行政・法律の疑問 読了 4分

「『あの時のアレ』じゃ伝わらない! 役所のチェックを頼む時のルール」っていう判例【平成2年住民監査請求・特定性事件】

★ 判例データ

事件名:違法支出金返還請求事件
裁判所:最高裁判所
判決日:平成2年6月5日

関係法令:
・行政法
・地方自治法
・自治体法
・自治体法

論点:
・(記事本文参照)

結論:
・記事本文参照

読者のみなさん、こんにちは! 今日は1990年(平成2年)に出された、「役所のお金の使い道がおかしい!と訴えるとき、どれくらい詳しく説明しなきゃいけないの?」というルールを決めた、とても大切な裁判を紹介するよ。

みんなが納めた税金を守るための「住民監査請求(じゅうみんかんさせいきゅう)」という強力な権利についてのルールなんだ。

【ストーリー】「とにかく全部調べて!」 vs 「どれのことか教えて!」

住民のAさん

市長さんや役所の人たちが、税金を無駄遣いしているに違いない! 街のルール(地方自治法)に基づいて、専門家にチェック(住民監査請求)してもらいましょう。
街の監査委員(チェックする人)

Aさん、分かりました。では、どの支払いや契約が、いつ、どのように行われたのがおかしいのか、詳しく教えてください。
住民のAさん

そんなの分かりませんよ! 私は役所の人間じゃないんだから。とにかく「最近の支出は全部あやしい」から、全部まとめて調べてください!
監査委員

困りましたね……。役所は毎日、何千件もの支払いを行っています。「全部」と言われても、どれがあなたの言っている「悪いこと」なのか見当がつきません。これでは調査ができませんよ。
住民のAさん

調査するのがあなたの仕事でしょう? 裁判官さん、役所が「詳しく書かないと調べない」なんて意地悪を言うんです。これじゃ住民の権利が使えません!

【解説】裁判所でのバトル:登場!「魔法の指差し」と「調査の限界」

「二人とも落ち着いて。今回のバトルのポイントは、役所にチェックを頼むとき、その対象をどれくらい『ピンポイント』で指し示さなければいけないか、ということなんだ」

  • 「住民監査請求」は住民の武器:
  • 地方自治法には、税金の無駄遣いを住民が見つけたとき、役所の専門家(監査委員)に「これ、違法じゃないか調べて!」と頼める制度があるよ。

  • 「魔法の指差し(特定性)」のルール:
  • 裁判所はこう考えたんだ。「監査委員は、言われたことをもとに役所の書類をひっくり返して調べる。もし、『全部怪しいから全部調べて』という頼み方を認めてしまったら、監査委員がパンクして、本当に調べなきゃいけない大事なことが埋もれてしまうよね」。

  • 「個別的・具体的」という合格ライン:
  • 「だから、チェックを頼むときは、『他のものと区別して、これだ!とはっきり分かる』ように、『個別的・具体的』に書かなければいけないんだよ」という、厳しいルール(特定性の要件)を示したんだ。

    【判決】「これだ!」と特定できない頼み方は、認められない!

    最高裁判所(平成2年6月5日)は、次のような答えを出しました。

  • 「個別的・具体的」に示せ!
  • 住民監査請求をするときは、対象となる行為を他の事項から区別して特定できるように、個別的・具体的に示さなければなりません。

  • バラバラなら全部示せ!
  • もし怪しい行為がいくつもあるなら、それらが一体のものでない限り、一つずつ区別して示さなければならないと判断されました。

    【判決の言葉】

    最高裁判所の判決(平成2年6月5日)より

    「……当該行為等を他の事項から区別して特定認識できるように個別的、具体的に摘示(てきじ)することを要し、また、当該行為等が複数である場合には、……各行為等を他の行為等と区別して特定認識できるように個別的、具体的に摘示すべきである。」

    まとめ:判決の後、日本はどう変わったの?

