行政・法律の疑問 読了 5分

野球大会の出張にお金を出してはダメ!でも、命令に従った職員さんはセーフだよっていう判例【徳島県議会野球大会事件】

★ 判例データ

事件名:徳島県議会野球大会旅費、日当、宿泊料等返還請求事件
裁判所:最高裁判所
判決日:平成15年1月17日

関係法令:
・地方自治法(住民訴訟)
・地方自治法(公金の支出)

論点:
・公金の違法な支出に対する住民訴訟
・重大かつ明白な瑕疵と職務命令への服従
・命令に従った職員の個人責任の有無

結論:
・違法な公金支出でも、職務命令に従った職員に個人責任を問えない場合がある

こんにちは! みんなの学校には「野球部」があるかな? スポーツをがんばるのはとっても素敵なことだよね。 でも、もし役所の偉い人たちが「野球大会に出るから、みんなの税金で旅費(交通費やホテル代)を出してね!」と言ったらどう思うかな? 今日は、「野球は仕事なの? 税金を使っていいの?」ということと、「上司の命令に従っただけの職員さんは責任をとらなきゃいけないの?」というルールを決めた、とっても大事な裁判のお話だよ。

【ストーリー】「野球は立派な仕事だ!」 vs 「それはただの遊びでしょ!」

徳島県の住民さん

ちょっと知事さん、議長さん! 県議会議員さんたちが「全国都道府県議会議員親善野球大会」に行くために、みんなの税金から旅費や日当を払っていますよね。野球大会に行くのは「県のお仕事(公務)」なんですか?
県の議長さん

もちろんです! 野球を通じて他の県の議員さんと仲良くなることは、情報を交換したり協力し合ったりするために必要なことなんです。だから、これは立派なお仕事ですよ。
住民さん

いいえ、納得できません! 議員さんが野球をするのは「親睦(しんぼく)」、つまり仲良しになるためのレクリエーション(遊び)にすぎません。自分の趣味で行くなら、自分のお金で行くべきです! 旅費を払うのは違法(ルール違反)だから、返してください!
同行した職員さん

えっ、私も一緒に行ったんですけど……。私は上司から「出張に行ってきなさい」という命令(旅行命令)を受けて、お仕事としてついていっただけです。私もお金を返さなきゃいけないんですか?

【解説】裁判所でのバトル:登場!「お仕事の線引き」と「命令という名の盾」

「みんな落ち着いて。今回のバトルのポイントは、何が税金を使える『お仕事』なのかということと、命令に従った職員をどこまで守るかというルールなんだ」

裁判所は、この問題を解決するために、次のような「正義の物差し」を使ったよ。

1. 野球は「お仕事」じゃない!: 裁判所はこう考えたんだ。「議員さんが野球大会に出ることは、たしかに仲良くなる役には立つかもしれない。でも、それは県の事務(本来のお仕事)そのものではないよね。だから、これに税金から旅費を出すのは違法です!」

2. 議員さんはお金を返してね!: 「お仕事ではないのにお金をもらった議員さんは、法律上の理由がないのにお得をしたこと(不当利得)になるから、県にお金を返さなければなりません」と決まったんだ。

3. 職員さんは「命令の盾」で守られる!: ここが一番のポイント! 一緒に行った事務方の職員さんについては、こう判断されたんだ。「職員さんは地方公務員法(32条)で、『上司の命令には従わなきゃいけない』と決まっている。上司が出した『出張命令』が、一目で見てめちゃくちゃでおかしい(重大かつ明白な瑕疵:かし)という場合でない限り、その命令に従った職員さんは、もらったお金を返さなくていいんだよ」ってね。

つまり、職員さんにとって、上司の命令は「自分の身を守る盾」になるんだね。

【判決】野球大会への支出はダメ! でも命令に従った職員はセーフ!

最高裁判所(平成15年1月17日)は、次のような答えを出しました。

1. 野球大会への支出は「違法」! 全国都道府県議会議員軟式野球大会への参加は、県の公務(本来の事務)とは認められないため、これに公金(税金)を支出することは許されません。
2. 命令に従った職員に返還義務はない! 職員は職務命令(旅行命令)に従う義務があるため、その命令に「重大かつ明白な瑕疵」がない限り、支給された旅費を返す必要はありません。

【判決の言葉】

> 最高裁判所の判決(平成15年1月17日)より 「……職員が職務命令である旅行命令に従って旅行をした場合、当該職員は、……旅行命令に重大かつ明白な瑕疵がない限り、当該旅行に対して旅費の支給を受けることができ、不当利得返還義務を負わない。」

【追記】判決の後、日本はどう変わったの?

この判決は、日本の役所のルールをより厳しく、そして職員が安心して働けるように変えたんだ。

– 「何がお仕事か」のチェックが厳しくなった! この事件の後、議員さんの野球大会だけでなく、いろいろな「親睦会」や「研修」の名目での集まりに税金を使っていいのか、全国の自治体で厳しくチェックされるようになったよ。
– 「重大かつ明白な瑕疵」という基準が定着! 職員が「これっておかしいかも?」と思っても、上司の命令に従って動いた場合には、よっぽど酷い間違いでない限り、後から「お金を返せ!」と言われないというルールがはっきりしたんだ。これで職員さんは、安心して上司の指示通りに働けるようになったんだね。
– 住民の監視(住民訴訟)がパワーアップ! 住民が「税金の使い方がおかしい!」と訴える「住民訴訟(4号請求)」において、誰が責任を負うべきなのか(得をした人なのか、命令した人なのか、従った人なのか)という議論が整理されるきっかけになったんだ。

まとめ

– 議員の野球大会は「公務(お仕事)」ではないので、税金を使ってはいけない!
– お金をもらった議員さんは、そのお金を県に返さなければならない。
– 上司の命令に従っただけの職員さんは、命令に「一目でわかるような酷い間違い」がなければ、お金を返さなくていい!

「野球はプライベート。仕事の命令はしっかり守る」。この当たり前のようなルールが、裁判所によってしっかり守られるようになった大切な事件だったんだよ。

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