行政・法律の疑問 読了 5分

建物が完成しちゃっても諦めない! 民間のミスも「お役所の責任」にできるよっていう判決【訴えの変更許可事件】

★ 判例データ

事件名:訴えの変更許可決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
裁判所:最高裁判所
判決日:平成17年6月24日

関係法令:
・行政事件訴訟法(訴えの変更)
・民事訴訟法(訴えの変更手続)

論点:
・行政訴訟における訴えの変更の要件と手続
・訴えの変更を許可するか否かの基準
・行政訴訟と民事訴訟の訴え変更の差異

結論:
・行政訴訟における訴えの変更は、著しく訴訟手続を遅延させない限り許可される

読者のみなさん、こんにちは! 今日は2005年(平成17年)に出された、ちょっと特殊で、でもとっても大切な裁判のルールを紹介するよ。
「近所の建物の許可がおかしい!」と裁判をしている間に建物が完成してしまったとき、「もう建物は消せないけれど、せめてお役所に損害賠償(お金)を請求したい!」と作戦を変更するための、手続き上の重要なハードルを乗り越えたお話なんだ。

【ストーリー】「建物が建っちゃった……」 vs 「だったら作戦変更だ!」

近所に住むAさんたち

ちょっと横浜市さん! 民間の「指定確認検査機関(お役所の代わりに建物のチェックをする会社)」が出したあのマンションの建築確認、ルール違反ですよ。裁判で取り消してもらいます!
横浜市の担当者

不満があるなら裁判をするのは自由ですが、工事は進みますよ。

(数ヶ月後……)

建設会社のBさん

よし、マンションが完成したぞ! 完了検査もパスした。
Aさんたち

大変だ! 以前の判例(昭和59年の判決)だと、「建物が完成したら、もう許可を取り消す裁判は続けられない(訴えの利益が消える)」ってルールがあったよね。このままじゃ、私たちの訴えは門前払い(却下)にされちゃう!
Aさんの弁護士

それなら、裁判の目的を「許可の取り消し」から「市に対する損害賠償(国家賠償)」に切り替えましょう(訴えの変更)。民間の会社がチェックしたけれど、もともとは市役所の仕事(事務)のはずですから!
横浜市の担当者

裁判官さん、ちょっと待ってください。行政事件訴訟法のルール(21条1項)では、作戦変更できるのは「その仕事の持ち主(事務の帰属する公共団体)」に対してだけです。今回は民間の会社が勝手にやったチェックなんだから、市を相手に作戦変更するのは認められないはずですよ!

【解説】裁判所でのバトル:登場!「作戦変更のチケット」と「本当のボス」

「二人とも落ち着いて。今回のバトルのポイントは、民間の会社が行った『建築確認』という仕事の責任は、最終的に誰がもっているのか、ということなんだ」。

1. 「完成の壁」にぶつかったら:
建築確認の裁判では、建物が完成して「完了検査」まで終わると、裁判を続けるチケット(訴えの利益)が消えてしまうんだ。そのとき、被害者を救うための最後の手段が、「損害賠償(お金)」の裁判へ切り替えることなんだよ。

2. 誰を相手にするべき?:
作戦を変更するには、「その仕事(事務)が本来どこの組織のものか」をハッキリさせなきゃいけない。お役所側は「民間の会社がやったことだから、市役所の仕事じゃない」と逃げようとしたんだね。

3. 「本当のボス」は横浜市だ!:
裁判所はこう考えたよ。「建築確認は、もともとは自治体の大切な仕事だ。民間の会社に代行させているだけで、その仕事の結果に責任をもつ『事務の帰属先』は、やっぱり横浜市だというべきだ」。

つまり、「民間がチェックしたミスであっても、手続き上は市役所の責任として、作戦変更(損害賠償への切り替え)を認めてあげよう」という優しい判断が下されたんだね。

【判決】民間のチェックミスでも、市を被告として損害賠償の裁判に切り替えられる!

最高裁判所(平成17年6月24日)は、次のような答えを出しました。

1. 「事務の帰属」を認める!
指定確認検査機関(民間)が行った建築確認であっても、行政事件訴訟法21条1項にいう「当該処分に係る事務の帰属する公共団体」は、その事務を所管する地方公共団体(本件では横浜市)に当たります。
2. 訴えの変更を許可!
したがって、建物完成により訴えの利益が失われた場合でも、市を被告とする国家賠償請求へと「訴えの変更」をすることが認められました。

【判決の言葉】

> 最高裁判所の決定(平成17年6月24日)より(要旨)
> 「建築物の周辺住民が指定確認検査機関の行った建築確認処分の取消訴訟を提起し、……完了検査が終了すると訴えの利益が消滅することから、……損害賠償の訴えに変更することが必要となります。……横浜市が本件建築確認につき……『当該処分……に係る事務の帰属する国又は公共団体』に当たると判断しました。」

【追記】判決の後、日本はどう変わったの?

この判決は、今の日本の「民営化された行政」と「住民の権利」のバランスを守るための大きな支えになったよ。

* 「民営化」の逃げ道をふさいだ!
最近は、お役所の仕事を民間に任せることが増えているけれど、この判決のおかげで「民間に任せているから、役所は責任を負わないよ」という言い逃れが通用しなくなったんだ。住民は、安心して(?)役所を相手に戦えるようになったよ。
* 「損害賠償」へのスムーズな切り替えが可能になった!
「建物が建っちゃったから全部おしまい」ではなく、裁判の途中でスムーズに損害賠償の請求に切り替えられるルールが固まった。これにより、せっかく始めた裁判が無駄にならず、住民の法的な救済がより確実になったんだね。
* 指定確認検査機関の責任も明確に
この判決自体は手続きの話だったけれど、これによって「最終的に役所が責任を問われる」ことがハッキリしたため、民間の検査機関もより慎重に、正しく建物をチェックするような緊張感が生まれたんだよ。

まとめ

* 建物が完成すると許可を取り消せなくなるが、損害賠償(お金)の請求に切り替えられる。
* 民間の会社が許可を出した場合でも、「事務の持ち主」である自治体を相手に作戦変更できる。
* この判決のおかげで、今の日本は「行政の仕組みが複雑になっても、住民が責任の所在を迷わずに済む」ようになっているんだね!

「仕事の形が変わっても、責任の根っこは変わらない」。行政が民間の力を使う今の時代に、私たち市民が声を上げ続けるための「正義のバトン」を繋いでくれた、とても大切な判例だったんだよ。

この判例、ほかの時代の判例ともつながっています
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