行政・法律の疑問 読了 5分

1票の重さが3倍も違うのは憲法違反!でも、やり直しはさせないよっていう判例【平成5年衆議院議員定数不均衡訴訟】

★ 判例データ

事件名:選挙無効請求事件(衆議院議員定数配分規定違憲訴訟)
裁判所:最高裁判所大法廷
判決日:平成5年1月20日

関係法令:
・公職選挙法(議員定数配分規定)
・憲法14条(法の下の平等)
・行政事件訴訟法31条(事情判決)

論点:
・最大格差3.18倍と違憲判断
・是正のための合理的期間の徒過
・事情判決の法理

結論:
・格差3.18倍は違憲だが事情判決により選挙は有効

こんにちは!今日は、みんなが持っている「1票」の重さについての、とても大切で、そして日本の政治の形をガラッと変えるきっかけになった裁判のお話です。 住んでいる場所によって「私の1票は、あの人の3分の1の価値しかない!」なんて不公平があったら、みんなが平等に政治に参加しているとは言えませんよね。裁判所が「それはもう、憲法違反だ!」とはっきり怒った事件を見てみましょう。

【ストーリー】「3倍以上の差は、もう我慢の限界だ!」 vs 「区割りは国会の自由です」

都会に住む有権者のAさん

ちょっと国会さん、聞いてください! 1990年(平成2年)に行われた衆議院選挙で、1票の価値を計算したら、一番重いところと軽いところで3.18倍も差がありました。これまでの裁判でも「格差を直しなさい」と言われてきたのに、まだ3倍以上の差があるなんて、憲法14条の「平等」に違反しています!
国の担当者

Aさん、格差をなくす努力はしています。でも、どこで線を引くか(区割り)を決めるのは、地域の事情も考えなきゃいけない「国会の裁量(さいりょう:自由な判断)」なんです。
Aさん

3倍以上の格差を何年も放置して選挙をするなんて、自由の使いすぎ(裁量の限界超え)です! こんな不公平なルールで行われた選挙は「無効(むこう)」にして、やり直すべきです!
国の担当者

えっ、やり直し!? 選挙を無効にしたら、その選挙で選ばれた議員さんがこれまで決めた法律も予算も全部ダメになって、日本中が大混乱してしまいますよ!

【解説】裁判所でのバトル:登場!「魔法の物差し」と「苦肉の策(事情判決)」

「二人とも落ち着いて。今回のバトルのポイントは、国会の『宿題(格差を直すこと)』が期限切れになって、憲法違反のレベルに達したのか、ということなんだ」

裁判所は、この難しい問題を解くために、次のような「2段階のチェック」を行いました。

1. 「裁量の限界」を超えた違憲判断: 裁判所は、「1票の価値にこれほど大きな差があるのに、それを直すのに必要な『合理的な期間』を過ぎても放置していたことは、もう国会の自由の限界を超えている。だから、この選挙のルールは憲法違反(違憲)だ!」とはっきり言いました。

2. 「事情判決(じじょうはんけつ)」という苦肉の策: 一方で、裁判所は非常に悩みました。「本当に選挙を無効にしてやり直させたら、政治が止まって国民がもっと困るかもしれない」。そこで、「事情判決」という魔法の解決法を使いました。 これは、「ルールは憲法違反(違法)だけれど、今さらやり直すと社会がめちゃくちゃになるから、今回の選挙結果だけは『有効』としておこう」という、社会を守るためのギリギリの判断でした。

【判決】ルールは「憲法違反」!でも、国を守るために選挙は有効!

最高裁判所大法廷(平成5年1月20日)は、次のような答えを出しました。

1. 「格差は憲法違反」! 最大3.18倍の格差を放置して行われた衆議院選挙の定数配分規定は、憲法の平等原則に違反し、違憲であると判断されました。
2. 「事情判決」で選挙は無効にしない! 選挙を無効にすることによる社会的な混乱を避けるため、一般的な法の基本原則に基づき、選挙自体を無効とはしませんでした。

【判決の言葉】

> 最高裁判所の判決(平成5年1月20日)より 「選挙人の投票価値の不平等が……一般的に合理性を有するものとはとうてい考えられない程度に達しているときは、もはや国会の合理的裁量の限界を超えているものと推定されるべきである。……(しかし)行政事件訴訟法31条1項(事情判決)の規定の趣旨に照らし、本件各選挙を無効とする旨の判決をすることはできない。」

【追記】判決の後、日本はどう変わったの?

この判決は、日本の選挙の歴史を根本から変える「巨大な圧力」となりました。

– 「中選挙区制」が終わり、「小選挙区比例代表並立制」へ! 「違憲(憲法違反)」という強力なレッドカードを突きつけられたことで、国会は古いルールを直すしかなくなりました。その結果、1994年(平成6年)に選挙制度の大改革が行われ、現在の「小選挙区比例代表並立制」が導入されました。
– 「2倍以内」が合言葉に! 新しい制度では、1票の格差をできるだけ小さくするルールが作られました。今では格差を「2倍未満」に抑えることが、区割りを決める際の絶対的な基準として定着しています。
– 1票の平等が当たり前の議論に! この裁判をきっかけに、「どんなに地方でも、どんなに都会でも、みんなの1票は同じ価値であるべきだ」という民主主義の基本が、改めて日本中に強く意識されるようになったのです。

まとめ

– 1票の重さが極端に違う選挙は、国会の自由を超えて「憲法違反」になる!
– でも、国が大混乱するのを防ぐために、「事情判決」という方法で選挙結果は守られる。
– この判決がきっかけで、日本は「小選挙区制」という新しい選挙の仕組みに生まれ変わったんだね!

みんなの1票が、公平に、大切に扱われる社会へ。この裁判は、今の私たちが平等に政治に参加するための、大きな扉を開いた決断だったのですね。

補足
条文補足:日本国憲法第十四条
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。華族その他の貴族の制度は、これを認めない。栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
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