行政・法律の疑問 読了 5分

行政のお仕事も「公平なルール」で!手続きの正義を決めた判例【成田新法事件】

★ 判例データ

事件名:工作物等使用禁止命令取消等請求事件(成田新法事件)
裁判所:最高裁判所大法廷
判決日:平成4年7月1日

関係法令:
・新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法
・憲法31条(適正手続の保障)

論点:
・適正手続の行政手続への適用
・聴聞手続の省略と緊急性
・総合較量

結論:
・行政手続にも憲法31条が及ぶが事案の緊急性を考慮して合憲

こんにちは! 今日は、国や役所が何かを決めるときに守らなければならない「手続き(やり方)」のお話だよ。
みんな、テストで悪い点だったときに、いきなり先生に「明日から外遊び禁止!」って言われたらどう思う? 「言い分も聞いてくれないの?」って不公平に感じるよね。
「結果が正しければ、やり方はどうでもいいのか?」という大きな問題について、最高裁判所が答えを出した有名な事件を見てみよう。

【ストーリー】「危ない建物は使うな!」 vs 「勝手に決めるのはズルい!」

国の担当者

成田空港を作るのに反対している人たちが、空港の周りに高い塔(工作物)を建てています。そこから火炎瓶を投げたりして妨害してくるから、とても危険です! 「成田新法」という特別なルールを使って、明日からあの建物を使うのを禁止します!
反対しているAさんたち

ちょっと待ってください! 私たちの建物を使うなと言うなら、まずは私たちの言い分を聞くべき(聴聞:ちょうもん)じゃないですか。それを、いきなり紙一枚で「使うな」と命令するなんて、憲法(けんぽう)31条にある「正しい手続き(適正手続き)」に違反しています!
国の担当者

憲法31条は、泥棒などの「犯罪」の手続きについて書かれたものです。空港を安全に作るのは「行政(役所のお仕事)」ですから、31条は関係ありません! それに、いちいち話を聞いていたら、その間に事件が起きてしまいます。スピードが大事なんです!
Aさんたち

行政のお仕事だからって、国民の自由を勝手に奪っていいわけがありません。やり方が不公平なのは、絶対に憲法違反だ!

【解説】裁判所でのバトル:登場!「手続きの天秤(てんびん)」

「二人とも落ち着いて。今回のバトルのポイントは、憲法31条の『正しい手続きを守りなさい』というルールが、刑事裁判だけでなく、役所のお仕事(行政手続き)にも当てはまるのか、ということなんだ」

裁判所は、この難しい問題を解くために、次のような「手続きの天秤」という考え方を示したよ。

1. 役所の手続きも「憲法の仲間」!:
裁判所はこう考えたんだ。「憲法31条は、もともとは刑事手続き(犯人を捕まえるルール)の話だけど、役所が国民に何かを命令するときも、それが国民の自由を奪うことなら、憲法31条の考え方が当てはまると考えるのが自然だよね」ってね。
2. でも「何でもかんでも」ではない:
裁判所は続けてこう言ったんだ。「でも、役所のお仕事は種類が多すぎるし、緊急(きんきゅう)なときもある。だから、いつでも『必ず話を聞かなきゃダメ』とは限らないんだよ。『どれくらい大切な権利か』『どれくらい急いでいるか』などを天秤にかけて、そのつど判断すべきだね(総合較量:そうごうこうりょう)」って判断したんだ。

今回の成田空港の事件については、空港の安全を守るために「ものすごく急いでいた」し、塔自体が危険な活動に使われていたから、例外的に「話を聞かずに禁止しても憲法違反ではない」という答えになったんだね。

【判決】役所の手続きも憲法31条に関係するが、天秤で決める!

最高裁判所大法廷(平成4年7月1日)は、次のような答えを出しました。

1. 行政手続きも憲法31条の対象になる!
刑事手続きではないという理由だけで、行政手続きが憲法31条(適正手続きの保障)の対象外になると考えるのは間違いであると認められました。
2. 「天秤のルール」が示された!
事前に相手の言い分を聞くべきかどうかは、奪われる権利の大切さ、制限の強さ、行政目的の重要性、緊急性などをセットで考えて(総合較量)決めるべき、とされました。

【判決の言葉】

> 最高裁判所の判決(平成4年7月1日)より
> 「憲法31条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。」

【追記】判決の後、日本はどう変わったの?

この判決は、日本の「役所のあり方」を根本から変えるきっかけになったよ。

* 「行政手続法(ぎょうせいてつづきほう)」が生まれた!
この判決の翌年(1993年)、日本で初めての「行政手続法」という法律が作られたんだ。それまでは役所の「やり方」についての共通ルールがなかったけれど、この判決で「手続きが大事だ!」という空気が強まり、法律ができる大きな後押しになったんだよ。
* 「透明な政治」が当たり前になった!
「結果が良ければそれでいい」という考えから、「決めるまでのプロセスを誰にでも見えるようにし、当事者の言い分をしっかり聞く」というスタイル(透明性の確保)が、今の日本の行政の常識になったんだ。
* 「理由の提示」や「聴聞(ちょうもん)」の定着
今では、役所が何かを禁止するときには、必ず「なぜダメなのか」という理由を書いたり、事前に「何か言い分はありますか?」と聞く手続き(聴聞・弁明)を行うのが、行政手続法によって義務付けられているよ。

まとめ

* 憲法31条(手続きの正義)は、犯人探しだけでなく、役所のお仕事にも当てはまる。
* ただし、どれくらい丁寧な手続きが必要かは、内容や緊急性などの天秤で決まる。
* この判決のおかげで、今の日本には「行政手続法」という、役所のやり方を正すルールができたんだね!

空港の塔をめぐる激しいバトルの裏側で、日本の「民主的なお仕事のルール」が確立されたなんて、歴史の重みを感じるよね!

補足
条文補足:日本国憲法第三十一条
何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
この判例、ほかの時代の判例ともつながっています
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