事件名:各種処分決定異議申立棄却決定取消請求事件(東洋町リコール署名無効事件)
裁判所:最高裁判所
判決日:平成21年11月18日
関係法令:
・地方自治法(直接請求)
・委任立法(政令)
論点:
・公務員のリコール代表資格制限の合法性
・政令による委任立法の限界
・直接請求権と参政権
結論:
・公務員をリコール運動代表から排除する政令規定は法律の委任範囲を超えており無効
こんにちは! 今日は、2009年(平成21年)に最高裁判所が、役所の細かいルール(政令)に対して「それはやりすぎ!」とレッドカードを出した、とっても珍しくて重要な裁判を紹介するよ。
「公務員だからリコールの代表にはなれない」という、長年当たり前だと思われていたルールがひっくり返り、日本の法律そのものが書き換わるきっかけになったお話だよ。
【ストーリー】「公務員がリコールのリーダー? ダメに決まってる!」 vs 「法律にはそんなこと書いてないぞ!」
今の議会には納得がいかない! 議員さんたちを辞めさせるための手続き(解職請求:リコール)を始めるぞ。リーダー(請求代表者)はこの人にお願いしよう。
はい、私が代表者の一人として署名を集めます!
ちょっと待ってください! Aさんは「農業委員」ですよね。農業委員は法律上、公務員の一種です。国のルール(地方自治法施行令)では、公務員はリコールの代表者にはなれないことになっているんです。
えっ、そうなんですか? でも、もともとの法律(地方自治法)をよく読んでみてください。そこには「リコールの『投票』については選挙のルールを真似する」とは書いてありますが、「『請求(署名集め)』の代表者の資格まで制限する」なんて一言も書いてありませんよ。
いやいや、リコールの署名集めは選挙と同じくらい大事な手続きです。公務員がそのリーダーになって影響力を使うのは良くないから、政府が「政令」で制限を加えるのは当然のことですよ。
国民の代表が決めた「法律」に書いていない厳しいルールを、政府が勝手に「政令」で作って、私たちの活動を縛るのはおかしいです! 裁判所さん、これって許されるんですか?
【解説】裁判所でのバトル:登場!「お上のルール」と「法律の枠(わく)」
「二人とも落ち着いて。今回のバトルのポイントは、政府が作った『細かいルール(政令)』が、国会が決めた『もともとの法律』の範囲をはみ出していないか、ということなんだ」
国会が作る「法律」は、大きな「ゴールの枠」を決めています。その中を細かく埋めるために、政府は「政令」を作ります(委任:いにん)。
1. 「書き分け」を無視した政令:
裁判所はこう考えたんだ。「地方自治法をよく見ると、リコールの『請求(署名)』と『投票』をハッキリと書き分けているよね。法律が『投票のときは選挙のルールを真似してね』と言ったからといって、政府が勝手に『請求の段階でも公務員はダメだ!』という新しい禁止ルールを追加するのは、やりすぎ(委任の範囲を逸脱)だよ」。
2. 昔の判断をひっくり返す!:
実は、裁判所は昔(昭和29年)には「このルールはOK」と言っていたんだ。でも、今回は「最大判(大法廷判決)」という一番重い会議を開いて、「やっぱり、法律に書いていない自由の制限は認められない!」と、55年ぶりにルールを変えたんだよ。
つまり、「公務員だから一律にダメ」というお上の勝手な決めつけは、法律の使い方が間違っているという答えが出たんだね。
【判決】公務員の資格を制限する政令は、無効(ムダ)!
最高裁判所大法廷(平成21年11月18日)は、次のような答えを出しました。
1. 政令の規定は「無効」!
地方議会議員の解職請求(リコール)の代表者の資格を公務員に認めないとした地方自治法施行令の規定は、法律(地方自治法85条1項)が許した範囲を超えており、無効です。
2. 公務員も代表者になれる!
法律でハッキリと禁止されていない限り、公務員であってもリコールの請求代表者になることができると判断されました。
【判決の言葉】
> 最高裁判所の判決(平成21年11月18日)より
> 「(公務員が代表者になることを禁止している政令は)地方自治法85条1項に基づく政令の定めとして許される範囲を超えており、その資格制限が請求手続にまで及ぼされる限りで無効と解さざるをえない。」
【追記】判決の後、日本はどう変わったの?
この判決は、日本の民主主義のルールと、役所の仕事の進め方を大きく変えたよ。
* 地方自治法が新しく書き換わった!
この判決を受けて、2011年(平成23年)に地方自治法が改正されたんだ。今では、リコールの代表者になれない人は「その町の選挙管理委員会のメンバーや職員」など、ごく一部の公平さが特に求められる人に限定されることが、法律に直接書かれるようになったよ。
* 「地位の利用」には厳しくなった!
その代わり、「公務員が自分の立場(地位)を利用して無理やり署名を集めること」については、新しく罰則(罰)が作られたんだ。「自由は認めるけれど、ズルはダメ」というバランスになったんだね。
* 「法律の留保」の考え方が浸透した!
「お上が決めたことだから」ではなく、「それは本当に法律が許していることなの?」と厳しくチェックする今のスタイルが、自治体職員の間でもより一層大切にされるようになったんだ。
まとめ
* 政府が勝手に、法律に書いていない「厳しい禁止ルール」を政令で作ることはできない!
* この判決により、ほとんどの公務員がリコールの代表者になれるようになった。
* この事件のおかげで、今は法律でダメな人がハッキリ決められ、より透明なルールで活動できる社会になっているんだね!
「ルールを作る側も、大本のルール(法律)を守らなければならない」。行政の誠実さと、住民の活動の自由を守った、歴史的な事件だったんだよ。
条文補足:地方自治法第八十五条
政令で特別の定をするものを除く外、公職選挙法中普通地方公共団体の選挙に関する規定は、第七十六条第三項の規定による解散の投票並びに第八十条第三項及び第八十一条第二項の規定による解職の投票にこれを準用する。前項の投票は、政令の定めるところにより、普通地方公共団体の選挙と同時にこれを行うことができる。