行政・法律の疑問 読了 4分

青少年の未来か?大人の自由か?「有害図書」を規制するルールの判例【岐阜県青少年保護育成条例事件】

★ 判例データ

事件名:岐阜県青少年保護育成条例違反被告事件
裁判所:最高裁判所
判決日:平成元年9月19日

関係法令:
・憲法21条(表現の自由)
・憲法31条(適正手続)
・岐阜県青少年保護育成条例

論点:
・有害図書規制は憲法21条の表現の自由を侵害するか
・有害図書の指定基準は明確性の原則を満たすか

結論:
・青少年の健全育成のための有害図書規制は合憲。明確性の要件もクリア

こんにちは! 今日は、本屋さんやコンビニで見かける「成人向け」のシールや、棚の区切りについてのお話だよ。 「どんな本でも自由に売っていいはずだ!」という表現の自由(憲法21条)と、「子供たちを悪い影響から守らなければならない!」という自治体のルールのバトルについて、最高裁判所が出した答えを見てみよう。

【ストーリー】「自由に商売させろ!」 vs 「子供の健全な成長を守ります」

本を売っていたAさん

私はただ本を売っているだけです。岐阜県の条例で「これは有害な本だから子供に売るな、棚も分けろ」と命令されるのは納得がいきません! 憲法21条には「表現の自由」があるし、何が「有害」かなんて人によって違うはずだ。こんなあいまいなルールで商売を制限するのは憲法違反だ!
岐阜県の担当者

いいえ、子供たちはまだ心も体も成長している途中です。刺激が強すぎる性的な本(有害図書)を簡単に見られる状態にしておくのは、青少年の健全な成長を妨げてしまいます。これは社会みんなの利益(公共の福祉)のために必要な制限なんです。
Aさん

表現の自由は、民主主義にとって最も大切な権利の一つのはずです。それを条例という地方のルールで縛るなんて、やりすぎですよ! 裁判所さん、私の自由を返してください!

【解説】裁判所でのバトル:登場!「社会共通の物差し」

「二人とも落ち着いて。今回のバトルのポイントは、青少年の健全な育成という目的のために、表現の自由を条例で制限することがどこまで許されるのか、ということなんだ」

裁判所は、この難しい問題を解くために、次のような「社会の常識(物差し)」を使ってチェックしたんだ。

1. 「有害」の基準はあいまいか?: Aさんは「有害の基準がはっきりしない」と言ったけれど、裁判所は「条例の書き方を見れば、普通の人が読んで『ああ、こういう本のことだな』と判断できる基準になっているから、明確性の原則(罪刑法定主義)には違反しない」と判断したんだ。
2. 子供を守るために自由を制限していいのか?: 表現の自由はとても大切だけれど、裁判所はこう考えたんだ。「有害図書が子供たちの成長に悪い影響を与えることは、社会共通の認識(常識)になっているよね。だから、子供たちの健全な育成のために、販売方法を制限したりすることは、『公共の福祉』のための正当な制限といえるんだ」ってね。

つまり、大人の表現の自由を根こそぎ奪うわけではなく、「子供にだけは制限する」という形なら、今の日本のルールとして認められるという結論になったんだ。

【判決】青少年を守るための有害図書規制は、憲法21条に違反しない!

最高裁判所(平成元年9月19日)は、次のような答えを出しました。

1. 有害図書の指定と規制は「合憲」! 青少年の健全な育成を目的として、性的な刺激が強すぎる図書等を「有害図書」として指定し、その販売方法を制限することは、憲法21条1項が保障する表現の自由を侵害するものではないと判断されました。
2. 明確性の要件もクリアしている! 条例に定められた「有害」の基準は、一般人の理解において具体的・客観的な判断が可能であり、憲法31条(適正手続・明確性)にも違反しないとされました。

【判決の言葉】

補足
最高裁判所の判決(平成元年9月19日)より
「有害図書が青少年の健全な育成に有害であることは、社会共通の認識になっている……(中略)……かかる規制は、青少年の保護育成という公共の福祉のために、表現の自由に対し課された、必要かつ合理的な制限というべきである。」

【追記】判決の後、日本はどう変わったの?

この判決は、日本全国の自治体のルール作りに大きな影響を与えたよ。

– 「有害図書」のルールが日本中に広がった! この最高裁のお墨付きが出たことで、ほとんど全ての都道府県で同じような「青少年保護育成条例」が整えられ、有害図書の指定制度が定着したんだ。
– 「区分陳列(ゾーニング)」が当たり前になった! 本屋さんの「18歳未満禁止」のコーナーや、ビニール包装(シュリンク)などの対策が、この判決の考え方をベースとして、法的な正当性をもって行われるようになったんだよ。
– より具体的な言葉で書かれるようになった! この裁判の後、自治体は「何が有害か」をより詳しく具体的に書くように努力するようになったんだ。

まとめ

まとめ

– 表現の自由は大切だけど、子供を守るための「正当な制限」はある。
– 「有害図書が子供に悪い」というのは社会の共通の常識だと認められた。
– この判決によって、「子供たちを刺激の強い表現から守る」今の街の仕組みが確立されたんだね!

「自由に言いたい、見せたい」という気持ちと、「健やかに育ってほしい」という願い。そのバランスをどう取るかという、今の日本の社会の形を決めた大切な裁判だったんだよ。

補足
条文補足:日本国憲法第二十一条
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
補足
引用:岐阜県青少年保護育成条例第十条(有害興行の指定等)
第10条 知事は、興行の内容が次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、当該興行を有害興行として指定するものとする。
(1) 著しく性的感情を刺激し、青少年の健全な育成を阻害するおそれがあるもの
(2) 著しく残忍性を助長し、青少年の健全な育成を阻害するおそれがあるもの
(3) 著しく犯罪又は自殺を誘発し、青少年の健全な育成を阻害するおそれがあるもの
この判例、ほかの時代の判例ともつながっています
「判例年次索引」で明治〜令和の判例をまとめて見られます。
索引を見る
新着の「ムダ知識」をメールで
週1回、選りすぐりの疑問だけ届きます。
登録する