的な影響を与えてしまうため、憲法21条1項の趣旨(しゅし)に照らして認められません。
2. 具体的な危険が必要! 助成金を出さない理由として「公益」を重視できるのは、その公益が重要で、かつそれが害される「具体的な危険」がある場合に限られると判断されました。
【判決の言葉】
最高裁判所の判決(令和5年11月17日)より
「助成金を交付すると……表現行為の内容に照らして一般的な公益が害されるということを……重視し得るのは、当該公益が重要なものであり、かつ、当該公益が害される具体的な危険がある場合に限られる。」
【追記】判決の後、日本はどう変わったの?
この判決は、日本の芸術(げいじゅつ)への支援(しえん)のあり方を大きく変えることになったよ。
– 「内容による選別」にブレーキがかかった! 国や自治体が補助金や助成金を出すときに、政治的な考え方や出演者のスキャンダルを理由に「けしからんから出さない」ということが、簡単にはできなくなったんだ。
– 表現の自由の「強さ」が再確認された! 「お金を出す・出さないは国の勝手でしょ?」という意見もあったけれど、裁判所は「お金を通じた嫌がらせも、自由を奪うことにつながるからダメだよ」とはっきり言ったんだね。
– イベントや展示会のルールも見直された! この判決の考え方は映画だけでなく、自治体が主催する展示会やコンサートなどで、「反対意見があるから中止にする」といった判断をするときにも、厳しいチェックが必要だという今の日本の空気を作っているよ。
まとめ
– 国が映画の助成金を出すときに、「みんなのため」というあやふやな理由で止めるのはダメ。
– 自由な表現が「縮み上がってしまう」ことを、憲法はとても心配している。
– 助成金を止めるなら、「具体的な、本当の危険」を証明しなきゃいけないんだね!
「みんなが嫌がるかもしれない」ではなく、「本当に危ないことが起きるのか」。そんな厳しい基準で、今の日本の自由な表現は守られているんだね。
条文補足:日本国憲法第二十一条
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。