行政・法律の疑問 読了 5分

議会が「払わなくていいよ」と決めるのはアリ? 責任逃れにブレーキをかけた判例【さくら市債権放棄議決事件】

★ 判例データ

事件名:公金違法出捐損害賠償請求事件(さくら市債権放棄議決事件上告審判決)
裁判所:最高裁判所
判決日:平成24年4月23日

関係法令:
・行政法
・地方自治法
・2017年法
・自治体法

論点:
・議会の裁量

結論:
・記事本文参照

読者のみなさん、こんにちは! 今日は2012年(平成24年)に最高裁判所が出した、「市長が税金を無駄にした責任を、議会が勝手にチャラにできるのか?」という、今の日本のルールを決めたとても大切なお話を紹介するよ。

この裁判は、同じ時期に起きた「大東市」や「神戸市」の事件とセットで、日本の地方自治のあり方を大きく変えるきっかけになったんだ。

【ストーリー】「損害を返してください!」 vs 「議会が免除を認めました」

さくら市の住民のAさんたち

市長さん! あなたたちの判断でお金(公金)を違法に出しすぎたせいで、市に大きな損害が出ました。私たちの税金を無駄にした責任を取って、市にお金を返しなさい! 私たちは裁判(住民訴訟)を起こします!
市長

一生懸命やった結果ですが、もし裁判で負けて個人で何千万円も払うことになったら、大変なことになります……。
市議会(議員さんたち)

市長を助けてあげよう。街のために頑張った結果なんだから。よし、議会のパワー(裁量)を使って、「市が市長にお金を返してもらう権利(損害賠償請求権)」を捨ててしまおう(債権放棄)。これで市長はもう払わなくて済むはずだ!
住民Aさんたち

ちょっと待ってください! 私たちが一生懸命、税金の無駄遣いを正そうと裁判をしているのに、議会が勝手に「責任をナシにする」なんて、自分たちの仲間を守るための「身内びいき」じゃないですか! そんな議決は認められません!

【解説】裁判所でのバトル:登場!「議会の魔法」と「不合理のブレーキ」

「二人とも落ち着いて。今回のバトルのポイントは、地方自治法に書いてある『権利を放棄する』という議会のパワーが、どこまで自由に使えるのか、ということなんだ」。

1. 議会は「街の意志」を決める場所:
最高裁判所はこう考えたよ。「地方公共団体のことは、住民が選んだ議会が決めるのが基本だ。だから、市が持っている権利(お金を返してもらう権利)を捨てるかどうかも、基本的には議会の『自由な判断(裁量)』に任されているんだ」。

2. でも「やりすぎ」はダメ!:
ただし、何でもかんでも許されるわけじゃない。「たとえ議会が決めたことでも、『それはあまりに不自然で、権限の使いすぎ(濫用)だよね』と言われるような場合には、その決定は違法になるよ」という厳しいルールを示したんだ。

3. どうやって「やりすぎ」を見分けるの?:
裁判所は、単に「チャラにしたからダメ」というのではなく、①その損害がどうして起きたのか、②市長にどれくらい悪い点があるのか、③チャラにすることで街にどんな影響があるのか、といったことを「全部まとめて(総合的に)考えよう」という物差しを作ったんだよ。

【判決】議会は債権を放棄できる! でも不合理な場合はダメ!

最高裁判所(平成24年4月23日)は、次のような答えを出しました。

1. 議会の裁量を認める!
住民訴訟の対象となっている損害賠償請求権を放棄する議決を行うことは、基本的には議会の裁量権に委ねられています。
2. 「不合理」なら違法!
様々な事情を総合的に考えて、その放棄が地方自治法の趣旨(民主的で実効的な運営)に照らして不合理であり、裁量権の範囲を逸脱したり濫用したりしていると認められるときは、その議決は違法となります。

【判決の言葉】

補足
「……権利を放棄する旨の議決を行うことは、議会の裁量権に基本的に委ねられているが、……議会が当該請求権を放棄することが地方公共団体の民主的かつ実効的な行政運営の確保を旨とする地方自治法の趣旨等に照らして不合理であって裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たると認められるときは違法となる……。」

まとめ:判決の後、日本はどう変わったの?

この判決は、日本の自治体における「責任の取り方」のルールを大きく作り直すきっかけになったよ。

* 「責任免除の条例」が作れるようになった!(2017年法改正):
この判決のあと、2017年(平成29年)に法律が変わり、あらかじめ条例を決めておけば、市長や職員に「わざと」や「ひどい不注意」がない場合には、一定の金額を超えた分を免除できる仕組みが作られたんだ。
* 「監査委員」の意見を聴くルールができた!:
議会が勝手に債権を捨てるのを防ぐため、住民監査請求があった後に債権放棄の決議をしようとするときは、あらかじめ専門家である「監査委員」の意見を聴かなければならないことになったよ。
* 自治体の「チェック体制(内部統制)」が強化された:
「最後は議会が助けてくれる」と甘えるのではなく、そもそも損害を出さないための「内部統制」というチェック体制を整えることが、都道府県や大きな市に義務付けられるようになったんだ。

最後に

「議会は強い力をもっているけれど、その力は住民の納得感(合理性)に支えられていなければならない」。この判例は、地方自治における民主主義と、個人の責任のバランスを教えてくれる、とても重みのある一歩だったんだよ。

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補足
参照条文:
・地方自治法96条1項10号 ※XMLなし。議会の権利放棄議決(大東市・神戸市事件と合わせて住民訴訟中の債権放棄の基準を確立)。
この判例、ほかの時代の判例ともつながっています
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