歴史・社会の疑問 読了 4分

電卓がなかった時代、人はどう計算していた?


生徒
電卓がなかった時代って、みんなどうやって難しい計算してたの?
ムダシル先生
日本はそろばん、欧米は「計算尺」っていう道具が長く使われていたんですよ。意外と最近まで、ね。

指 → 数え棒 → そろばん

生徒
いちばん古い計算道具って何?
ムダシル先生
人間の指。10 まで数えられる、原始の電卓です。
生徒
それで足りなくなったら?
ムダシル先生
次は石ころ、数え棒、紐の結び目、と進んでいきます。さらに大きな数を扱うために生まれたのが そろばん。中国で生まれ、日本では室町時代に普及しました。「桁」という概念を物理的に並べて、加減乗除を機械的に行える、いわば最初の汎用計算機です。

日本は「そろばん」、ヨーロッパは「計算尺」

生徒
ヨーロッパもそろばん使ってたの?
ムダシル先生
ローマ時代にはそろばんに似た道具がありましたが、近代になると別の発想が生まれます。それが 計算尺 です。
生徒
計算尺って何?
ムダシル先生
2 本の物差しを並べて、目盛りを「対数 (ログ)」で刻んだもの。掛け算したい 2 つの数の目盛りを合わせると、その答えが別の目盛りに浮かび上がる仕組み。原理はこの公式です。

\[\log(ab) = \log a + \log b\]

ムダシル先生
ログを足し算に変える、というのが計算尺の魔法。20 世紀の半ばまで、月ロケットの軌道計算もこれでやっていました。アポロ計画の現場でも、エンジニアの胸ポケットには計算尺が刺さっていたんです。
用語計算尺けいさんじゃく / slide rule

2 本以上の物差し状の道具で、目盛りを対数で刻むことにより、目盛り合わせで乗除や開平を計算できる携帯型計算機。17 世紀のイギリスで発明され、20 世紀半ばまで科学・工学の現場で広く使われた。

江戸時代の和算家はそろばんで $\sqrt{2}$ を求めた

生徒
そろばんで開平 (ルート計算) ができるの?
ムダシル先生
できるんです。江戸時代の和算では「開平」「開立 (立方根)」の手順が確立されていて、そろばんだけで $\sqrt{2}$ を何桁も求めていた。
生徒
どのくらいの精度?
ムダシル先生
ふつうの商人や役人レベルで $\sqrt{2} \approx 1.41421356$ あたりまで。研究熱心な和算家になると、もう何桁も先まで計算しています。電卓どころか紙計算より速いという話もあって、当時のそろばんスキルはちょっと信じられないレベルです。

\[\sqrt{2} \approx 1.41421356\]

電卓登場までの 100 年で、計算の意味が変わった

生徒
電卓っていつから普及したの?
ムダシル先生
安価な電卓が一般に普及したのは 1970 年代以降。それまでの 100 年間で、計算尺・機械式計算機・タイガー計算器と、人類は「計算する道具」をどんどん進化させてきました。
生徒
電卓が出てきて、何が変わったの?
ムダシル先生
「計算は人がするもの」から「計算は道具で済ますもの」に意識が変わった。それまでは、計算力そのものが知性の重要な部分でしたが、電卓登場以降は「何を計算するかを決められる力」のほうに比重が移った。今のスマホ・AI とほぼ同じ構造の変化が、50 年前に一度起きていた、というわけです。
まとめ

  • 指 → そろばん → 計算尺 → 機械式 → 電卓 と、計算道具は約 5,000 年かけて進化
  • 計算尺の原理は $\log(ab) = \log a + \log b$。アポロ計画でも使われた
  • 江戸の和算家はそろばんで $\sqrt{2} \approx 1.41421356$ を計算していた
  • 電卓普及で「計算する人」から「計算を任せる人」へと知性の比重がシフト

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