    この判決は、日本の住民によるチェックのあり方に大きな影響を与えたよ。

  • 「なんでも監査」にブレーキがかかった!
  • 「なんとなく怪しい」という理由で役所の仕事をストップさせることができなくなったんだ。これにより、役所の監査にかかるコストや時間が無駄に使われるのを防げるようになったよ。

  • 「少しだけ優しく」なった(2004年)!
  • 平成2年の判決はちょっと厳しすぎたので、その後の裁判(2004年・平成16年)では、「証拠書類などを全部合わせてみて、専門家が『ああ、あのことね』と分かればOK」というように、少しだけルールがゆるやかになったんだ。

  • 住民の「調べる力」が試されるようになった!
  • 今では、住民が役所を訴える(住民訴訟)ためには、まず自分たちで情報公開制度などを使ってしっかり調べ、「何が、いつ、どう悪いのか」を論理的に整理することが当たり前のマナーになったんだね。

    最後に

    「文句があるなら、ちゃんとはっきり指し示して」。この判例は、住民の権利を守ることと、役所の仕事をスムーズに進めることの、絶妙なバランスを教えてくれる一歩だったんだよ。

    補足
    参照条文:
    ・第二百四十二条((住民監査請求))
    普通地方公共団体の住民は、当該普通地方公共団体の長若しくは委員会若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員について、違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担がある(当該行為がなされることが相当の確実さをもつて予測される場合を含む。)と認めるとき、又は違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実(以下「怠る事実」という。)があると認めるときは、これらを証する書面を添え、監査委員に対し、監査を求め、当該行為を防止し、若しくは是正し、若しくは当該怠る事実を改め、又は当該行為若しくは怠る事実によつて当該普通地方公共団体の被つた損害を補塡するために必要な措置を講ずべきことを請求することができる。
    前項の規定による請求は、当該行為のあつた日又は終わつた日から一年を経過したときは、これをすることができない。
    ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
    第一項の規定による請求があつたときは、監査委員は、直ちに当該請求の要旨を当該普通地方公共団体の議会及び長に通知しなければならない。
    第一項の規定による請求があつた場合において、当該行為が違法であると思料するに足りる相当な理由があり、当該行為により当該普通地方公共団体に生ずる回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、当該行為を停止することによつて人の生命又は身体に対する重大な危害の発生の防止その他公共の福祉を著しく阻害するおそれがないと認めるときは、監査委員は、当該普通地方公共団体の長その他の執行機関又は職員に対し、理由を付して次項の手続が終了するまでの間当該行為を停止すべきことを勧告することができる。
    この場合において、監査委員は、当該勧告の内容を第一項の規定による請求人(以下この条において「請求人」という。)に通知するとともに、これを公表しなければならない。
    第一項の規定による請求があつた場合には、監査委員は、監査を行い、当該請求に理由がないと認めるときは、理由を付してその旨を書面により請求人に通知するとともに、これを公表し、当該請求に理由があると認めるときは、当該普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関又は職員に対し期間を示して必要な措置を講ずべきことを勧告するとともに、当該勧告の内容を請求人に通知し、かつ、これを公表しなければならない。
    前項の規定による監査委員の監査及び勧告は、第一項の規定による請求があつた日から六十日以内に行わなければならない。
    監査委員は、第五項の規定による監査を行うに当たつては、請求人に証拠の提出及び陳述の機会を与えなければならない。
    監査委員は、前項の規定による陳述の聴取を行う場合又は関係のある当該普通地方公共団体の長その他の執行機関若しくは職員の陳述の聴取を行う場合において、必要があると認めるときは、関係のある当該普通地方公共団体の長その他の執行機関若しくは職員又は請求人を立ち会わせることができる。
    第五項の規定による監査委員の勧告があつたときは、当該勧告を受けた議会、長その他の執行機関又は職員は、当該勧告に示された期間内に必要な措置を講ずるとともに、その旨を監査委員に通知しなければならない。
    この場合において、監査委員は、当該通知に係る事項を請求人に通知するとともに、これを公表しなければならない。
    普通地方公共団体の議会は、第一項の規定による請求があつた後に、当該請求に係る行為又は怠る事実に関する損害賠償又は不当利得返還の請求権その他の権利の放棄に関する議決をしようとするときは、あらかじめ監査委員の意見を聴かなければならない。
    第四項の規定による勧告、第五項の規定による監査及び勧告並びに前項の規定による意見についての決定は、監査委員の合議によるものとする。
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