事件名:業務上横領被告事件
裁判所:最高裁判所
判決日:令和4年6月9日
関係法令:
・刑法
・自治体法
論点:
・(記事本文参照)
結論:
・記事本文参照
「プロの犯罪」を手伝ったら、罪の名前はプロ仕様、でも罰は素人並み!?っていう判例【業務上横領罪の共犯(最判令4.6.9)】
読者のみなさん、こんにちは! 今日は2022年(令和4年)6月9日に最高裁判所が出した、「仕事で預かっているお金を盗む『プロの犯罪』を、部外者が手伝ったとき、どう裁かれるべきか?」という、最新のルールを確定させた判決を紹介するよ。
以前、1957年(昭和32年)の似たような判例を紹介したけれど、今回の2022年の判決は、そのルールを改めて「これが今の日本の正解だよ!」と力強く宣言したものなんだ。刑法のルールがどう整理されたのか、一緒に見てみよう!
【ストーリー】「俺は部外者だ!」 vs 「プロの犯罪の仲間だろ!」
「仕事で会社の1,000万円を預かっているけれど、これをこっそり自分のものにしたいな。でも一人じゃ運ぶのが大変だ。友達のBに手伝ってもらおう。B、ちょっとこの金、俺の車まで運んでくれないか?」
「いいよ! Aが仕事で管理している金だっていうのは知っているけれど、俺はここの社員じゃないし、普段この金を触る権限もない。ただの『運び屋』として手伝うだけさ。」
(――二人は見つかって、警察に捕まってしまいました。――)
「Aさんは仕事で預かっている金を盗んだから『業務上横領罪』だ。手伝ったBさんも、Aさんがプロ(業務者)だと知っていて一緒にやったんだから、同じ『業務上横領罪』の仲間(共犯)だぞ!」
「ちょっと待ってください! 確かに手伝ったのは悪いけれど、僕はその会社の人じゃないし(業務という身分がない)、そもそも盗む瞬間までその金を占有(管理)すらしていなかった(占有者という身分もない)。何も持っていない僕が、プロ専用の重い罪になるのはおかしい!」
「裁判官さん! 刑法65条1項には『身分があるから成立する罪に、身分がない人が加わったら、同じ仲間として扱う』と書いてあります。だからBさんもプロの罪名で裁くべきです!」
【解説】裁判所でのバトル:登場!「入場券(1項)」と「お値段(2項)」の組み合わせ
今回のバトルのポイントは、「占有者」でも「プロ(業務者)」でもない人が、プロの横領を手伝ったときに、刑法65条の1項と2項をどう組み合わせるか、ということだったんだ。
1. 刑法65条1項(グループ分けのルール): 「身分がない人でも、身分がある人と一緒に悪いことをしたら、その罪の仲間(共犯)になれるよ」というルール。これを、その罪のグループに入るための「入場券」と呼ぼう。
2. 刑法65条2項(個別の罰を決めるルール): 「身分によって罰の重さが変わる場合、身分がない人には『普通のお値段(通常の罰)』を適用するよ」というルール。これを、その人の立場に合わせた「お値段(刑罰)」と呼ぼう。
3. 結論:ハイブリッド方式!: 裁判所はこう考えたよ。「Bさんはプロと一緒にやったんだから、罪の名前はプロ仕様の『業務上横領罪の共犯』にする(1項を適用)。でも、Bさん自身はプロじゃないんだから、実際に受ける罰だけは軽い方の『単純横領罪』の重さにする(2項を適用)」。
【判決】罪の名前は「プロの罪」、でも罰の重さは「素人の罪」!
最高裁判所(令和4年6月9日)は、次のような答えを出しました。
1. 「業務上横領罪」の共犯が成立する! 自分に「占有」も「業務」という身分もなくても、それらをもつ人と一緒に横領すれば、刑法65条1項によって、罪名としては「業務上横領罪」の共犯になります。
2. 罰は「普通の横領」の重さで! ただし、刑法65条2項によって、実際に科される刑罰は、身分がない人向けに軽い「横領罪」の刑になります。
【判決の核心】(出典:自治体法務検定テキスト 刑法編より)
「複合的身分犯の場合、自己の占有と業務者というどちらの身分もない者が業務上占有者の共犯になると、共犯にも業務上横領罪が成立する(刑法65条1項)が、刑は横領罪の刑が科される(刑法65条2項)というのが現在の判例です(参照:最判令4・6・9刑集76巻5号613頁 ※テキスト753頁より)」
まとめ:判決の後、日本はどう変わったの?
この2022年の判決は、日本の刑法の運用をより確かなものにしたよ!
– 「ややこしい議論」に決着がついた! これまで「部外者の罪名はどうなるの?」と学者や裁判所の間で少し意見が分かれていた部分があったけれど、最高裁が「1項で罪名を決め、2項で罰の重さを決める」とはっきり示したことで、全国の裁判で迷いがなくなったんだ。
– 公平な処罰の徹底 「プロの犯罪の仲間である」という社会的評価(罪名)はしっかり下しつつ、立場が違う人には無理な重罰を科さないという、日本の刑法の「バランスの良さ」が改めて示されたよ。
– 自治体やビジネスの現場への警告 「自分には資格や立場がないから、手伝っても罪は軽いだろう」という甘い考えに対し、「罪の名前はしっかり重いプロ仕様でつくんだぞ」という強いプレッシャーを維持することになったんだね。
最後に
「グループはプロ仕様、お支払いは素人並み」。このハイブリッドなルールのおかげで、今の日本の裁判は、仲間の連帯責任と個人の立場の違いを、きっちり分けて考えられるようになっているんだよ!