行政・法律の疑問 読了 4分

指紋をとるのを断るのは「自由」なの?プライバシーの考えを変えた判例【外国人指紋押なつ拒否事件】

★ 判例データ

事件名:外国人登録法違反被告事件(外国人指紋押なつ拒否事件上告審判決)
裁判所:最高裁判所
判決日:平成7年12月15日

関係法令:
・憲法13条(幸福追求権)
・外国人登録法

論点:
・みだりに指紋の押なつを強制されない自由が憲法13条で保障されるか
・外国人登録制度における指紋押なつ義務は違憲か

結論:
・指紋の強制は原則禁止。ただし正当な理由があれば制限可

こんにちは! 今日は、昔の日本で行われていた「外国籍の人に指紋(しもん)を求めるルール」をめぐる大バトルの話を紹介するね。 「指紋は大切な個人情報(プライバシー)なのに、無理やりとるのは憲法違反じゃないの?」という訴えに、最高裁判所が歴史的な答えを出した事件だよ。

【ストーリー】「指紋をとるのは嫌だ!」 vs 「ルールだから従ってください」

日本に住む外国人のAさん

私は長年日本で暮らしていますが、外国人登録(とうろく)のたびに指紋をとられるのが、まるで犯罪者扱いされているようで、どうしても納得(なっとく)できません! 指紋は私の体の大切な一部で、プライバシーです。これを無理やりとらせるのは、憲法13条が守っている「個人の尊重(そんちょう)」に反します! 私は拒否(きょひ)します!
役所の担当者Bさん

でも、外国人登録法という法律(ほうりつ)で、指紋をとることは決まっているんです。日本にどんな人が住んでいるかを正確(せいかく)に確認して、管理するためには、指紋をとるのが一番確実な方法なんです。ルールに従わないと、処罰(しょばつ:罰を受けること)の対象になってしまいますよ。
Aさん

どんな目的があっても、本人が嫌がっているのに無理やり体の情報を奪うのは「自由」を傷つけるひどい行為です! 裁判所さん、これは許されることなんですか?

【解説】裁判所でのバトル:登場!「見えない盾(自己情報コントロール権)」

今回のバトルの最大のポイントは、憲法13条の「幸福追求権(こうふくついきゅうけん)」の中に、「自分の情報を勝手に使われない自由」が含まれるかどうか、ということだったんだ。

裁判所は、次のような「見えない盾(新しい権利)」をはっきりと認めたよ。 「人間には、『みだりに(理由もなく勝手に)指紋の押なつを強制されない自由』がある。これは、憲法13条が守っている、私生活上の自由の一つなんだ」ってね。

でも、一方でこうも考えたんだ。 「けれど、この自由も絶対(ぜったい)に何でも思い通りになるわけじゃない。社会みんなの利益のために『正当な理由』があるなら、制限(せいげん)されることもあるんだよ」と判断したんだね。

この裁判が起きた当時のルールについては、「日本に住む外国人を正確に把握する」という目的は「正当な理由」にあたるとされ、Aさんへの処罰自体は「憲法違反ではない」という結論になったけれど、「指紋を無理やりとるのは、原則としてダメなんだ」という大きなルールがこの時、日本で初めて示されたんだよ。

【判決】指紋を強制されない自由は、憲法で守られている!

最高裁判所(平成7年12月15日)は、次のような答えを出しました。

1. 指紋の強制は、原則として許されない! 憲法13条は、個人の私生活上の自由を保障(ほしょう)しており、何人もみだりに指紋の押なつを強制されない自由を有すると認められました。
2. でも「正当な理由」があれば制限できる! 国家機関が正当な理由もなく指紋の押なつを強制することは許されないけれど、今回のケース(当時の外国人登録制度)のような合理的な必要性がある場合には、憲法に違反(いはん)しないと判断されました。

【判決の言葉】

補足
最高裁判所の決定(平成7年12月15日)より
「憲法13条は……国民の私生活上の自由が、公権力の行使に対しても保護されるべきことを規定している……。何人もみだりに指紋の押なつを強制されない自由を有するものというべきであり、国家機関が正当な理由もなく指紋の押なつを強制することは、同条の趣旨に反して許されない。」

【追記】判決の後、日本はどう変わったの?

この判決は、今の日本の「個人情報を守る仕組み」をつくるための、大きな出発点になったよ。

– 「プライバシー」の考え方が新しくなった! 「放っておいてもらう権利」だけでなく、「自分の情報を自分でコントロールする権利(自己情報コントロール権)」という積極的な考え方が大切にされるようになったんだ。
– 「個人情報保護法」の誕生につながった! この判決で示された「勝手に情報を集めてはいけない」という考え方が、2003年に作られた「個人情報の保護に関する法律」の大きな土台(どだい)になったんだよ。
– 指紋を求めるルールが見直された! この裁判のような反対運動や、この判決の影響もあって、その後、永住者などに対する指紋押なつの制度は日本で廃止されることになったんだ。

まとめ

まとめ

– 指紋を無理やりとられない自由は、憲法13条で守られている。
– でも、みんなの利益のために「どうしても必要な理由」があれば、制限されることもある。
– この判決のおかげで、「自分の情報は自分のもの」という今の日本のプライバシーの常識が作られていったんだね!

「体の一部である情報は、とてもデリケートで大切なもの」。そんな当たり前のことを、憲法のルールとしてハッキリさせてくれた、とても有名な裁判だったんだよ。

補足
条文補足:日本国憲法第十三条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
この判例、ほかの時代の判例ともつながっています
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