行政・法律の疑問 読了 5分

「嫌な命令には従わない」って裁判で言える? 予防のための訴訟ルールを決めた判例【自衛官防衛出動命令拒否訴訟】

★ 判例データ

事件名:命令服従義務確認請求事件
裁判所:最高裁判所
判決日:令和元年7月22日

関係法令:
・行政法
・行政事件訴訟法
・自衛隊法
・自治体法

論点:
・公的義務の不存在確認

結論:
・記事本文参照

読者のみなさん、こんにちは! 今日は2019年(令和元年)に最高裁判所が出した、「まだ受けていない命令に対して、『私は従わなくていいよね?』とあらかじめ裁判で確認できるのか?」という、お役所の命令と裁判のルールについての非常に珍しいケースを紹介するよ。

上司からの命令(職務命令)は、基本的には守らなければならないもの。でも、もしその命令が憲法に違反していると思ったら、命令が出る前にストップをかけられるのか? その「予防」のルールの厳しさが示された事件なんだ。

【ストーリー】「出動命令には従えません!」 vs 「命令が出る前に訴えるのはルール違反だ」

陸上自衛官のAさん

自衛隊法が改正されましたが、私はその内容が憲法に違反していると思います。このままでは、私は憲法違反の「防衛出動命令」をいつか受けることになってしまう。そんな命令に従う義務がないことを、今のうちに裁判所でハッキリさせてください!
国の担当者

ちょっと待ってください、Aさん。あなたにはまだ具体的な「出動命令」は出ていませんよね? 何も起きていない段階で、「義務がないことを確認しろ」なんていう裁判は、今の法律の仕組み(行政事件訴訟法)には用意されていませんよ。
Aさん

でも、命令が出てから逆らえば、私は「お仕置き(懲戒処分)」を受けてしまいます。そんな不利益を受ける前に、あらかじめ裁判で守ってもらう権利があるはずです!
国の担当者

裁判官さん、聞いてください。もしこんな勝手な「確認の裁判」が認められたら、日本中の公務員が「この仕事はやりたくないから、義務がないことを確認してくれ」と裁判所に押し寄せて、行政がストップしてしまいます!

【解説】裁判所でのバトル:登場!「名前のない訴訟」と「差止めのハードル」

「二人とも落ち着いて。今回のバトルのポイントは、法律に名前が載っていない特別な裁判(無名抗告訴訟)を、どれくらい自由に認めていいのか、ということなんだ」

  • 「無名抗告訴訟(むめいこうこそしょう)」という奥の手:
  • 行政事件訴訟法には、「取消訴訟」など名前のついた裁判がいくつかあるけれど、実はそれ以外の形の裁判も認められることがあるんだ。これを、名前がないから「無名抗告訴訟」と呼ぶよ。Aさんはこの「奥の手」を使って、「命令に従う義務がない」ことを確認しようとしたんだね。

  • 「差止訴訟(さしとめそしょう)」という双子:
  • 裁判所はこう考えたよ。「Aさんがやりたいことは、結局のところ『将来の命令やお仕置きを止めてほしい』ということだよね。それなら、法律にちゃんと名前がある『差止訴訟』と同じ目的をもった裁判だといえる」。

  • 「ズルい近道」は許さない!:
  • 「名前のある『差止訴訟』には、すごく厳しい合格ライン(訴訟要件)がある。もし、名前のない『義務がないことの確認』という裁判を、それよりゆるい基準で認めてしまったら、みんな厳しいルールを避けてそっちに逃げちゃうよね。だから、この特別な裁判も、差止訴訟と同じくらい厳しいハードルを越えないと認められないんだよ」と判断したんだ。

    【判決】予防のための裁判は、差止訴訟と同じ厳しいルールでなければならない!

    最高裁判所(令和元年7月22日)は、次のような答えを出しました。

  • 訴えの性質を特定!
  • 職務命令への不服従を理由とする懲戒処分を避けるために、「命令に服従する義務がないこと」を確認する訴えは、法律に定めのない「無名抗告訴訟」にあたります。

  • ゆるい要件は認めない!
  • この無名抗告訴訟は、将来の処分を止める「差止訴訟」と目的や審査内容が同じであるため、差止訴訟よりも「緩やかな訴訟要件」で許容されることはありません。

    【判決の言葉】

    「……この無名抗告訴訟は、当該処分に係る差止訴訟と目的、効果、審理内容を同じくするものというべきであり、……差止訴訟よりも緩やかな訴訟要件で許容されるものとは解されない。」

    判決の後、日本はどう変わったの?

    この判決は、日本の行政訴訟における「予防的な救済」の限界をハッキリさせたよ。

  • 「とりあえず確認」の裁判ができなくなった!
  • 「将来困りそうだから、今のうちに義務がないことを確認して」という、安易な訴えは認められないことが決定的になったんだ。これにより、行政の現場が混乱することを防ぐ「秩序」が守られたといえるね。

  • 「差止訴訟」の重要性が再確認された
  • 将来の不利益を防ぎたいなら、まずは法律に定められた「差止訴訟」の厳しいハードル(重大な損害が生じるおそれがある、など)をきちんとクリアしなさい、という王道のルートが示されたんだ。

  • 公務員の「違法の抗弁」の価値が上がった
  • 事前にストップをかけるのが難しくなった分、実際に命令違反で処分された後の裁判で、「あの命令は違法だったから、処分も無効だ!」と主張する「違法の抗弁」という戦い方の重要性が、あらためてクローズアップされることになったんだよ。

    まとめ

  • 将来の命令をめぐる「義務がないことの確認」は、「無名抗告訴訟」という特別な裁判になる。
  • でもそれは、「差止訴訟」と同じくらい厳しいルールをクリアしなきゃいけない。
  • この判決のおかげで、今は「何でもかんでも事前に裁判で止める」のではなく、ルールに基づいた正しい救済が行われるようになっているんだね!
  • 「不安だから先にハッキリさせたい」という気持ちはわかる。でも、裁判の仕組みを壊さないために、時には厳しいハードルが必要なんだ。地方自治の現場でも、職員の権利と組織のルールのバランスを考えるときに、とても参考になる判例なんだよ。

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